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#13 Bランクパーティー 前編

今回はちょっと長くなりそうだったので、前編と後編に分割しました。

合わせてだいたい9000字くらい、といったところなのですが、分割せずに投稿した方が良かったかな…

 3階層を追加してから1週間が経った。3人組が来て以来、侵入者は1人も来ていない。


 フィーネに聞いたところ、あの3人組は、ジャイアントアントの発生源の調査をするために来ていたらしい。となると、そのうちあの3人組よりも強い冒険者が来るのはほぼ間違いないだろう。ダンジョンの強化を入念に行っておかなければ。


「まだ時間がかかりそうか……」


 ダンジョンからの魔力供給は、そのモンスターがいる階層によって変動があるようだ。1階層に配置していたシュバルツ率いるアントたちは1日に50、3階層に配置してあるアーマイゼたちは1日に150ずつ保有魔力が増えている。


 1階層に置いておくのももったいないので、シュバルツを他の名前付きアントたちとともに3階層へと送っておいた。シュバルツの保有魔力が上限に達し次第、1階層へと戻すつもりである。

 名前を付けたアントたちの中には、保有魔力が上限に達したものもいたのだが、残念ながら進化することはなかった。進化による戦力アップを期待していたのだが……。3人組との戦いを見た感じ、アント一体あたりの戦闘力はあまり高くないようだ。まだ上がありそうなのだが……何か条件でもあるのだろうか。


「ダン、誰も来ないねー」


 ダンジョンの強化の様子を、頭の上に乗って眺めていたフィーネが暇そうに言う。

 淡々とダンジョンを強化していく様子を見るのは飽きてしまったようだ。フィーネに角砂糖を渡しながら言う。


「まあ、誰も来ない方が平和でいいんだがな。今のうちに戦力の強化もできるし」

「でも何も起こらないとヒマだよー」


 もしあの3人組以上に強い冒険者たちが来た場合、現在の戦力では太刀打ちできるか怪しい。せいぜい時間を稼いで消耗戦を繰り広げるのがやっとではないだろうか。となると、戦力の強化は最優先になるだろう。

 ネームドモンスターも増え、名前を付けた効果なのか、マザーアントたちが産む卵の量も増えている。


 ダンジョンの戦力は十分に伸びているとも言えるのだが……やはり不安が残る。せめて、シュバルツたちの強化が完了するまでは、誰も来ないで欲しいものである。

 しかし、そんな願いとは裏腹に、その10日後新たな侵入者たちがダンジョンへとやって来た。



「ここがソナナ村か」

「やっと着いたか! 腕が鳴るぜ!」

「のどかないい村ですね」

「そうね、自然に囲まれてて気持ちがいいわ」


 リーアの街を出て馬車に揺られること1日、俺たちはソナナ村へとたどり着いた。

 さっそく村長に挨拶をし、ゴゾーたちが来ていないかを聞く……やはりゴゾーたちはここに来ているようだ。となると、やはり調査中に何かがあったのだろう。


 少しの不安を感じつつ、村長に礼を言い、ジャイアントアントが見つかった場所へと向かう。


「シーナ、どうだ?」

「北の方から強い魔力を感じるわ。これはもしかしたらダンジョンがあるかもしれないわね」

「やはりダンジョンか……」


 やはり、ダンジョンの可能性が高いらしい。ダンジョンとなるとゴゾーがやられたのも頷ける。これはいよいよ注意してあたらねばならないだろうな。


「よし、みんな行こう。シーナ、辺りの警戒を頼む」

「ええ、まかせて」


 周囲を警戒しつつ、先へ進むと、ジャイアントアントを発見する。


「いたぞ、ジャイアントアントだ」

「あれはソルジャーアントですね、ジャイアントアントの中でも下級のモンスターのはずです」

「よっしゃアル! あいつは俺がもらうぜ!」


 そう言うとバルボは大斧を担ぎ、ソルジャーアントへと向かっていく。


「どおぉりゃああ!」


 気合のこもった掛け声とともに、大斧がソルジャーアントへと振り下ろされる。勢いの乗った斧はソルジャーアントの甲殻をたやすく砕き、絶命させる。


 ソルジャーアントは何もできないまま、地面に転がることになった。


「なんだ、弱いじゃねえか。期待して損したぜ!」

「バルボ。あなた、ちゃんとティータの話聞いてたの? ジャイアントアントの中でも弱い方って言ってたじゃない」

「がっはっは! そうだったか?」


 豪快に笑うバルボをシーナが呆れた目で見ている。見慣れたいつもの光景だ。


「バルボ、あんまり前に出すぎるなよ。何かあった時に距離が離れてると危ないからな」

「そうですね、多少の怪我ならどうとでもなりますが、怪我をしないのが一番ですよ」

「おお、悪い悪い。気を付けるぜ」

「ったく……ほんとに分かってるのかしら?」


 バルボがおどけたように笑う。まあバルボもいくつもの修羅場をくぐってきた猛者だ。本気で危ない場面ならそう無茶なことはしないのはわかっている。


「さて、ジャイアントアントがこの場所にいるわかったし、先を急ぐとしよう」

「おお! ダンジョンに入るのは久しぶりだ! 腕が鳴るぜ!」

「だから今回はダンジョンの攻略じゃなくてジャイアントアントの調査だからね? これだから脳筋は……」


 そんな軽口を叩きながら進むと、ダンジョンの入り口と思しき場所へとたどり着いた。


 穴の様子を確かめていたシーナが、少し険しくなった顔で言う。


「入り口から瘴気が漏れ出てきてるわね。間違いないわ。これはダンジョンよ」

「やはりダンジョンか。ティータどうだ?」

「微弱ですが残留思念が残っていますね。ゴゾーさんたちはこの中へと潜っていったようです」

「おいおいマジかよ! アルどうするよ?」


 ジャイアントアントの発生の原因は突き止めた。あとはこれを報告してしまえば依頼自体は完了である。

 しかし、ダンジョンが村の近くにあるのはまずいかもしれない。攻略は不可能だろうが、ある程度ダンジョン内のモンスターを倒しておいた方がいいだろう。


「ここがダンジョンなら、付近の村が危ないかもしれない。俺としてはダンジョンに潜ってある程度モンスターを狩っておきたいと思うんだが」

「俺は賛成だぜ! まだ満足に戦えてもないからな!」

「そうね、私もいいわよ。このまま放っておいてモンスターがあふれ出すと厄介だしね」

「そうですね、村の方々の安全を守るためにも。ある程度数を減らしておきたいです」

「よし、ならダンジョンの中に潜って、ジャイアントアントを狩るとしよう。ただし、危ないと感じたらすぐに戻ることにする。ティータ、支援魔法を頼む」

「はい、いきます『ホーリーブレス』!」


 ティータの支援魔法がメンバーを包み込む。瘴気の影響を防ぎ、モンスターへの攻撃力も高めてくれる便利な呪文だ。

 これで準備はいいだろう、皆を促すとダンジョンへと入っていく。穴の中は光源がないがまったく見えないというわけではない。この光景には見覚えがある、間違いなくダンジョンのようだ。視界はある程度確保されてはいるが、薄暗いままではモンスターを見落とすかもしれないな。


「ティータ、明かりを頼む」

「わかりました、『ライト』」


 ティータが明かりの呪文を唱えると、周囲が明るくなる。これで見落としもなくなるだろう。


「よし……みんな行くぞ。くれぐれも慎重にな……」

「おう!」

「わかったわ」

「わかりました」


 俺とバルボを前衛にして、パーティーは慎重に進んでいく。……前方からモンスターの群れがやってきたようだ。


「ウォーリアーアントにシールドアント……ガンナーアントまでいますね。ガンナーアントの遠距離攻撃には注意してください。酸に触れるとなかなか落ちない上に、装備が腐食してダメになってしまいます」

「すでに中級のアントまでいるのか……バルボ同時に行くぞ、シーナ援護を頼む」


 バルボとともにアントたちの群れへと走る。アントたちがこちらに気付き、ガンナーアントが酸を飛ばそうとするが、構わず距離を詰める。後ろから矢が飛び、酸を飛ばそうと準備していたガンナーアントの目に突き刺さる。さすがシーナ、相変わらずすさまじい精度だ。

 ウォーリアーアントのもとへとたどり着くと、素早く噛みつきをかわし、足を切り落とす。さらに横合いから向かってくるもう1匹のウォーリアーアントに手を向け、魔法を放つ。


「くらえ! 『ファイアアロー』!」


 ファイアアローがウォーリアーアントに着弾し、ジャイアントアントを焦がしていく。

 足がなくなって動けなくなったウォーリアーアント頭を切り落とし、止めを刺す。バルボは……シールドアントの盾形の頭ごと斧で粉砕していた。そのまま斧をぶん回し、周囲のアントたちを吹き飛ばしていく。


 そのまま周りのアントを片付けていく。どうやらこの数くらいの敵なら問題はなさそうだ。


「よし、みんな怪我はないな。先へ進もう」


 それから、何度かジャイアントアントたちと遭遇するが、問題なく片付けていく。


 しばらく進んだところで、ティータが何かに気が付いたようだ。足を止め周囲を探る。


「皆さん待ってください! ……どうやらゴゾーさんたちはここでやられてしまったようです」

「そうか、やっぱりゴゾーたちはやられてしまっていたか」

「アル、どうする? そろそろ引き返す?」

「なんだもう終わりかよ! ようやく体が温まってきたころだってのによ!」

「バルボ、私たちの仕事はダンジョンの攻略じゃなくてジャイアントアントの調査って言ったじゃない! そこまでやりたいならあんた一人でやりなさいよね」

「しょうがねえなあ、じゃあ帰るとするか!」

「そうだな、そろそろ戻ろうか。ジャイアントアントも十分狩れただろう」

「そうですね、無理は禁物です」


 十分にジャイアントアントの数も減らせ、ゴゾーの行方もわかったので、ダンジョンから帰還することにする。少し休憩を取り、来た道を引き返すために踵を返す。


 するとその時、大きな羽音がどこからか聞こえてきた。見れば来た道の方から、ハエのようなモンスターが3匹近づいてくる。あれはまずい!


「あれは……アントフライです! 仲間を呼ばれる前に倒してください!」


 ティータがそう言うと同時にシーナが矢を放つ、射られた矢は、寸分たがわずアントフライに命中する。

 2匹までは倒すことができたが、もう1匹の対処が遅れてしまう。

 生き残ったアントフライがこちらに気付いた……そして、ダンジョン内に大音量が響き渡った。

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