表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/126

#11 ネーミングセンス

 ぽりぽりと角砂糖をかじるフィーネを頭の上から降ろし、温泉へと向かう。


「ふう……初めての侵入者だったが、案外うまく倒せたな」


 ダンジョンが解放されてから、人を見かけることはあったが、戦ったのはこれが初めてであった。多少の犠牲は出たが、初戦としては上々といったところだろう。


「しかし、これからもっと強い奴らが来るかもしれないな」


 あの3人組は、コマンダーアントが率いるアントたちで十分対応することができた。しかし、見たところあの3人組は、全員剣士で、魔法を使ったり、遠距離攻撃の手段も持っていなかった。


 これからは、魔法を使ってくる敵や、さらに腕の立つ人間が来るだろう。もしかしたら人間以外のモンスターが攻めてくる可能性だってあるかもしれない。

 これからのダンジョンについて考えていると、コアルームにおいてきたはずのフィーネの声が聞こえた。


「ダン、こんなところで何してるの? 水浴び?」

「うお!?」


 見れば、フィーネがこちらへと向かってきていた。小さな妖精といえど見た目は少女である。慌ててフィーネを止める。


「フィ、フィーネ!? 今はお風呂に入ってるから来ちゃだめだ!」

「ふえ? なんで? あっ! ダンこの泉すごいよ! お水が温かい!」


 慌てるこちらを気にする様子もなく、フィーネは無邪気に温泉を見て騒いでいる。


「わーい!」


 フィーネは、しばらく温泉の上を興味深そうに飛び回ったり、手を浸してみたりしていたが。そのうち温泉に入り、パシャパシャと泳ぎだした。

 無邪気にはしゃぐフィーネを見ているうちに、慌てていたのが馬鹿らしくなってしまった。


「これは温泉といってだな……それとフィーネ温泉で泳ぐんじゃない!」

「ぶー! ダンのけちんぼ!」


 注意されたフィーネは不満そうであったが、泳ぐのをやめて、ぷかぷかと浮いている。

 やれやれ、温泉くらいゆっくり浸かりたいものだ。そんなことを考えてお湯に浸かりなおしたところ、突然顔にお湯がかかる。


「わぷっ!?」

「へへーん! けちんぼなダンはこうしてやる!」


 どうやらお湯をかけてきたのはフィーネだったようだ。小さな体を使ってこちらに向けてバシャバシャとお湯を飛ばしている。


「どうだ! まいったか!」

「フィーネ……くらえ!」

「ひゃー! やったなー!」


 こちらもお湯を掬うと、フィーネに向かって思い切りかけてやる。お湯をかぶったフィーネは楽しそうに笑うと、負けじとこちらにお湯をかけてくる。ほう……あくまで反抗しようというのか。ならばこちらも全力で相手をせねばなるまい。


「それそれ!」

「ひゃー! ……ゲホゲホッ……ちょ、ダン! ちょっとま……わぶっ!?」


 フィーネの悲鳴を聞きながら、しばらくの間お湯をかけ続けてやった。



「ねーねーダン! 今度は何するの?」

「ちょ、ちょっとのぼせたから休憩……」


 あの後調子に乗って、フィーネにお湯をかけ続けていたら、怒られてしまった。

 ぽかぽかと頭を叩いたり、髪の毛を引っ張るフィーネをなだめているうちにのぼせてしまったようだ。

 ちなみに、温泉から上がってもまだぷんすかと怒っていたが、お詫びに角砂糖を進呈したところたちまち上機嫌に戻ったようだ。今は頭の上で角砂糖をかじりながらご満悦である。


 さて、少し休んで体調も元に戻ったことだし、ダンジョンの強化を開始しよう。


「さて、じゃあ今日は3階層を追加しようか」

「おー!」


 さっそくメニューを開いて3階層を追加する。ポイントが消費され、3階層が追加されるとともにアナウンスが響いた。

 

 《3階層が追加されました》

 《命名機能が解放されました》


「おぉ!? ダン! 何か解放されたみたいだよ!」


 今回解放された機能は命名機能。召喚時と同じだけのポイントを消費することで、モンスターに名前を付けられるようになったらしい。上限は現在の階層数×10体までのようだ。

 名前を付けられたモンスターはネームドモンスターとなり、基礎戦闘力の向上や、ダンジョンからの魔力の供給が行われるようになるようだ。


「モンスターに名前を付けられるようになったみたいだな。試しに適当なモンスターに名前をつけてみるか」

「はいはーい! アタシ名前考えるの得意だよ! ダンの名前も考えてあげたし!」


 フィーネがノリノリで手を挙げる。まあフィーネのことだアントだからアンにするとかそんな感じの単純な名前を付けそうである。


「どうせ、アンとかそんな感じの名前にするんだろ?」

「むむっ! じゃあジャイアントアントだからジャイア……むぐっ!?」

「おっとそれ以上はダメだ」


 危ない危ない、このままフィーネに任せておくと恐ろしい名前を付けてしまいそうだ。これは自分で考えるしかないな。まずはどのモンスターに名前を付けるか……リストを見ていると、最初に進化したコマンダーアントが目に入る。たしか、3人組との戦いで活躍したのはこのコマンダーアントが率いているアントたちだったな。


「そうだな、最初はこのコマンダーアントにしよう」

「むぐー!」


 フィーネがもごもごと何か言っているが、ここは知らないふりをしよう。それより名前だ……アンはフィーネと被ってしまう……ふーむ、黒……クロだと捻りがないな、クロ、ブラック、シュバルツ……シュバルツなんてどうだろうか、なかなかかっこいい名前だと思う。よし、これにしよう。


「命名、シュバルツ」


 名前を付けたコマンダーアントのステータスを表示する。



 コマンダーアント

 名前:シュバルツ

 基礎戦闘力:400

 保有魔力:0/4000

 状態:健康 魔力供給



 ふむ、基礎戦闘力と保有魔力の上限が倍になり、状態に魔力供給とある。なるほど、これはなかなかいい機能のようだ。


「じーっ」

「ん? どうしたフィーネ」


 ステータスを見ていると、フィーネが何か言いたそうな目でこちらを見ている。

 口から手を放してやると、フィーネは残念なものを見るような目でこちらを見て言った。


「ダン……確かにかっこいい名前だけどね……その子、女の子だよ?」

「なにっ!?」


 勝手にオスだと思っていたが、どうやらメスだったようである。そう言えばアリの巣にいるアリはほとんどがメスだったはずだ。もしかしてジャイアントアントもそうなのだろうか。しかし、一度つけてしまった名前は変更することができない……


「ダン……」

「ぐっ……しかし、つけてしまったものは仕方がない! 次だ、次!」


 いまだこちらをじっと見つめるフィーネを強引にごまかし、次のアントに命名していくことにする。


「じゃ、じゃあ命名の効果もわかったことだし、次はマザーアントたちに名前を付けてあげようか!」

「……ダン、次はちゃんとした名前付けてあげてね?」

「わ、わかってるよ! 大丈夫だって!」


 気を取り直して、マザーアントたちの名前を考える。ここはちゃんとした名前を考えて、いまだこちらを見つめているフィーネを見返してやらねば……

 うーむ、アントだろ、アント……ふむ、アーマイゼとフォルミーカなんてどうだろう。

 意味はアントと同じではあるが、響きは悪くない……うん、いいんじゃなかろうか。フィーネのネーミングセンスよりはいいはずだ。

 いい名前を思いついたところで、さっそく命名することにしよう。


「命名アーマイゼ、命名フォルミーカ」


 マザーアントたちに名前を付けてステータスを確認する。



 マザーアント

 名前:アーマイゼ

 基礎戦闘力:600

 保有魔力:108/40000

 状態:健康 魔力供給


 マザーアント

 名前:フォルミーカ

 基礎戦闘力:600

 保有魔力:112/40000

 状態:健康 魔力供給



 どうやら無事、命名に成功したようだ。フィーネはじっとこちらを見ていたが、どうやら納得したようだ。

 いつもの笑顔に戻ると、自分も名前を付けたいとせがんできた。まあ、さっきみたいに変な名前を付けないならいいだろう。


「ふーん……いいんじゃないかな! じゃあ次はアタシだからね!」

「ああ、いいぞ。でも変な名前を付けたりするなよ」

「ダンじゃないんだから大丈夫よ! アタシに任せなさい!」

「そんなことを言うフィーネにはやっぱり名前を付けさせないでおこうかなー」

「むっ! ダンのケチ!」


 こうしてワイワイと騒ぎながらフィーネと協力し、命名できる上限になるまでアントたちに名前を付けていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ