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#1 プロローグ

みなさまお久しぶりです。テランです。

この度アリの巣ダンジョンのコミカライズ化に伴い、リメイク版の投稿を始めました。

いやリメイクってどうなのと悩みに悩んだのですが、こねくり回しても扱いきれない問題があったため、大幅改稿の場合でもどのみち同じ道のりになりそうなので、旧版を残しつつリメイク版という形でひっそりやらせていただきます。

リメイク版はこちら:https://ncode.syosetu.com/n9122ij/

旧版を読む方は↓へ

 ――背中が痛い。

 背中から伝わるのは、ひんやりとしてごつごつとした感触。どうやら寝ている最中に、床へと落ちてしまったようだ。せっかく気持ちよく寝ていたのに、眠気が飛んでしまった。


 寝ぼけ眼をこすりながら起き上がると、そこは土の壁で囲まれた部屋の中だった。

 拉致か、監禁か、そんな考えが頭をよぎる。果たしてここはどこなのだろうか。


 慌てて状況を確認するが、辺り一面はどこを見ても土、土、土。壁や床、さらには天井までもが土で囲まれている。

 手のひらから伝わるのは、じめりと湿った土の感覚。近くにベッドは無い――どうやら固い土の上で寝ていたらしい。道理で背中が痛かったわけだ。


 辺りにはベッドどころか家具すらない。周りを囲む土の壁には扉らしきものもないな。

 唯一土以外に部屋の中に存在するのは、部屋のちょうど真ん中あたりに浮かぶ水晶のような見た目の結晶体だけである。

 水晶が宙に浮かぶとは、まるで魔法のようだ。もしかしたら夢でも見ているのだろうか?それならこの意味の分からない状況も頷ける。

 ……いや、まだ残っている背中の痛みと、手のひらから伝わる土の感触も本物だ。

 頬を引っ張ると、ジワリとした痛みを感じる。これは現実で間違いなさそうだ。


 これが現実となると、どうしてこんな場所にいるのだろうか? 寝る前のことを思い出して――

 ――おかしい。なにも思い出すことができない。

 寝る前のことだけじゃない。それ以前のことも、自分の名前すら思い出すことができない。

 背中に冷や汗が流れる。いったい何が起こっているのだろうか。

 何か思い出せないかと必死に頭を巡らせるが、何一つ思い出すことはできなかった。


 この異常な状況で、こんな場所にたった一人。普通なら気が狂いそうなものなのだが、まるでもやがかかったようにほとんど恐怖を感じない。

 むしろ、まずは状況を確認するべきだと、冷静に考え始めている自分がいる。


 ……どれだけ考えても、なにも思い出すことはできないのだ。幸いにして、物の名前などの知識は残っているようだ。

 これ以上考えていても仕方ないだろう。この部屋の中を調べて回るとしよう。

 こんな異常な状況でここまで落ち着いているのだ。もはや何が出てきても驚くまい。


 まずはこの部屋を作っている土の壁。くまなく叩いて周るが、少なくとも壁の奥に空間があるということはないようだ。どうやって俺はこの部屋に入ったのだろうか。

 次に床を調べるが、結果は壁の時と同じだ。天井は手の届かない高さにあるのでどうしようもない。


 さて、壁も床も調べ終わってしまった。となると、残されたのはあの水晶だな。

 どう見ても怪しい。ぼんやりと光を放つその姿は、まるで自己主張しているかのようだ。

 ここまで怪しいと逆に調べたくないのだが――そうも言ってられないだろう。


 宙に浮かぶ水晶に触ると、ひんやりとした感覚が伝わってくる。

 どこにも固定されている様子が無いのにどうやって浮かんでいるのだろうか?

 ……それにしても、水晶に触ってからしばらく経ったのだが、一向に何も起こる様子は無い。

 これもハズレだったのだろうか。これでもないとなればもう何も残っては――


「うおっ!?」


 水晶から手を離そうとした時、突然水晶がその輝きを増す。

 徐々にその輝きは増していき、ついには目も開けていられないような強烈な光が辺りを包み込む。

 目もくらむようなその光から思わず顔を背けた時――どこからか無機質な声が聞こえた。


 《ダンジョンマスターの認証が完了しました。対象に知識をインストールします》


 その言葉の意味を考える前に、焼け付くような激痛が頭に走る。


「ぐうっ!? がっ!」


 頭を押さえて、地面を転がり周ると。次々と知識が頭の中へと流れ込んでくる。

 どれ程の時間が経っただろうか――数時間、もしかしたらたったの数秒だったのかもしれない。

 ようやく地獄のような頭痛が消えると、この異常な状況の答えが分かっていた。


 ダンジョンマスター。どうやら俺はダンジョンマスターというものになってしまったようだ。

 先ほどインストールされた情報を確認していく。まず思い浮かべたのは、ダンジョンマスターとしての仕事とルールだ。


 ・ダンジョンマスターは、ダンジョンを作り上げそれを防衛しなければならない。

 ・目の前に浮かぶ水晶はダンジョンコアと呼ばれるものであり、ダンジョンの心臓の役割を担っている。

 ・ダンジョンコアが破壊、もしくは持ち出されるとダンジョンは崩壊し、ダンジョンマスターの命は失われる。

 ・ダンジョンコアはダンジョンの規模に応じて成長し、DPを消費することで様々な機能を使用することができる。

 ・DPとは、ダンジョンコアの保有する魔力を数値化した物である。

 ・ダンジョンコアは、ダンジョンの階層数×深さ×100のDPを一日の間に生み出す。

 ・DPは、ダンジョン外の生物の行動もしくは死亡、または魔力を含んだ物体をダンジョンコアへと吸収させることでも獲得することができる。

 ・ダンジョンはキューブと呼ばれる各辺1kmの立方体型の領域を重ねることで形成される。

 ・ダンジョンは、一つの階層ごとに、最大で各辺10kmの領域を作ることができる。

 ・ダンジョンの入り口と、ダンジョンコアをつなぐ通路は、最低でも一本以上存在していなければならない。ただし、最大で24時間の猶予期間が存在する。


 さらに、ダンジョンの解放までに60日間の猶予と、初期ポイントとして1000ポイントのDPが付与されているそうだ。準備期間の後は、指定した場所にダンジョンの入り口が作られる。

 ダンジョンの解放後は、ダンジョンコアを狙う人間やモンスターを相手に戦う必要があるようだ。


 記憶がない以上、俺が何者であったかすら分からない。ならば、今はこのダンジョンマスターという役割を果たしてみるとしよう。


 さて、情報をまとめて今後の方針を考えたところで、まずはダンジョンの状態を確認するとしよう。

 どうやらダンジョンコアの機能の一つに、ダンジョンの状態、つまりステータスを教えてくれるものがあるようだ。

 ダンジョンのステータスを呼び出すと、目の前に半透明のモニターが現れる。


 ダンジョン名:-

 深さ:0

 階層数:1

 残りDP:1000P

 総戦力:0


 ダンジョンの名前は無し、これは自分で決められないらしい。外からこのダンジョンがどう呼ばれているかが分かるようだ。

 深さ、階層数、残りDPは見事に初期値だ。

 そして最後に総戦力。これはダンジョン内にいるモンスターの戦力を合計した物らしい。

 今はモンスターどころかフロアすらないのでゼロになっているが、この数値の1%がモンスターの維持コストとして毎日差し引かれる。つまり、無限にモンスターを増やすことはできないということだろう。


 さて、ダンジョンのステータスも確認できたことだし、さっそくダンジョンを作り始めるとしようか。

ダンジョン名:-

深さ:0 階層数:1

残りDP:1000P

総戦力:0

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