9、成り行きの師匠
更新が遅いのは仕様ですごめんなさい・・・
春樹が東条と決闘をした日からはや3日。
オレと春樹は今日も今日とて二人でペアを組んで模擬戦でいたぶられていた。
「ばっか! 春樹! こっち来るなって!」
「だって、仕方ないでしょ! 向こうがそうなるように魔法打ってくるんだから!」
現在、オレと春樹は飛び交う魔法の中を二人揃ってわたわたと避け続けている。
その様子はコメディのようで端から見るには面白いかもしれないが、当事者のオレたちからするとたまったものではない。
相手は龍ヶ城輝政の取り巻きのうちの二人だ。二人とも魔法特化型らしく、先ほどからばんばん魔法をこちらに打ってくる。片方の詠唱中にはもう片方が魔法で攻撃をしており、中々接近を許してくれない。君たち仲いいね!
などと感心している場合ではない。
春樹と東条の決闘騒ぎの後、春樹にはオレが魔法を使えることを打ち明けた。
最初は春樹も困惑していたが、すぐに笑顔を浮かべ「すごいじゃないか、優斗!」と喜んでくれた。
今まで黙っていた件についての謝罪にも「全く気にしてないよ」とありがたいお言葉をいただいて……ホント春樹君は仏様の生まれ変わりなんじゃないかな。優しすぎて将来悪い人に騙されないかお父さん心配です。いや、別に春樹オレの息子じゃないけど。
加えて、オレの魔法のことは黙っておいてくれるようにと言い含めておいた。
本人は疑問に思っていたようだが、オレが戦争に駆り出されたくない旨、バレるとそうなる可能性が高い旨を伝えると納得した様子で「わ、分かった……言わないよう善処するよ!」と大変前向きなお墨付きをいただいたので多分大丈夫だと思う。え、大丈夫?
「うわ、風魔法飛んできた! 優斗! パス!」
そう言ってオレの後ろに隠れる春樹。
オレが魔法を使える秘密を打ち明けてから二人の距離は急接近。今ではこんな風に、軽口をたたきあえる仲に……
「パスじゃねえええええ!」
そう叫びながらオレはバレないように魔法を発動するのであった。
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「香川君の魔法やっぱりすごいよねー」
模擬戦終了後。オレらは対戦相手の女子二人組と雑談に興じていた。専らの話題は、春樹――実際はオレが使っているのだが――の魔法についてだ。
「う、ううん……そ、そんなことないよ」
春樹さん、声が震えていらっしゃいます。君がボロ出すと僕の魔法がバレちゃうからやめてね。
「見たことない魔法も使ってるけど、あれってどうやってるの?」
「え、えーっと……」
春樹が目線だけをこちらに泳がしてくる。顔にHELPって書いてあるのが読めるぞ。
「それは企業秘密なんだよな、春樹」
春樹の肩に手を置きながらオレが継ぐ。
「えー、何それー」
そう言いながら女子たちがクスクスと笑う。
現状、勇者たちの春樹に対する評価は悪くない。
春樹が東条を下した(実際は違うのだが、皆の印象ではそうなっている)ことで、春樹の評価を見直す者も多く、以前ほどあからさまに軽蔑の視線を向けてくるやつはいなくなった。今、春樹は優秀な魔法使いと思われている。
え、オレの評価はどうかって? ははっ、春樹に寄生してるロクデナシっていう評価がいつの間にか増えてたよ! あるぇ……いや、オレがそう望んだっちゃ望んだんだけどさ……そこまで言わなくても良くない? オレ泣いちゃうよ?
などと、会話の最中でくだらない独白に思考を裂いていると、ブラント団長の集合の合図が訓練場内に響きわたった。
「よし、皆集まったな」
そう言うとブラント団長はフッと息を吐く。この人さっきまで龍ヶ城とものすごいレベルの剣戦やってたのに息が全然切れてないんですが。化け物かな? あ、化け物だったわ。
まあ、それは龍ヶ城も同じなのだが。お前ら何なの?
「えー、皆に連絡だ。三日後、我々はダンジョンへ行く」
ダンジョン。それはこの世界の様々なところに存在している迷宮の総称である。
ある詩人はかく語りき。その最深部には金銀財宝が眠っていると。
ある冒険者はかく語りき。その中には凶暴なモンスターが跋扈していると。
ある学者はかく語りき。その正体は巨大モンスターの体内であると。
……あるものは地中に、あるものは水の中深くに、あるものは天高くに。
そんな迷宮の制覇を目指し、日夜多くの冒険者たちが挑みその命を散らしている。
だが、それにも関わらずダンジョンにもぐる者たちは後を絶たない。
そう、そこにはロマンがあるからだ。
……って、オレが読んだ誰かの自叙伝に書いてあった。
「我が王国の首都たるこのリスチェリカの近郊にはダンジョンがある」
周囲がどよめきだつ。特に男子陣が。
やっぱり男の子ってこういうのお好きなのかしら。反して女子の反応は淡白なものだ。かくいうオレもそのどよめくうちの一人なので、彼らのことは言えないが。
「皆、模擬戦訓練を詰んでそれなりに戦えるようになったからな。ここからは、魔物との実戦を通してさらに経験を養って欲しい」
ブラント団長の発言を受け、急な魔物との戦闘に対する不安の声がちらほら上がる。
「皆が不安に思うのも最もだが、大丈夫だ。我々騎士団が引率をし、君らの身の安全を保障しよう。と、言ってもほとんどの者が既に我々より強いのではあるが……」
そう言うとブラント団長は自嘲げに笑った。いや、あなたも十分化け物なんで誇ってください。
「質問はないな? ならば、今日はこれで解散だ。明日は休養日とするので、各自、自分の武器などの手入れを怠らないようにし、しっかりと休養、準備をするように。以上!」
そう言うと、ブラント団長はぐるりと勇者たちを一瞥し去っていった。
残された勇者たちはかたや興奮し、かたや不安げな表情を浮べて雑談に興じている。その内容はもちろんダンジョンについてだ。
「はー……ダンジョンねぇ……」
オレがぼそりと呟いたのを春樹が聞きとめる。
「うーん……ワクワクするはするけど、ちょっと怖いね……」
春樹がいつものように眉を八の字にして困り顔を浮べる。
「確かに。こういうのは予想外なことが起きるのがテンプレだからな」
「ちょっと、ほんとに怖いからやめてよ」
「冗談だよ」
そう言いながら笑う。春樹も「もうっ!」と言いつつも口元は緩んでいる。
こうやって冗談を言い合える仲っていいな。こっちの世界に来てぼっちを経験してから、すごく友人の重要性を実感するようになった。
失って 初めて気付く ありがたさ 十一優斗、心の俳句。
「じゃあさ。危なかったら……優斗が、守ってね?」
「……お安い御用です。お姫様」
「僕は男だからねっ!?」
そんな軽口を叩きあってがじゃれあっているオレらの様子を見つめる一人の少女がいたことに、オレたちは気づくよしも無かった。
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翌日、オレは魔物の生態を調べるべく朝から例の図書館に来ていた。
司書もどきのばーさん(名前はまだ聞いてない)はいないようだが、オレには合鍵がある。
そう、司書のばーさんから借りたこの鍵があれば不法侵入など造作無いのさ! いや、許可とってるから侵入じゃないんだろうけどさ。
今日一日は休息および、準備に当てられていた。
どうやらこの世界も一週間は七日らしく、それが52週で一周期、すなわち一年をなしている。つまり、こちらの世界も一年は約365日というわけだ。となると、前いた世界のように、宇宙や恒星、惑星の存在も現実味を帯びてくるわけだが……まあ、流石に一年の日数が一致しているからってだけじゃ判別できないな。四季もあるそうだが、地域によってばらつきがあるし、何より「全部魔素による影響です」と言われたら科学っ子のオレには解明できそうにない。
っと、思考が横に逸れてしまった。いかんいかん。今日は、魔物について調べるんだった。
他の者たちであれば、国の武器庫から賜った自前の剣や杖などの武器があるんだが、いかんせん剣術も魔法もできないオレには量産型の鉄剣と木の盾ぐらいしか与えられてない。それゆえ、今日中に何かを整備しないといけないものなどが無いのだ。
龍ヶ城なんて、『聖剣ウラノス』とかいう中二心くすぐられる強武器を与えられてたんだけど、何この差別。
ちなみに春樹も、魔法の効率を高めるロッドを貰っていた。本人は、「僕が使ってもなぁ……」とうなっていたが、オレが「それで殴ればいいんじゃないか」と提案すると、さもありなんと得心した様子で素振りをしていたから多分大丈夫。
「さてと、こんなもんかな」
ドンっと、大きな音を立てて机の上に10冊強の本を並べる。
そのどれもが、リスチェリカ近郊の生態や、ダンジョン内の魔物、トラップなどについて書かれている本だ。教育的な内容のものから、レジャーブックのようなものまで多種多様に取り揃えられている。
「さてと、2時間で読めるかね」
そう言いながらオレは、パラパラとマンガをめくるような手つきで読書タイムに没頭するのであった。
書物に意識を埋没させて一時間ほど立っただろうか。
積んであった本も七割ほど消化し、少し集中が途切れていたところでふと背後に気配を感じ、意識を本の外へと引き戻す。
でも、どうせ司書もどきのばーさんだろ。無視無視。
しかし、いつもならすぐに奥の司書室の方へ消えていくはずのばーさんの気配が消えない。
うーむ……気が散る。そう思って文句を言おうと後ろを向く。
「なあ、ばーさん。気が散るから向こう行ってて、くん……ね?」
気だるそうに振り向いたオレの目の前にいたのは、司書もどきのばーさんではなかった。
オレは驚愕と疑念とが入り混じった複雑な表情を浮べて口を開け、固まる。
「ばーさんはひどくないっ!?」
そこには、いつかの赤茶色いポニーテールを揺らしてあどけない笑顔を浮べている、織村凛がいた。
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「……で、織村さんは何故ここに?」
織村凛。初日からぼっちでいたオレに唯一声をかけてきた人物。
こちらに飛ばされてきた日に話した以来接点はほぼ無かったはずだが、向こうはそんな関係の希薄さも感じさせず、人懐っこい笑みを浮べている。
なんなのこの子、なんでこんなに嬉しそうなの?
「そんな他人行儀はなしだよ! わたしのことは、親しみを込めてりんちゃんと!」
「んで、織村さんはどうしてオレの後ろに立っていたの?」
「まさかのスルー!?」
オーバーリアクションで崩れ落ちる織村。元気だな、おい。
そんな彼女の薄ら寒いほどの元気さに若干引きながらも話を続ける。
「ってか、図書館ではお静かに」
「えー、だって優斗君以外誰もいないよ?」
こいつ……! 大して親しくない相手も下の名前で呼べるほどのコミュ力を持っているというのかッ!
などと内心で勝手に織村のコミュ力を賞賛するも、肝心な答えが返って来ていない。
「んでさ、もう三回目になるけど、織村さんは何故ここに? 本探してるなら、司書の……あー、司書っぽいおばあさんが向こうにいるはずだけど……」
そう言いつつも、織村の目的が本では無いだろうという予感があった。
そしてその予感は不幸にも的中する。
「あ、うん。えっとね、優斗君にお願いがあります」
「お願い?」
そう言うと織村は頬を恥ずかしそうに掻く。
お、おい……も、もしかしてこれは……
愛の告白ってやつじゃないですか!? へいへい、ついにオレの異世界ラブコメも始まっちゃったんだぜ! 異世界行ってラブコメ始めました! ラノベ化決定!
「えっとね……わたしに……」
ゴクリと知らず知らずに喉が鳴る。
だ、ダメだそんな! オレには春樹という心に決めた相手が!
「……魔法を教えてっ!」
……デスヨネー! 知ってた! そんなラブコメ展開あるわけないって! だって、織村とフラグ立てた記憶ないもんねっ! そんなこったろうと思ってたよ!
で、脳内茶番はさておいて、こいつの言ったことを改めて吟味しよう。
「魔法を、教える……?」
オレの怪訝そうな声音にも一切うろたえることのない織村は続ける。
「うん、優斗君すごい魔法使いでしょ? だから――――」
「あー、待て待て。そもそも、オレが魔法使いってなんだ? ……お前も知ってるように、オレは魔法全然使えないぜ?ほら、使えるのはオレじゃなくてオレの相方の春樹。だから、オレに言われても――――」
息をつくことなくスラスラと建前を述べるオレを、織村凛は笑いながらさえぎった。
「ううん。魔法使えるのは優斗君だよね。わたし、見てて思ったんだ。上手く隠してるけど、あれは絶対に優斗君が魔法使ってる」
まっすぐとこちらを見据えて織村が断言する。その目は冗談を言っているようには見えないし、ハッタリをかましているようにも見えない。
こいつ……バカかと思いきや以外と鋭い洞察力を持っている。それとも、バカ故の直感か。
なんだかんだでオレと春樹の秘密に気付いているやつはいないはずだ。二人でその件を話すときは周りに聞こえないように細心の注意を払っているし、まず誰も疑おうとも思わないだろう。そんな中で、目ざとくも真実を見抜いた……織村凛という少女の勘の鋭さには少しばかり恐怖を覚える。
そんな内心のオレの警戒を知ってか知らずか、織村はにへらと笑って続けた。
「でも、わたし別に言いふらそーとか考えてないから大丈夫だよ」
「……そうか、そりゃ助かる」
だが、オレは織村の目が怪しく光るのを見逃さなかった。
「これぐらいお安いごよーだよ! ……で、今優斗君はわたしに助けられちゃったわけだけど……」
「……ん?」
話の流れが怪しくなってきたのを感じる。
「お返しに、……魔法を教えてくださいっ!」
そう言いながら、勢いよく頭を下げる。その際にオレが座っているいすの背もたれに頭をぶつけて「あう」とか情けない声を上げていた。結構な勢いでいったな。勇者じゃなかったらやばいレベルじゃないか?
「おい、大丈夫か?」
「えへへー……だいじょうぶだよ……」
そう言いながら涙目で額をさすっている。アホの子なのかこいつは。
よく見ると額が少しだけ裂けてしまっている。流石に可愛そうに思ったオレは嘆息しながら彼女の額に手を当てた。
……まあ、彼女の観察眼に免じて。
「ちょっと見せてみろ。――――『ヒール』」
そう唱えて回復魔法を発現させる。
回復魔法はまだ練習途中なので効果は低いが、この程度の傷を治す程度なら可能だ。
「ありがとっ! でもすごいね、回復魔法も使えるんだ……しかも、今詠唱してなかったよね!? どうやったのっ!?」
どうやら、無詠唱のことまでは知らなかったらしく目をキラキラさせながらこちらに顔を近づけてくる。近い近い近いなんかいい匂いするやばいやばい。
「お、織村……近い……」
「あ! ごめんごめん」
織村はさして気にしていない様子で後ろに飛びのく。
なんか、オレだけ意識してたみたいで恥ずかしいんだけど。これも男のサガなのね。
「それで、さっきの件はおーけーしてくれるかな?」
「いいともー! って釣られねえからな!?」
頭打った拍子に忘れててくんねーかなとか考えてたが、そう上手くはいかないらしい。
「ちぇっ……」
「舌打ちを口で言うなよ!?」
「じゃあ、おっけーってことだよねっ?」
「じゃあ、ってなんだよ! 接続詞は正しく使おうぜ日本人!?」
「むぅー……文句が多いよー」
「オレが悪いんじゃないよな!?」
なんだこのボケ倒し。素なのかこいつ。
「えー、でも……」
「悪いが、遠慮させてくれ。ってか、そもそもオレには無理だ。今使った魔法だって本読んで独学で習得しただけだから、その方法でお前の魔法も上達するとは限らない」
そう言うと織村は始めてその表情に翳りが刺す。
「そ、それでも……! わ、わたし! 魔法できるようにならないとっ!」
必死、そう思えるほどの彼女の態度にオレは不審感を抱く。
「なんでそこまで……それに織村って魔法使えなかったっけか? 確か、結界術とか魔法障壁とか張るの大得意だったはずだけど……」
織村は『術法』と呼ばれる、主に結界術や浄化魔法などの魔法に特化した能力を持っていた。その結界の防御力には、あの龍ヶ城でさえも太刀打ちできないほどだ。
さすれば、強いて魔法を習得する必要もあるまい。
「だったら、それを鍛えればいいんじゃないのか?」
「それだけじゃダメだよ……わたしも攻撃できる魔法とか覚えないと……」
「別に自分の得意なことを伸ばせば十分だと思うけどな……」
「ううん……守ってるだけじゃ、ダメなんだよ。……足手まといになっちゃうから」
そう呟いた声は彼女にしては珍しく消え入りそうだ。いや、オレは彼女のことを全くと言っていいほど知らないのだ、それを「彼女にしては」などと語るのは傲慢もここに極まれりだ。
でも、目の前の織村凛という少女は未だに顔は笑っているが、その笑みの裏にほの暗い感情がちらついている。
足手まとい……か。
数秒ほどの逡巡。メリットとデメリットを天秤にかける。
現状、既に彼女にオレの魔法の存在は織村に知られてしまっている。無論、「知らぬ存ぜぬ」で突き通すことは可能だろうが、下手にわめかれるとそれはそれで問題だ。
さすればオレの魔法を秘匿しておく交換条件として、話を受けるのも吝かではないだろう。
まあ、そもそもの話、彼女の額を治癒なんぞしなければ良かったのではあるが、そんな選択肢はオレの中には端から無かったのだから仕方が無い。
なんたって、女の子には優しくするもんだろ?
「分かった……教えられるかどうかは分からないが、善処する」
オレは内心に浮かんだとある疑問の解決のためにも依頼を承諾することにした。
とある疑問。それはまだ明確な形を持ってはいない。
もしかしたら……というレベルのものでしかない。
だが、もし本当にそうだとしたら、こいつはオレと同じなのだろう。
それに、だ。
あの一人きりで誰とも話せない状況で、ただ一人声をかけてくれたのが織村だった……なんだかんだ言ってあの元気さに当てられて、気を持ち直した部分も大きい。あの行動は間違いなく彼女の善意だ。だから、その恩には報いたい気がしないこともない。
「ホント!?」
織村が再び表情に明るさを取り戻す。だがそんな彼女を制するようにオレは手のひらを彼女に向けて言い放った。
「ああ。ただ、条件がある。一つ、オレが魔法を使えることは絶対に誰にも話さないこと。一つ、オレから魔法を教わってることは誰にも言わないこと。一つ、普段は必要以上にオレに関わらないこと。妙に勘ぐられる可能性があるからな」
わたしぃ、友達にぃ変な噂とか立てられたくないんでぇー、気軽に話しかけないでよね、ぷんぷん。
……というわけでは決してなく。
単純に、オレと織村が一緒にいることへの疑念がと魔法バレのリスクへと繋がることを憂慮してただ。
「う、うん……分かった」
難しそうな顔してるけど、ほんとに分かってんだろうなこいつ。
「……それにしても、よかったぁ」
織村は一安心したのか、ほっと息をついている。
そこに、先ほどまでの憂いの表情は見受けられない。
オレの、気のせいだったのだろうか。
「もし断られたら、優斗君の魔法を材料にしてきょーはくするところだったよっ!」
「さらっと笑顔でえげつねえこと考えてたんだな、お前!?」
そんなくだらない会話を経て、オレは織村凛の魔法の師匠になってしまったのであった。
メインヒロインは春樹君。