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豆と進路相談

 豆と二人。

 この表現はおかしいが、元々この豆は人間だ。俺の生徒である。あながち間違ってはいない。



 この豆と今から俺は進路相談を再開する。進路と言っても今後の生き方に関してだが。


 とりあえず、豆こと相沢香奈を床から拾い、俺は教壇に上がり、教卓の上に豆をのせた。



 夕日に照らされた教室内。ついでに豆も照らされている。



豆「先生、投げつけてくれれば別に私戻れるんですけど……」

 豆はなんだか困惑しながら俺に言う。



 しかし、ここはあえてその姿のまま説教してやることにした。今どれだけ深刻な事態にいるのか、それをわからせるためにだ。


 俺は教卓の両端に手を置き、話し出す。


「相沢、よく聞け。確かにマメになれと言い過ぎた俺も悪かった。しかしその姿になってしまうということはだな、大変な危険性を含んでいるんだ」


 豆は動かないが、多分、真面目に聞いている。


 いや、普通こんなこと言わなくてもわかると思うんだが、まぁわからなくなるほど俺が追い詰めたせいでもある。責任もって彼女に諭さなければならない。教師として。



 相沢の声が聞こえてきた。


豆「えーでも楽しくないですかね? 案外先生楽しそうでしたよー」


 おい、どこをみてそんなことが言えるんだ。俺は怖がってただろうがと言いたい気持ちを抑えて、説教を続ける。



 目の前の豆に。



「確認したいが、投げないとダメなんだよな?」

豆「勿論ですよ!」


 俺は頭を抱えた。


豆「あ、でも私、先生以外の前で、この姿みせたことないですから……」


 なんて危うい発言をするんだ。

 俺の首が飛びかねない発言だ。

 豆でなければな。


 俺は心のなかでツッコミをしつつ、目の前の豆をスルーして、続ける。



「相沢例えばな、仮に風が吹いてきたとしよう。そのあとどうなる?」

豆「飛んでいきますね」

「だろ?じゃあ仮に飛んでいった後、人の多い場所に飛んでいって道端に落ちてしまっていたらどうなる?」

豆「逃げますね」

「……いや逃げれないだろ。踏まれるだろ」

豆「結構動けますよ」


 嫌な予感がする。

 豆が俊敏な動きをするシュールな光景がよぎった。いや、よぎったのと同時にしていた。

 まじかよ。なんだこの光景。

 なにみせられてるの俺。


 豆が俊敏な動きをしている。

 教卓の上で反復横とびをしているかのような飛び方をしている。


 俺は呆然と眺めていた。

 やっと終わったかと思うと、豆が教卓上の真ん中で動かなくなった。倒れてるのか。豆だからわからない。息切れが聞こえてきた。


豆「止めてくださいよ〜!」


 止めれるか! と心で突っ込んだ。


 俺はため息をついた。

 そして教卓上にいる豆を片手で持ち上げ、遠慮せず全力で、思いっきり後ろの黒板に投げつけた。


 ボンっと音がした。

 そして俺の横には相沢がいる。

 教壇の上、黒板のすぐ前で相沢香奈はなぜか誇らしげな表情で両手を腰に当てていた。

 凄いだろとでもいいたいのか。

 しかし、汗をかいてるようにもみえる。相当疲れたのか。



「とにかく今後豆になることはやめなさい。とりあえず今日は解散!」

 俺は諦めた。明日に回す。

 担任だし、逃げられないし。


「今日はってことは明日もあったり?」

 呑気にはしゃいでる相沢をみて俺はげんなりする。


「ああ、だからもう帰りなさい」


 そういうと、相沢は「はーい」と素直に返事をし、彼女がいつも座っている後ろの席からカバンを取りに行く。そして俺の方へ振り返り、ニコッとして意味深な言葉を放った。




「もうすぐ節分ですね」



 相沢は教室を出て行った。




 節分……嫌な予感がする。











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