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先生、私マメになりました!  作者: さくらみち
先生、私豆になりました!
7/11

少年の声

――前回までのあらすじ――

 彼女はずっと豆のことを考えていた。それはマメになれという教師の圧力。愛する教師の圧力。耐えられず、マメになるか豆になるか迷っていた相沢香奈。その最中、少年の声が――彼女はいったいどうなるのだろうか!まぁ勿論まめになるのだが!

――あらすじ終わり――


「願いを叶えましょうかー?」



 再度声が聞こえてきました。

 私は周りを見回しました。しかし姿は見えませんでした。

 ぼーっとしながら歩いていたので、今しっかり周りの景色をみてみました。どうやらここは帰り道によく通る公園のようです。


 砂場、ブランコ、滑り台、ぐるーっと見渡しましたが、子ども一人いませんでした。


 本当に誰もいません。


 なんども周りを見渡しましたが、人の気配が全くしませんでした。


(どこから声がしてるんだろう。割と近いところからだったはずなのに。)



 はっと思いました。

 今一番私に近いもの、それが語りかけてるのかもしれないと。



(シーソーが語りかけた……?)


 私は丁寧に腰を下ろしてシーソーへ語りかけました。


「願いを叶えるとはなんでしょうか」



 すると、どこからか笑いを堪えた返事が返ってきました。


「それは僕ではありません」


 私は立ち上がって辺りを見回しましたが、振り向いても誰もいませんでした。


(あれ? 確かに声がしたのに)


 キョロキョロ周りを見ても誰もいませんでした。


 するとまた声が聞こえてきました。優しく穏やかな声で。



「相沢香奈さん、貴方は豆になりたいと聞きました。だから僕が願いを叶えましょう」


 どこを振り向いても誰もいませんでした。なぜ名前を知ってるのか、なぜ私の心の声が聞こえるのか、なぜ少年の姿がみえず声だけが聞こえるのか疑問の連続でしたが、それ以上に嬉しい提案だったので飛びつきました。


「できるんですか!? ぜひできるなら私をまめにしてください!!」

 

 私は喜びました。まさかの解決策がやってきましたから。当然飛びつかないわけにはいきません。



「いいですよ。でもその代わり、普通の生活ができなくなると思いますよ?いいんでーー」


 彼がいい終わる前に私は目一杯声する方へ答えました。


「いいんです!!」


 できるんなら、こりゃあ豆になるしかないと私は思いました。


「豆になれる! なんて素晴らしいじゃないですか! きっと、そうだよ、もし豆になったら、きっと楽しいこともあるはずだよ! そう、節分とかほら、豆の気持ちになったらちょー楽しそうじゃん! 節分とかさ、あれの豆になったら投げられるスリルを味わうってこともできるし!」



 少年の声が聞こえてこなくなりました。

  

 私の幻聴だったのでしょうか。


 よく耳を澄ますと、声を押し殺して笑っているようでした。笑いを堪えた少年の声が聞こえました。


「わかりました! 僕の力で無償で貴方のために貴方の意思で簡単に豆になれるように致しましょう!」

「ありがとうございます!!」


 私は声がする方へ深々頭を下げました。



 頭を上げると少年の声がまた聞こえてきました。


「あ、投げられたいと仰られてたので、魔法解除条件に思いっきり投げつけられたら、人間に戻れるってのもつけておきますねー」


 私はまたもや深々頭を下げました。


「ありがとうございます!!」

 

 キラーんという効果音が適するような、アニメの変身シーンでみるような輝きに包まれて、私は自在に豆になれるようになりました。



 その時々に応じて豆になりたいときに。

 ただし、投げつけられなければ戻れないという条件つきで。






☆☆

 教室内。

 窓からの夕日の日差しに照らされながら、話していた彼女だったが、ここで、語り終えたらしい。

 

 私に向かって満面の笑みでこういった。


「……ね?☆」


 俺は黙った。

 どう答えてやればいい。

 ツッコミどころがあり過ぎてどうしたらいい。


 豆になったというところはひとまず置いておくか。


 まぁ、深刻な家庭事情はなかったのはよかった。家庭内でなにかあったと知ったら、きっと俺はなんでなにも気づかなかったんだと自分を責めていたところだ。

そしてまぁ今更ながら、家庭内でなにもなかったにしろ、俺のマメになれという言葉がそこまで相沢を苦しめてしまった。半ば……いや半分以上相沢の自業自得だが、責めた言葉を放ったのは事実だ。もう少し言いようがあったはずだ。だからそこは悪いことしたなって思う。


「相沢、悪かったよ」


 相沢ははてなマークが頭に浮かんだような顔をして、俺をみている。


「マメになれ言い過ぎておかしくなってしまったんだよな。そこは悪かった」


 相沢はにこりとした。


「先生いいんですよ。私はそのおかげで、豆の素晴らしさに気づけました」

そうだな、きっと全人類が考えてない豆の素晴らしさに気づいてるよな、お前は。



「とりあえず、どうするんだ?」

 と相沢に俺は言ったが切り返された。

「先生こそ、どうするんですか?」

 どうするってなんだ?

「私は告白してるんですが」


 マジか。

 いや、ところどころ告白あったが。

 いや、考えてみればところどころではなかったかもしれない。


「先生……」

 ジリジリ迫ってくる相沢。怖い。


「あーーー! 俺は職員室に用事あったんだよなぁーー!」

 わざとらしい逃げ台詞だが、これしか思い浮かばなかった。


「先生」


 あれ?相沢の姿がみえない。どこいった?

 下をみると、小さな豆がある。



 ジリジリ……

 教室の床を豆がジリジリと動いている。



 どうやら今度はなぜか相沢は豆になりながら

 俺に迫ってきたようだった。

 なぜ、豆になった!? こんな場面で。

 ていうか豆がなぜ、俺に迫ってこれんの!? 動けるのか!? びっくりだ!



 ゴホン、とりあえず落ちつこう。

 冷静にならねば。


「相沢、先生はそのままでは絶対よくないと断言できる」


 相沢は豆になってるので全然表情がつかめないが、多分笑っている。


豆「えー私は楽しかったですよ!」


 俺は深刻な表情で話を続けた。


「豆になるまではいい」


 本当はよくないんだが。この時点で大問題なのだが。


「問題は解除条件だ!!」


 俺は声を張り上げた。


豆「はっ……!」


 豆になった相沢の声がした。





 そう、今彼女は豆になっているが、これは俺かもしくは誰かか投げつけないと人間に戻れないということだ。



 夕日に照らされた豆と俺は一人、これからのことを、有る意味進路相談をすることになった。


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