駄目
ねえ、母さん。
教えてくれたよね、母さん。
決まりごとを。
言われた通り守ってるよ、母さん。
でもね、母さん。
母さんの教えてくれたルールが難しいの。
どれだけがんばっても全てを守れないの。
どうしても、全てが満たせないの。
あなたの望む通りに動けないの。
あのね、母さん。
ある人に教えてもらったんだ。
ルールとは人が支配するものだって。
規則は人が生きていくために必要なものだって。
他者との交流を円滑にするものだって。
そう教えてもらったんだ。
ねえ、母さん。
母さんの言うルールはみんなが言っているルールとは違うよね。
母さんの教えてくれたルールを守っていると動けなくなるの。
支配に縛られて身動きが取れないの。
ねえ、母さん。
どうすれば、ルールが守れるの?
ねえ、母さん。
答えて、母さん。
ダメダメといつも言っていたよね。
あれもダメ、
これもダメ、
それもダメ、
あっちのもダメ、
ダメ駄目だめダメ駄目だめダメ駄目だめダメ駄目だめ……
何をしてもいつもその言葉ばかり。
だから母さん、教えて。
何ならいいの?
ダメばかりで身動きが取れないの。
何なら許せるの?
ダメばかりで何一つ考えられないの。
何なら良いと言ってくれるの?
教えて、母さん。
何をすれば、いいと、誉めてくれるの?
……ねえ、母さん。
あのね。
どれだけルールを守ろうとしても、守りきれなかったんだ。
母さんが挙げてくれたダメなところ。
どうしても直せなかったんだ。
それとね、母さん。
ダメな部分を自分の中から除いていったら……。
何も残らなかったんだ。
ねえ、母さん。
母さんの良いというものの無い自分は、
ダメな所しか無いワタシは、
生きている価値が無いの?
あなたの望むように動けないワタシは、この世界には必要ないの?
教えて、母さん。
ねえ。
あなたの望む人形になれないワタシは―――居なくなった方がいいの?