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一話 謎、自分、町、生物

記憶が無い。


深い眠りから覚めて意識が浮上すると、覚えのない苦しい頭痛とグチャグチャに混雑した思考に苛まれ一時は発狂しかける。数分くらいでやっと頭痛は収まり、思考も大分落ち着いた。

未成年なのに間違えて酒を飲んだのかな、と冗談雑じりで昨日俺は何をしていたのか思い出そうとして、記憶がポッカリ頭の中から消えているの事に気付く。

記憶が無いと大袈裟に言っても『自分』に関する部分の記憶、家族や友人がいたのか、以前の自分は何をしていたのかどんな奴だったのか、人物像を全く覚えてない。

言ってしまえばそれだけが、前の自分の事については一切覚えていないだけで携帯ゲームとかの遊び方や日本の価値観や倫理観、大方の常識的な事は覚えてる。


つまり知識が欠けたとか感情が無くなったとか何か大切なものを失くした訳でもないし大した問題じゃないと思う。

自分の無くした過去に興味はないのか? と問われれば、気にならなくはないし少々並み程度には知りたいなーと思いはするが。


(過去より今でしょ)


と空虚に向ってカッコつける。……痛いな、カッコつけたけど実際のところあんまり前の自分について興味はない。

だが唯一、とは言い難いが前の自分の事について覚えている事があり同時に凄く気になる所が二か所だけある。


チラリと視線をある部分に見詰める。周辺に落ちてある瓦礫と同じ灰色で爬虫類特有の鱗が全身ビッシリと覆われている身体。

顔を手で触れてみると前より顎が伸びて頭上に親指サイズの突起物が生えていたり目の位置が変わっていたり、顔にも硬い鱗がありそこをカリカリと伸びた爪で掻いてみる。

次に瞬きをして視線を下に向けると太くて長い蜥蜴のような尻尾が目につく、勢いよく当たれば結構痛そうだ。


「……グルルル」


喉から低い雷の音ような唸り声を鳴らす。その声が何処か若干悩んでるというか困惑の色が強い。いや事実悩んでいるし困惑している。割れたガラスを拾い覗く、ワニの目と似たような垂直のスリット型の瞳孔が怖い。

俺が知っている知識の中で当てはまるのは、架空の生き物で物語やゲームで現れる亜人、蜥蜴人リザードマン(仮)の姿形まるっきり類似していた。


はい、察しの良い方も悪い方も分かっていると思いますがこれ、です。どうやら何時の間にか“人間”から蜥蜴人になっていたようだな。


今一つ意味が解らない? 言っての通りだ。一つだけ前の自分について覚えている事、それは俺が人間だったということ。元から爬虫類の人間だった訳じゃない。生まれも育ちも前は人間だったと断固として確証できる記憶を保持している。


一体何がどうなったら俺は蜥蜴人間になるようになるんだよ、一体マジで何をやったんだ前の俺、そこだけが気がかりで興味が尽きない。


んでもって、何で町が廃墟と化して森・・・・・・・・・の中・・にあるのか、な。


記憶には何処も彼処も活気だっていた筈なのに、町は人の姿も気配すらも感じさせない物寂しい雰囲気を帯びている。瓦礫と化した店や半壊したビル、乗り捨てられた或いは放置された車やバイクに自転車等の乗り物、その他見た目ボロボロの建物や施設。

何があったのか所々火災が起きたような痕に、おびただしい血痕が町中の至る所まで残っていた。


(まるで偶にテレビのニュースとかで見ていたゴーストタウンか戦争の跡地だな)


見上げると、町の外に本とネットのパソコンでしか見たこともないデカい巨木が数多に並んでいる。

俺の覚えてる限りだけど確か外国の何処かにある樹高世界一の樹木は約一万メートルくらいあるらしいが遠くからの目安だけどアレ等は同等ではないのだろうか、ここから距離もあるのに自然は本当に凄いな。


巨木の枝と緑で町の上空が覆われて隙間から廃墟の町を陽の光が照らす光景は独特な魅力がある。少しだけの間眺めるが、現実逃避みたいだなと思ってしまい首を左右に振って不定しながら現実に戻る。


この現状は確実に異常過ぎる事態があったのは見るに明らかだな。俺が蜥蜴人になったことや町が廃墟と化し巨木の森に囲まれているのは何か関係がある気がする。


何だろうか、慣れ親しんだ町がこうなってるのに自分が別の生き物になったっていうのに心の底から嫌悪もしていないし絶望感を感じ得ない。

現状認識すればするほど普通なら恐怖とかパニックになったり不安を抱き危機感を感じるのだろうけど、何故かそういう気持ちは沸かなかった。


寧ろ俺の心は躍り、高鳴り、気分は上々に高揚している。たぶん『前の俺』という存在も『今の俺』と同じく非日常を望んでいた人格者ではないのだろうか。まあだからどうしたんだって言う話だが。


『前の自分』に興味はないけど、こういう訳の分らない事だらけに謎をそのままにするのは面白くない。謎を追い求めたくなる趣味を持っていた訳でもないのだが、強いて言うならば興味があり面白そうだからだからだ。

『前の俺』が一体何があってこうなったのか、何があって町がこうなってしまったのか、とにかく『今の俺』はこの謎を突き止めて解きたい。それに目的がある方が断然に面白い。探求心や向上心は生きて楽しむ為に必要な動力源だ。


(非現実的で未知だらけなこの現状、すべて受け入れて楽しまないと損ってもんでしょ)


目的は決まった。だがこの身体でも空腹が来るようで小腹がすいたので一先ず食料を確保しにコンビニ店へ行ってみるか。記憶にある道筋を思い出し俺は新しい肉体の試運転も兼ねて駆けだした。



追伸。リザードマンの脚力は人間より断然凄く速い、おそらく時速百キロくらい出たんじゃないだろうか。





ある半ば中心から崩れた廃墟ビルの中から現代日本だろうと外国だろうと地球上何処を探したって存在し得ない生物が現れた。


ギョロリ、ギョロリ、


一際デカイ眼球を蠢かせる獣とも生物とも思えない奇怪にして不気味な肉の塊。軟体動物のように全身歩行し右に、左に、下に、上に、ギュルンと気味の悪い眼球を回し視線をある一点に向けられる。

罅割れたアスファルトの道路にある無人の壊れた車の中を漁りまるでハトのようにうろついている動物達が居た。

生理的に拒絶する外見の目玉のよりかは動物らしいがこれもまた普通とは思えない動物。カラスに似た鳥頭を持つおおよそ約二メートル四足歩行の獣が三体。


視界に入った瞬間、奇怪な肉の塊は鈍重な見た目から想像できない俊敏な速さで鳥頭の獣に迫り、眼球がパックリと縦に裂けて開く。

裂けた眼球の中身は、鏃に似た歪な牙がずらりと並んだ獲物を食らう為の大口。鳥頭の獣共をまとめて大口で喰らい付こうとする。

だが鳥頭の獣も奇怪な獣が事前に察知していたのか散開し容易く躱す。奇怪な獣はそのまま鳥頭の獣が漁ってた車体に激突し車体を巻き込んで大きく回転、そのままコンビニ店へと向かいガラス張りの窓を割って大音響と共に店内にダイレクトお邪魔します! が決まった。


車体や店の品々や棚が邪魔で上手く身動きが出来ない奇怪な獣。その隙に鳥頭の獣達は裏路地に逃げ込み姿を眩ます。

やっとのことで店から出てきた奇怪な獣は縦に裂けた口を目玉に戻しギョロギョロと忙しく動かすも獲物が見失ったと分かると別の獲物を探しに行くのか交差点の向こうへと去っていた。


(……もう出てきても大丈夫だよな)


少し間を空けてこの場に誰も居なくなり安全を確証すると俺は瓦礫な中から這い出る。崩れた薄暗いコンクリート瓦礫の中に隠れてあの獣達に標的にされないか巻き込まれないかドキドキしたー、つかすっげ怖かったわ!


だってダイレクトお邪魔しますをしたコンビニ店から数メートル離れた先の瓦礫の中に隠れていたんだぞ。あんな気持ち悪い生物に襲われるなんて嫌でしょ。


(にしても、俺以外にも架空にしかいないような生物がこの町に居るだな、おっとと)


益々気になるな、この町で一体何が起きたらあんなビックリ生物が闊歩するような魔窟になるのやら。奴ら以外にも見たことのない生物がこの町中を巣食って今じゃ自然に似た弱肉強食と化しているのかな?

想像してみると何故か居るとは確証ができ実感ができて恐ろしい、が同時に未知の生物を探し出して生物調査という名目で活動をしてみるのも面白そうだ、楽しみが増えた。


足場にしていた瓦礫を崩し膝を折り掛けるも歩を進め、目玉生物にハチャメチャにされた自動ドア入り口からコンビニ店に入店する。

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