第3話
辺りが明るくなると、自分がやたら機械質な部屋にいることが確認できた。目の前には小さなディスプレイがあり、選んでくださいという一文の下に、赤で鬼、白で人、紫で半妖と書いてあった。
少しの間悩んでいると、そこから半妖が消えた。もうしばらくすると鬼が消えた。仕方なく人を押すと、扉が開き、制服らしきものが出てきた。それと同時にアナウンスが流れた。
「その制服に着替えて下さい。そしてあなたは、人 を選びましたので、紋章を刻む場所を設定してください。」
ディスプレイが効果音とともに映像を切り替えた。そこには簡易的な人の絵が映っていた。前と後ろから見た図を示したものだろう。制服に着替えた後、適当に腹部を押したところ自分の腹部が一瞬光った。それと同時に制服の色が白を主体とした色へと変わりはじめた。
自分の腹部を確認したところ、自分がさっきタッチしたところに直径十センチほどの魔法陣のようなものが描かれていた。腹をこすっても取れないようだ。わずかな時間に立て続けに起こった不可思議な現象のせいで混乱しているなか、再度アナウンスが流れた。
「それでは<隔離鬼ごっこチュートリアルver.>会場03へ移動。・・・完了。扉が開きます。それでは、ご検討を。」
左側にある壁が開き、外の風景がのぞいた。外に出ると、さっきまでいた部屋は、もともとなかったかのように閉じて消えた。それとほぼ同時に時計の表記が変わり、鬼のマークのとなりに2、人のマークのとなりに3、yourのとなりに人のマークが。そして残り半分のスペースに大きく1:20:00と表記された。
自分が今いる建物は、見た限り和風の平屋といったかんじか。建物の構造的には、十字路が多いようで、通路の広さは人が三人並んでも普通に歩ける程度だ。廊下の床は板材で統一され、室内の床は畳と板材の両方のようだ。倉庫以外の部屋はみな畳で床が敷かれている。
あたりを見回ったが、出口は開かず、外にはでられないようだ。東西に広がりのある建物のようで、廊下の長さは長くて40メートルほどもある。部屋は大体7部屋。うち一部屋は大広間のようになっている。
ふと顔をのぞかせた部屋には、上へと続く階段があった。しかし、その先には仏壇しかなく、2階は無いらしい。その時だった。聞いたことのない曲が流れだした。曲自体は15秒ほどで止まった。曲が止まるや否や、アナウンスが始まった。
「10秒後に人の合流です。」
それから10カウントした後、少し先のところに一人の男があらわれた。制服は自分と同じ白を主体としたもので、相手は少し驚いているようだった。それから息もつかぬ間にアナウンスがはいった。
「10秒後に鬼との合流。ならび、ゲーム開始です。人の皆さんは鬼から逃げる準備をしてください。」
10のカウントの後、一つの部屋から二人、赤を主体とした制服を着て出てきた。性別は異なるようだ。制服の色は俺たちと異なるが、デザインは一緒のようだ。
「時間は120。ゲーム、スタートです。」
アナウンスが終わるとともに、そのうちの一人が何かを見つけた様に走って行った。残ったもう一人と俺たちは目があった。そしてそいつはニタッと笑いながら、
「俺は鬼さんだから、人を捕まえないとなぁ。」
そういってあくどい笑いを顔に浮かべ、低い姿勢でこちらへと走ってきた。