第2話
日は流れ、3月も今日で終わりとなる。高校に入ってから卒業するまでにしてきたバカ騒ぎは覚えてないというのに、あの日PCに映し出された文字を忘れることはなかった。
明日、指定された場所、時間に向かわなければどうなるんだろう。豚小屋といわれても、それが何を指すものなのか。本当に家畜の豚小屋だったら困るな。いろいろな意味で。結局、そのまま寝付くことなく4/1の朝を迎えた。
12:00をむかえる10分ほど前、俺は指定された駅に着いた。辺りに人気は無いし、山菜取りにでも出かけないと訪れないような場所だ。バス停とはいっても、もうすでに廃駅となっていて、以前使われていた標識が置いてあるだけのようだ。おかげで探すのに少し手間取った。
12:00きっかりに、古臭いバスが俺の前で停車した。バスのドアが開くと同時にゆっくりと、仮面をつけたスーツ姿の男が降りてきた。その男は、俺にペットボトルに入った透明な液体とお菓子を見せてきた。ジェスチャーからして、俺にどっちか選んで食せというらしい。どっちを選んでも結果は同じ気がするが、気まぐれでお菓子をえらんだ。
食ってみたが、味に関しては特に変わった点は感じられなかった。だが、飲み込んだ瞬間にあたりが強烈にゆがむような感覚に陥った。次第に立っていられなくなり、地に伏せた時には目も開けられなくなっていた。それから間もなく、地面に転がったお菓子がはなっていた、独特な甘い匂いさえもどこかかすれて消えていった。
俺が目を覚ましたのはバス停だった。これまた古臭く、腐りかけた木製のベンチの上に座らされていた。体にはご丁寧に毛布が掛けられていて、腕には見慣れない時計がつけられていた。時計の下のほうにはボタンのようなものがついており、表示されるのは日付と時刻だけのようだ。
持ってきたケータイやその他もろもろは取り上げられてしまったらしい。時計は14:50を示していた。テスト開始の10分前。
ふと後ろを見ると小さな木製の小屋があった。それはまるで家庭用倉庫のような大きさだった。そこには遊戯学校へようこそ。と、かすれた文字で書いてある。遊戯学校ができたとされてから7年ほどしかたっていないというのに、ずいぶんと風化しているものだ。
その朽ちかけたドアノブに手をかけ、ドアを押すと、入っていきなり下への階段が姿を現した。
手すりもなく、数メートル先も見えない暗闇へとのびる階段は、意外と緩やかに、そして長く続いていた。壁に触れる手が凍えそうになった頃、目の前に明らかに真新しい扉があらわれた。
緑色の光が、扉のふちをかたどりながらまわっている。そのかすかな光だけでも、その扉がこの空間において異質な雰囲気をはなっていることは容易に理解できた。
その扉の前に立つと、温かい空気とともに余るほどの光が俺を出迎えた。前もよく見えないままに、俺は部屋に足を踏み入れた。瞬間、唐突に機械が爆音で喋りだした。
「タイムアップー‼今、この時点で終わり。終了。あ、入試がじゃないよ?まだ来てない人はいないよね。いたらその人は終了。豚小屋へゴー。問答無用。おk?あ、でもここにいない人には聞こえてないか。まあいいや。どうせもう全員集合してるし。」
随分おしゃべりなやつだ。ようやっと明るさに目が慣れ、声の主を確認することができた。そいつは、あの日みたあいつだった。TVのディスプレイは真っ黒で、そこに紫の目が見開いている。あの時はにらみつける表情しかしなかったが、こいつは笑顔になったり悲しい顔をしたり、表情だけでも忙しいように思える。
ディスプレイに気を取られて気付かなかったが、俺のほかに何人もいるようだ。皆が一様にディスプレイを見ているが、その表情は様々だ。
「さて、みんなには入試テスト?を受けにもらいに来たわけだけど、内容は話さなくていいよね。どうせ風のうわさで聞いてるだろうし。あ、そうだ。ルール説明もないし、ちゃちゃっとやってみよう。まあ、チュートリアルだと思って。あ、でも脱落する人はいるかもね。まあ、とりあえずついてきてー。あ、僕のことはルアラって呼んでいいよー。名前なんてないしね。」
自分のことをルアラというTVに映っているそいつは、少し奥のTVに移動しては呼びかけ、次のTVに移っては呼びかけをくり返した。途中、ルアラなりと思われるジョークを飛ばしているようであったが、こちら側のあまりに薄い反応に対して怒ったり、つんつんしたり、ほんとうに忙しいプログラムだった。人間よりも人間らしいと思うほどに。
しばし歩いた後、3つのエレベーターが姿を見せた。このエレベーターは地下にしかつながっていないらしい。
「それじゃあテキトーに入って。別にこだわりとかなく。あってもいいけど。まあ、早いもん勝ち?どうでもいいけど。」
これほどまでかというくらいにおしゃべりなプログラムだ。俺はその場の流れか、一番近くにあった真ん中のエレベーターに乗った。一緒に数名と乗り合わせたが、言葉を交わすこともなかった。下へ参ります。というアナウンスとともに電気が消え、真っ暗になった。
それに対する驚きの声が一瞬聞こえたかと思うと、すぐさまエレベーターが高速で横回転し始めた。そのせいかその場にすくむ人も多かった。俺たちより前に乗った人たちが降りていく際にはこんなことはなかったはずだ。中にいる人たちの悲鳴は、回転が収まるとともに聞こえなくなった。それでも俺の吐き気が収まることはなかった。
次回からいよいよゲームスタートです。
そろそろグロい表現なんかが出てきます。
ゲームによっては全くグロい表現がないもの〜グロい表現しかないものがあります。