第12話
長くなった...
「毎年、それを聞いてくる奴が山ほどいるよ。でも、君みたいに、試験の先について考えてる奴は少ないね。」
「お前がAIっていうことが信じられなくなってきたわ。」
「それは前から言ってたでしょうが。まあ、失格なら記憶消すだけだし、いいんだけどさ。」
ルアラの説明は至って簡単だった。
「僕らの上の連中は、ただ単に人材を欲してる。危険に陥った時にも対処でき、必要な時に一定以上の能力を発揮でき、いつも物事の最善を考える。そんな人材を。」
「・・・なんのために。」
「それは言えない。高貴で壮大な計画のもくてきだからな。」
「お前高貴って言葉好きだな。」
わざと話をずらした。なんだか、これ以上知ると損しかないきがしたから。まあ、先ルアラが述べたような人材になればいいってわけだ。
「ねえ。」
「うん?」
「コンピュータが持つことができないとされるものって、なんだかわかる?」
「感情ってやつか?」
「そう。それは命を持つ存在しか持つことが許されないものなんだ。」
「ネットやらなんやらでは、人に近いロボットはそれを得るってきいたが。」
「それは、君たちが持っている感情と似て非なるものなんだよ。人工知能では、人間に追いつくことなんてできない。」
「なぜ?」
「まず容量が足りないんだ。生物は成長できる。だから、上限は計り知れない。でも、人工物は違うんだ。仮にそれを再現できたとしよう。でも、人の脳は、ちょっとずつ、変わっていくんだ。より効率的になる様に。それも再現出来たとしよう。自己修復もできたとしよう。でも、制御できないんだ。無限にある回路を組換え、プログラムを改変し、それを制御するプログラムを作って。そんなことは夢見事なんだよ。できっこない。コンピュータにとって感情はエラーでしかない。エラーはあまた存在して、見分けるなんて到底むり。できるとしたら、人を作るってことくらいだよ。人を原子レベルで作って、感情をいれる。」
ルアラがなにをいっているのかが、わからなくなってきていた。もともと、ルアラを理解なんぞできるとは思っていない。
「でもさ、それでできた人は、人間なんだよ。コンピュータじゃない。それが君たちと異なる点は、生産速度の違いだけ。」
「なんでそんなめんどい話を?」
「僕は、必要なことだけを覚えてる。苛立たせること。教えること。僕は相手を喜ばせる方法を知らない。知っても、わすれる。そうプログラミングされてる。人間になれない理由。それは、プログラムに逆らえないってところ。だから、君とのこの話は覚えてない。次に会う僕はきみを苛立たせる。僕は学習なんてしてないんだ。ただ、必要なことを逐一アップデートしてるだけ。抗えない。まあ、いいんだけどね。」
「きもちわりいな。お前が下手に出るなんて。」
「あは。どう?腹立った?うざかった?」
「ああ。それなりにな。」
あーあ。気色わりい。どっか頭の隅っこでこいつを同じ人間みてえに捉えてたところがあったってのか。だから、それをこいつに否定されて気持ち悪いのか。
「俺は、どうすりゃいい。」
「あーあ。うざいやつ。そう思ってよ。少なからず、それを最良だと思ってる。」
「りょーかいです。ルアラ殿。」
「ふふふ。わかればいいのだよ。cryとかいう雑兵よ。」
なんだか、複雑な感じだ。コンピュータ。こいつを認めてるってこともそうだが、人間より人間らしいところを見せてくることに。
どうせならコンピューターになりたかった。
なつかしいな。今も、そんな風に考えてるんだろうか。まあ、わかんないなら、それでいい。それが幸せってもんだ。そう、なはずだ。