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騎士様と公爵様と姫君!?

「では、こちらはどうかの? 29歳、社会人じゃぞ」

 スッともう1枚写真を出してくる。


「騎士みたい……」

 そこには、同じく遠くから撮ったであろう、刀を左手に、手ぬぐいを右手に持ち頬の辺りを拭く凛々しい男性の姿があった。和の物を持っているが背筋に1本筋が入ったような精悍な佇まいは、侍というよりアニメで観る騎士のように感じた。

 今度は、明らかに日本人、私と同じ黒髪、黒目の純日本人の特徴。けれど、明らかに私より艶やかで美しい黒髪で羨ましい。私のボリュームが多く、軽く癖がある髪はまとまらず、ただ黒々とした髪は重い印象ばかり与えている。少しでも軽く見せようと襟足に付く程のボブスタイルにしたけど、あまり効果は無かった。

 写真の男の整った顔つきもさることながら、体つきは、それ以上に魅力的に感じた。先ほどの王子様に比べたら鍛えられた印象を与えるが、けっして筋骨隆々というわけではない。スレンダーでありながらスポーツで鍛えられた無駄の無い筋肉をまとっているといった感じである。何故、写真でそこまでわかるかと言うと――


「って? これ上半身裸じゃない」

 運動後なのだろう、薄ら汗をかき、それを手ぬぐいで拭っている仕草が色気を感じる。下半身には袴を身に着けている為、18禁とまではいかないが、年頃の娘に見せるのはどうかと思うよ? お爺様。


「将来の旦那になる男の裸なら見ても構わぬじゃろ」

 おい!!っと、思わず突っ込みそうになるのを押さえながらお爺様に問う。


「こちらのお方は先ほどの方のご兄弟デスカ?」


「いやいや、こやつは2年前に酒場で偶然会った女性の孫でな。その人もまた、忙しい上にワシと一緒に居る所を人目につくと不味い人でな。この男は、ライバル企業の跡取り候補でのぉ」


「つまり、この男性も結婚相手候補だと?」


「そうじゃ、ど――」


「結構です!!」

 お爺様が言い切る前に断る。歳の差婚が芸能界で流行ったりしてるのは、聞いたことあるけど、10代の孫に勧めるのはどうかと思うよ?


「そうか……」

 再び残念そうにお爺様は写真をしまい、入れ違いにもう一枚。


「この男は、どうかの?18歳、学業と共に声優とかいう職業もしてるそうじゃよ。確か『KAZUKI』だったかのぉ、芸名は」

 二度あることは三度あるってか、同じく望遠レンズで撮られたであろう写真が差し出される。

『KAZUKI』と言えば、『アーサー・クロニクル』ってアニメの準主役のウィルソーニ公爵やってる人じゃない?顔出しNGながらも、低く心地よい魅惑的な声は大人気で、ソロでキャラソン出すほどだっけ。一時期、紅白に声だけ出演も噂され、芸能云々に詳しくない私でさえ聞いた事のある名である。

 写真の男は、明るい髪色っといっても、先ほどの王子様のような金髪ではなくメッシュに染めている茶髪。目つきも鋭く、隠し撮りのはずなのにこちらを睨んでいる。何処かの学校の授業を受けている所なのだろう、頬杖をついている。長い指からは、チラリと整った爪が見える。「爪の形ちょー綺麗、手タレ以上だよ」っと思わず感心してしまう。悲しいのでもう自分とは比較しない。

 スッと通った高い鼻に、肉厚の唇、そして意志の強さを感じさせる瞳が、ただの不良とは違う風格を醸し出している。


「こちらの方は?」


「3年前じゃったかの、とある政治家の――」


「いや、何でも無い。説明要らないから、結婚しませんから」

 もう、聞くのが馬鹿らしい。お婆様の言っていた事は、確かかもしれない。この人にお酒からませるとろくな事が事が無いのが身に染みて分かった。


「まだ、説明の途中なのにのぉ。婆さんに似てせっかちじゃのぉ。それじゃ」

 マテ?「それじゃ」って言ったよね、今。やっぱり出てきた、次の写真。


「こやつらは、17歳。一学年したかの」

 そういって出した写真には2人の人間が映し出されていた。


「お爺様?私は女なのですが?」

 まだ、あるのかと「性懲りも無い」っと怒鳴ろうと思ったが、それ以上の驚きでその台詞は出なかった。

 差し出された写真には、2人の人影があった。一人は、今時珍しくなった大人気の清純派アイドル『みなみ 双葉ふたば』。癒し系というよりは、美しさを前面に出し、高貴な雰囲気は、男性ファンのみならず女性をも虜にし、『現世うつしよ姫君プリンセス』とさえ呼ばれている。腰まである軽く波打つ亜麻色の髪の毛。日本人にしては色素の薄い瞳には、長いまつげに縁取られ、肌はもちろん滑らかで白い。唇は薄紅色で花の様に美しい。体つきも私のように肉が無くて細いのではなく、程よく柔らかそうな細さ。作られた人形のように精巧なアイドル。

 そして、もう一人は双葉にそっくりの人物。髪がショートであるが、同じ程の背丈に似たような顔つき。姉妹なのだろうか、美しい家系には美しい人が集まるのなんだなぁ……って、我が家系も従姉のお姉ちゃん達、いやお兄ちゃん、伯父さんも達も含め母方の親戚は皆、ちょー美形なんだよね。彼らは、オーラが違う。親戚の中で私だけ、『ザ・日本人顔』。良くも悪くも、普通。母方の祖母に似ていると言われるけど、写真で見る限りそれ程似てないような? 生活スタイルが違うからかなぁ、うちのお母さんは恋愛結婚して普通の地方公務員の男に嫁いだので、我が家はちょー普通だったと思う。3LDKのアパートに家族3人暮らしだったし。まぁ、今はわけ合って父方の祖母に引き取られ喫茶店でバイトしながらの生活だけど。そもそも絶世の美少女と言われるアイドルと自分を比べるのは間違っているわ。


「どうじゃ?」

 黙って物思いに耽る私にお爺様が声をかけてくる。


「だから、女性とは結婚できないって」

 日本では、法的に同性結婚に関しては認められていないはず。


「こやつらは、男だぞ」


「はぁ?」

 やっぱり呆けたか? お爺様。まさか、今お酒が入って酔ってるのか?


「ほれ」

 そういうと、もう一枚写真を出す。そこには、男物の制服を着た先ほどのショートカットの人物が二人。男性物の衣類を身に着けた姿は、意外にもしっくりとしていて、美形には違いないが……美少女ではなく、美少年である。

 おそらく化粧のせいも多少はあるだろうが、着る物と髪の長さでここまで変わるものだろうか。


「マジデ!?」


「マジデだぞ、こやつら二人で一人のアイドルを演じておる」

 カッカッカッと、実に嬉しそうにお爺様は笑い、そして――


「こ――」


「お断りします」

 お爺様の言葉は、遮られた、容赦なく。有無言わせないテンポの速さで却下されお爺様はションボリ。けれど、もうその顔には騙されない。


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