5番手と恋愛結婚と王子様!?
私の心からの叫びにお爺様はしょんぼりとする。
「そうなのかぁ・・・まぁ、年齢的に21歳の多佳子(お爺様の長男の長女)か・・・20歳の詩織子(お爺様の二男の長女)、それに双子の佐和子(お爺様の長男の次女)と千加子(お爺様の長男の三女)が18歳か・・・その次にお前が候補かのぉ」
「ほぉ。従姉のお姉ちゃん達が筆頭なんだ」
順番で言えば、私は5番手。
なら、大丈夫か安心した。
「ワシも恋愛結婚したし、お前の母親、百合子も恋愛じゃろ……無理やり結婚などさせる気はないのじゃ」
ある人と飲みたいが故に孫娘を進める爺が、何を言う、と思ってしまうけど、まぁその意見には賛成だわ。
「多佳子達にも同じ話をしたのじゃが、きっぱり断られてしもうた……」
そりゃそうだろう。
「一応、向こうさんには多佳子の写真や経歴……釣書も送ったのだがのぉ」
多佳子お姉ちゃんが、それ知ってるのかな? 優しくって頼りがいのあるお姉様タイプの多佳子お姉ちゃんだけど、怒ると怖いよ。
「向こうさんの息子もまだ学生だからと、乗り気ではないらしい……」
そうだろうねぇ。
「息子さんの写真はこれじゃ」
スッと机の上に1枚の紙を置く。
「へ~綺麗な人だね」
本来なら、男性の褒め言葉はカッコイイとかイケメンとか表現すべきなんだろうけど。遠くから撮ったであろう、やや画質の悪い写真でさえ分かる肌理細やかな白い肌。シャツから伸びる手もスラリと長くモデルのように美しい。顔付きは全てが整い、完璧としか言いようの無い、精巧過ぎ神秘的なほどである。また、体のバランスを見る限り、長身であるのも間違いないだろう。まさに綺麗というにふさわしい風貌。
悔しいが正直、女の自分でさえこの肌には勝てない。歳相応に人並みに洗顔とか化粧水とか肌の手入れはしているけど、チョコを食べればニキビはでるし……
「って? あれ? 髪の毛、金髪に青い目って……外国の人?」
サラサラの風になびく髪は優しい金色に輝き、神秘的な青い瞳は、明らかに日本人じゃないよね。
「スルウェード国籍らしいぞ」
「はぁ……」
聞いたことはある……確か、ヨーロッパ大陸にある内陸の小さな国で豊かな自然を求めて観光客が多いとか、地下資源が豊富とか……確か未だに王制って地理の時間に習ったような。
「そこの王族、王子らしいぞ」
「はぁ!?」
ちょいちょい、そんな人間と結婚させようとしているのかよっ。
そういえば、去年スルウェード国王が来日したニュースしてたけど、まさか……その時……?
「どうかのぉ?」
雨の日の捨て犬のような目で私を見るお爺様。
「いや、そんな目で見られても無理だし」
お爺様の事は好きだけど、この話は断るしかない。王子様との結婚を夢見るのは、せいぜい小学生いや、幼稚園児までだろう。
「そうか……まぁ、当人同士の気持ちが大事じゃしのぉ」
さすが恋愛結婚したことはある、お爺様。
いつも強引な所あるけど、今回は気持ちが分かってくれたみたい。
「そうそう、そこが一番大事」
実に残念そうに私をお爺様は見ると……写真をしまい、ため息をつく。
お爺様孝行はしたいけど、そこは無理だから、ごめんねと内心謝る。