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第1章 秘密を秘めた甘いハチミツの誘惑ショコラ

 サン・セルジュにはある噂話がある。

【サン・セルジュには特別な客しか通さない秘密の部屋があり、そこでしか食べることが許されない幻のケーキがある。しかし、そのケーキは選ばれたものしか食べることが出来ない。

 運良く食べられた者はケーキのあまりの美味しさに店から一生出てこないという】

 この噂話は、タンツェルン街に住んでいる人なら誰でもが知っていて、サン・セルジュが人気店になった一つの要因となっている。

 タンツェルン街のタウン誌【マルクト】専属フードライター、キトリー・オリオールもその噂話が気になって何度もサン・セルジュを訪れている常連の一人である。

「さぁ、今日こそハッキリしてもらおうじゃない? 幻のケーキがあるのだったら今すぐに出しなさい。折角サン・セルジュの記事を書いてあげたんだから、お礼くらいはしてくれたっていいわよね?」

 店閉店後のサン・セルジュ。サミュの書斎でキトリーは自分が書いたサン・セルジュについての記事をずずいとサミュに見せ付ける。

「前から言っているじゃない、キトリー。それはただの噂であって、幻のケーキなんて無いんだよ。

 それに、折角記事を書いてくれたのはいいんだけどさ、俺は俺のペースでこのサン・セルジュをやっていきたいのだけども……」

 サミュはキトリーから記事を受け取り、大きなため息をつく。

「もうちょっと多忙に慣れたらどう? それだから、今日の客入りの多さに途中で固まるのよ」

「うっ」

 キトリーの小言にサミュはグサッと刺さるものがあった。

 数時間前、キトリーの書いた記事の効果でサン・セルジュはいつもより客の入りが多く、あまりの忙しさにサミュは途中でフリーズしてしまったのである。

「マスターは決して人気を勝ち取るために店をやっている訳じゃないんですよ。あくまで自分の作ったケーキを食べて欲しいと純粋に思っているだけで……」

 サミュとキトリーの二人分の紅茶を持って書斎へとやってきたクルスのフォローにサミュは何度も大きく頷く。

「そ、そういうことだよ。だから俺の自由にして欲しい訳だよ。解ったかな? キトリー君よ」

 サミュはクルスが入れた紅茶をすすりながら答える。しかし、目は泳いでいた。

 書斎で今までずっとくつろいでいたイスモが「クルスさんに助けられたな」という言葉が聞こえた様な気がしたが、あえて無視を決め込むサミュ。

「まぁ、いいわ。それよりそろそろ“ヴァイゼ・フェスト”だけど、サン・セルジュはもちろん出店するわよね?」

「いや、サン・セルジュは出ないよ。毎回出ていないし、面倒くさいというのもあるけど、俺は毎回その日だけはどうしても外せない用事があるからさ」

 サミュはそう言ってクッキーを齧る。

 賢者の祝祭ヴァイゼ・フェストとはタンツェルン街周辺で四年に一度行われる大きなお祭りのことで、市民を救った賢者を讃えるお祭りである。


 今から数百年くらい昔、タンツェルン街周辺はある宗派の教会によって支配され、市民達は苦しい生活を強いられてきた。度重なる重税や聖職者達の相次ぐ汚職に住民は怒り心頭であったが、誰も逆らえる者など居なかった。

 そんな教会の支配から市民を救ったのがタンツェルン街に住んでいたヴィルジールという錬金術師である。

 ヴィルジールは単独で教会へと乗り込み、無血で聖職者達を屈服させ市民に自由と平和をもたらした。

 市民達はその英雄を讃えるべく、こうして四年に一度お祭りを開催している。


「せっかくヴァイゼ・フェスト向けの記事を書くときにサン・セルジュを大々的に特集してあげようと思ったのに、外せない用事があるのなら仕方ないわね。もしかしてデートかしら?」

 キトリーの何気ない一言にサミュはクッキーを喉に詰まらせ咽る。クルスは慌ててサミュに紅茶を差し出し、サミュは其の紅茶で喉に詰まったクッキーをゆっくりと嚥下させる。

「キトリーさん、マスターに彼女が居ると思いますか?」

 イスモはファッション雑誌に目を向けつつ、キトリーに訊ねる。

 その言葉にキトリーはサミュを暫し見つめ、

「あの容姿と性格じゃモテる要素ゼロね。それに、もうちょっとドジを直してくれないとどうにもならないわね。私なら付き合いたくない人間の部類のうちに入るわね」

「ぐはっ」

 キトリーの言葉にサミュは大ダメージを受け、机にうな垂れる。

「あっ、私そろそろ打ち合わせに行かないと行けないわ。また遊びに来るわね」

 キトリーは用事を思い出し、立ち上がってそそくさと書斎を後にした。

「マスター……」

 クルスは哀れみの表情を浮かべ、

「マスター」

 イスモはニヤニヤしながら、

「「フラれましたね」」

 同時に解き放たれた二人の言葉にサミュは再び撃沈した。


「そういえば、例の賢者さんってマスターは会ったことあるんですか? 私達は召喚される前のことなので気になります」

 クルスが新しい紅茶を入れてうな垂れているサミュに差し出す。

「おっ。それ俺も聴きたいな。賢者というだけあってさぞかし格好良かったんだろうな。マスターとは違って」

 イスモの余計な一言はサミュの脳内で軽くスルーされる。

「ヴィルジールとは何度か会ったことあるが、市民が讃えるほど英雄っていう柄でもなかったなぁ。アイツが教会に殴り込んだ理由も自分の都合だったから、アイツ自身も英雄と讃えられたく無かったみたいだぞ」

 サミュは紅茶を一口飲み語る。

「何度か会っただけにしては詳しいですね」

 クルスの指摘にサミュはずずーっと、音を立てながら紅茶を啜る。

「アイツはお喋りだからな。正体不明な俺にもペラペラと愚痴零していたのさ。存分に愚痴を聞いてやった日から数日の内にアイツは何処かに消えていったけども」

「何処かって何処に?」

 サミュの話にイスモが食い気味に問う。

「さぁね。当時は英雄の名を聞きつけた何処かの国の公爵に認められて、そこのお抱え錬金術師になったとか、宗教の残党に抹殺されたという噂も出たけど、結局分からず仕舞いだった。

 まぁ、アイツは錬金術の腕だけは確かだったらしいから不老不死の技術を開発したとかで未だに生きていたりしてな。もし会ったとしても、数十年に一度姿と名を変えている俺には気付かないだろうけども」

 笑いながらサミュは冗談めかしてそう答えた。

「へぇ、そんなに凄い術者だったのか。やっぱりマスターとは雲泥の差じゃないか」

 イスモがそう言うとサミュはふくれっ面になって、答える。

「俺だってその気になれば錬金術の一つや二つ簡単に出来るよ、そのやる気が無いだけで。

 さぁ、雑談の時間が終わりだよ。そろそろみんな寝始める頃だから二人とも準備をしておくれ」

「はい。分かりました」

「へいへい」

 サミュの指示でクルスとイスモは書斎から出て行った。


 サミュによって召喚されたバク、クルスとイスモは召喚契約の時に二つの役目を負わされている。

 一つ目は人型になり、住み込みのウエイターとしてサミュの手伝い、上質な夢をサミュに食べてもらうこと。

 二つ目は、住人が寝静まったタンツェルン街で住人達の夢を回収することである。

「それにしても、マスターが昔話するって珍しいことでしたよね、クルスさん」

 夜のタンツェルン街の空を翔けながら、真っ黒いバクのイスモが真っ白いバクのクルスに話しかける。

「そうですね、あー見えてもマスターは恥ずかしがり屋な節がありますから、そう自分の過去話を語ることは稀ですよ。まぁ、そんなマスターが可愛いですけど」

 クルスはキャーと黄色い声を出しながら顔を真っ赤にする。

「クルスさんは本当にマスターのこと溺愛レベルで大好きですよねぇ。そりゃ、召喚してもらった恩もありますけども、あまりにも天然ドジが目立って尊敬できないというか……」

 イスモは苦笑しながらクルスに話しかける。

「イスモ君はまだ召喚されて日が浅いからね。私も最初はそんな感じでしたから、その気持ちはよく分かります。

 でも、マスターと長くいるからこそ尊敬するところや愛くるしいところも見えてくるものですよ。そのうちイスモ君にも分かるはずです」

 クルスは満面の微笑でイスモに答える。余りのマスター愛にイスモはタジタジであった。

「やっぱり、クルスさんには敵いませんよ。さて、そろそろ一仕事始めるとしますか」

 イスモはそう言って一軒の家へと降下する。

 窓から覗くと、其処にはクマのぬいぐるみを大事そうに抱えた幼女が幸せな顔で寝ていた。枕元には、紅茶の茶葉を入れた袋が置かれていた。

「ここだな」

 イスモは壁をすり抜け、幼女の側へ近寄った。

 タンツェルン街近郊の街では、悪夢を見たときのおまじないとして、『枕元に紅茶の茶葉を袋に入れて置いておくと妖精が茶葉を貰いに来る代わりに、悪い夢を食べてくれる』というものがある。実はコレはサミュがワザと広めた噂で、イスモやクルスはこの紅茶の袋を目印に夢を回収するのである。

「さて頂戴するとしますか」

 イスモが幼女のおでこに前足を触れると、魔方陣を錬成する。

 すると、幼女が今見ている夢がイスモの前に出現、イスモはそれを一口で飲み込んだ。

「ふぅ、ご馳走様でした。やっぱり子どもの夢は甘くて好きだなぁ」

 満足げなイスモが幼女の住んでいる家から外へ飛び出すと、そこにはやつれた表情のクルスが待っていた。

「ど、どうしたんですか、クルスさん。凄くやつれた顔をされていますけど?」

 あまりのクルスのゲッソリ具合に、イスモは慌ててクルスに駆け寄った。

「立て続けに五軒とも悪夢が続くと、流石にキますね」

 どうやらクルスは、イスモが幼女の夢を堪能している間に五軒も回って夢を食べてきたらしい。

 しかも、全部悪夢。

 悪夢が人間にとって嫌なものと同じく、夢を食すバクたちにとっても悪夢はあまり美味しいものではない、むしろ食べたくないものに属する。しかし、主であるサミュの命であるからこそ、クルス達はこうして悪夢を食べるのであった。

「でも、こうして紅茶の茶葉がいっぱい手に入ったので大満足ですけどね」

 クルスが胴体に括り付けてある袋を前足で指すと、其処には茶番の入った袋が五袋ぶら下がっていた。

「見たところ、アレもコレも有名ブランドの茶葉ばかりじゃないですか」

 クルスは紅茶集めが趣味のため、茶葉を一目見たり、匂いを嗅いだりするだけで品種やブランドを判別できる。

「またコレクションが増えると思うと、コレくらいの悪夢ドンと来いです」

 まだゲッソリしているクルスは出来うる限りの笑顔をイスモに振り撒いた。

 イスモは少しため息を吐くと、クスリと笑う。

「本当にクルスさんには敵いませんよ。クルスさんは少し此処で休んで下さい。残りは俺がやりますから」

 そう言って、イスモは住宅エリアの奥へと消えていった。


 それから二時間後。

「イスモ君遅いなぁ、そろそろ朝が来てしまう」

 クルスはハラハラしながら東の空を見る。薄くではあるが空が菫色になりつつあった。朝が近い。

「早くしないと皆起きちゃう」

 クルスがソワソワしながらその場をウロウロしていると、クルスの何倍もやつれたイスモがヨボヨボと戻ってきた。

「うえっぷ、胃にくる」

 イスモは渋い顔をしながらクルスの元へと来る。

「イスモ君大丈夫ですか? 顔色が限界を通り越して白くなっていますが?」

「何とか持ちこたえられているので大丈夫ですよ。それにしても、回る家々で怒涛の悪夢続きだなんて思いもしませんでしたよ」

 イスモはフラフラしながら答えると、クルスはしばし考えを巡らせる。

「思ったのですが、一晩で悪夢を見ている人が多いなんて少々異常ですね。コレが何かの前触れで無ければいいのですが」

 クルスの言葉にイスモは頭に疑問符を浮かべる。

「クルスさん、俺はこういう状況は始めてですが、異常というまではいかないと思いますよ?  “たまたま”ということも考えられるかと」

「それでも、マスターに報告することに越したことはないですね。朝もそろそろ来ることですし店に戻りましょう。イスモ君一人で飛べますか?」

 クルスの問いにイスモは首を縦に振った。

「では、戻りましょう」

 クルス達がサン・セルジュに向かって飛ぼうとしたその時、


『君達に私たちの邪魔が出来るカナ?』


「ん?」

 クルスは突然立ち止まって後方を振り向いた。

「どうしたんですか、クルスさん。行きますよ?」

 イスモはクルスが立ち止まったのを不思議に思い同じように立ち止まる。

「今何か声が聞こえてきませんでした?」

「いいえ、聞こえませんでしたけど?」

 クルスはイスモも答えに少し首を傾げたが、気のせいと考えてイスモと一緒にサン・セルジュへと戻っていった。


 クルス達が去った後の住宅街、その一軒の屋根の上に、白いローブを身に纏った金髪の少女が一人、クルス達が去っていった方向を見てニヤリと口元を歪ませていた。

『見つけた。アレが“咎め者”の従者か』

『見つけた』『見ツケタ』

 少女の後方に少女と似た姿が次々に現れた。

 否、少女そのものの少女達が現れたのだ。

『今度こそ君を永遠に私達のものにしてあげるよ。逃がしはしないよ』

 少女はそう言うと屋根から飛び降りて姿を消した。


「只今戻りました」

 クルス達はサン・セルジュに戻り、サミュに帰還の報告をしようと書斎に入ったがサミュの姿は其処にはなかった。

「マスターは一体何処に行ったのでしょう?」

 二階の各部屋を二人掛りで探したが、サミュの姿は見えない。

「二階に居ないとなると一階の厨房か」

 イスモはそう考え、厨房へと向かった。

 そして数十秒後、

「ぎゃぁぁぁぁあああああ!」

 イスモの大きな悲鳴を聞きクルスは急いで一階へと向かう。

 厨房で見えた光景にクルスは絶句する。

 なんと、血の池と化した床の上でサミュがうつ伏せて倒れていたのだ。しかも、腹部には包丁が突き刺さっていた。(なんとも、奇抜な恰好で倒れているというのは言うまでも無い)

「マスター! 誰に殺られたのですか、目を開けてください」

 クルスはサミュの元へ駆け寄りゆさゆさとサミュの体を揺さぶるが彼の反応はない。

「ま、まさか、いくらドジしてもすぐ復活するマスターがそうそう易々とくたばる訳がないだろ。一先ず呼吸を確認……あれ?」

 サミュの口元に耳を当て呼吸音を確認するイスモが呆気に取られたような顔をするので、クルスは「どうしたのですか?」と問う。

「クルスさん……マスターただ爆睡しているだけみたいですよ、むにゃむにゃ言っているのですが?」

「え?」

 クルスはサミュの体を仰向きに反転させて、彼に突き刺さっていた腹部の凶器を引き抜く。そしてサミュの頬を軽く叩いた。すると、サミュがゆっくりと目を覚ました。

「……ん。どうしたの二人して涙目で心配そうな顔してさ。何かあったの?」

 心配させている張本人であるサミュは自分に何が起こっているか分かっていない様子で、クルス達の表情をみて少しぎょっとした顔をする。

「だって、包丁が腹部に突き刺さって、床が血まみれだったら誰だって心配しますよう」

 サミュはクルスに言われ初めて下を見ると、其処には血まみれになった床、真っ赤になったシャツ、そして自分の横には血に染まった包丁が転がっていた。

 余りの悲惨な光景に思わず「なんだこれは!」と顔を真っ青にする。

「今まで気付かなかったのか? とりあえず傷口を縛っておかないとな。ガーゼと包帯を持ってくるから、その間に一体どうしてそうなったかクルスさんにちゃんと報告しておけよ?」

 イスモはそう言いながら二階へと上がる。

「なんと言いますか、クルス達が仕事から帰ってきたら美味しいものでも振舞おうと意気込んで作っていたんだけどさ、急に眠気が襲ってきてそのまま倒れるように眠ってしまったみたい。で、その時に偶然にも包丁が腹に刺さったみたいだね。申し訳ない」

 サミュはエヘヘと苦笑しながらクルスに答えた。

「私たちのためにそんなことしないでいいのですよ。マスターが居るだけで私たちは嬉しいし幸せなのですから」

「そうは言ってもこれくらいはさせて欲しいな。クルスたちは俺が雇った店員でもあるし、それに俺の大事な家族だからね。いつもありがとうっていう感謝の気持ちはさせてね?」

 サミュの感謝の一言にクルスは「はい」と涙を流しながら答える。

「感動のシーンのところ悪いけど、傷口縛るからシャツ持ち上げるぞー」

 イスモが思いっきりサミュのワイシャツをめくり、ガーゼを傷口に当て、包帯でギリギリと締め付ける。

「ぎゃっ、そんなに締め付けると痛い痛い痛い」

「我慢しろ男だろ?」

 イスモはニヤニヤしながらさらに包帯を締め付ける。

「男でも我慢できる痛みと我慢できないのがあるんだよ。もう少し緩めに縛ってくれよ」

 サミュは涙目でイスモに訴えかけるが無視をされてしまう。

「おっし、出来た。痛いのに懲りたのならドジで大怪我しないように気をつけるんだな」

 イスモの傷の手当てが終わり、サミュは今の間にクルスが用意した新しいシャツに袖を通す。

「さてマスター、一つご報告したいことがあります」

 クルスが真剣な顔でサミュに申し出る。

「ん、なんだい?」

「今日夢回収に行ったのはいいのですが、人々の悪夢に行き着く確率が遙かに高くなっているような気がするのです」

 クルスの報告にサミュは何か心当たりがあるような感じの表情をする。

「まさか、アイツらが……」

 サミュはぼそっとそう呟く。

「あと、私の気のせいかもしれませんが、ここへ帰還途中、少女と思われる声が聞こえました。「ミツケタ」という言葉が聞こえたのですが、イスモ君は聞いてないみたいなので本当に空耳かもしれませんが」

「っ!」

 サミュはクルスの話で何かを悟り、周りをキョロキョロと見回す。

「そのことが本当としたら表世界のここで話すのは少しまずいな。奴らに聞かれるかもしれない。“特別室”で話そう」

 サミュたちは急いで、特別室へと向かった。


 サン・セルジュの特別室。一階奥にある部屋であるが、此処は常人が暮らしている世界とは全く別の異空間上に存在している。なので、常人は許可なしにこの空間に入り込むことは出来ず、資格の無いものは扉を開ければサン・セルジュの裏通りに繋がってしまう。

 そんな特別室に到着したサミュ達は、それぞれ特別室中央にある椅子に座る。

「で、マスター。“特別室”で無いと話せないってほど、マズイ話って何だよ?」

 イスモがサミュに早く話すように促す。

「そうだね。今まで話すことは無いと思っていたから黙っていたけど、話さないといけない状況になってしまったんだ。でも、何処から話そうかなぁ」

 サミュはしばし考える。

「ちょっと話が長くなるけど、ヴィルジールが教会に挑む経緯から話そうか」

 そう言って、サミュは話を始めた。

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