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死ぬ気で踏み出す一歩

遥とフォルガリオンは互いに睨み合い、様子を伺っていた。


グルルル


唸り声を上げるフォルガリオンを前に、遥の頬には汗が伝う。


そして――


先に動き始めたのは遥だった。


地面を勢いよく蹴り、フォルガリオン目掛けて一気に駆けだした。


遥は思った――やる事は単純明だと。


フォルガリオンの懐まで潜り込み、体に触れ、樋川から吸収した全魔力を体内に流し込み、破壊する。


耐性も、魔力の混ざりも関係ない。


世界屈指の魔力量なら、フォルガリオンだろうが何だろうがキャパオーバーにできるはず。


コップに水を注いでも排水できるが、それが消防車レベルなら話は別だ。


それを、俺がこの右手で行えばいい――と。


遥が動き出したのを見るや否や、フォルガリオンの喉は赤く染まり始めた。


幾度も見た、炎のブレスだ。


このまま馬鹿正直に走っても、丸焼きにされて終わり――だが。


「樋川!!」


「もうっ!!」


走りながら読んだ名前に、樋川は即座に反応した。


対するフォルガリオンは口から漏れ出ていた炎を、遥目掛けて一気に放出――する瞬間。


樋川は唱えた。


「リビュオン・レイ!!」


駆ける遥の頭上を一本の光が走り、寸前でフォルガリオンの顎へ直撃した。


ダメージは、耐性故にほとんどゼロ。


それは分かっている。


だが、その一撃で僅かに顎が跳ね上がった。


ゴォォォォォ――!!


放たれた炎の奔流が、遥の頭上すれすれを通過した。


「うっ――!」


熱風だけで肌が焼けそうになる中、でも遥は止まらない。


歯を食いしばり、ただ一つの勝機の為に、全力で距離を詰める。


炎を逸らされたフォルガリオンも、即座に次の攻撃として、前足を振り上げた。


「くっ――!!」


巨大な爪が、月明りを反射する。


ドゴォォンッ!!!


振り下ろされた前足が地面を叩き割り、砕けた土と石片が爆発のように、舞い上がった。


遥は滑り込むように横へ転がり、その一撃を回避する。


だが。


ゴォアッ!!


次の瞬間には、反対側の前足も準備されていた。


「マジかっ――!!」


遥は追撃の一撃を全力で回避するべく、力一杯に前方へ跳び込んだ。


直撃はなんとか避ける事ができた――はずだったが、遅れて襲ってきた風圧のような衝撃が、空中で回避中の遥を体ごと吹き飛ばす。


「がっ、ぐっ、うわっ――!!」


地面を数度跳ね、たどり着いた先は。


「しめたっ!」


完全な死角、フォルガリオンの懐だった。


どこに行ったかと、首をふり、様子を伺うフォルガリオンを待ってやる必要はない。


「おりゃあぁぁぁ!!」


全力で跳躍し、股下からその腹に触れ、樋川の魔力を叩きこもうとした――その時だった。


その手はいつまで経っても、腹には届かない。


それどころか、次第に距離が離れていく。


空中へ――


「跳んだ!?」


フォルガリオンは飛んでいた。


信じられない脚力で、一瞬で掌を伸ばす遥を見下ろす高さまで。


そして、遥は赤い瞳と目合った。


その口はまたしても、真っ赤に染まっていく。


「赤城君!!!」


樋川の叫びは届くことは無く。


遥の視界は炎の柱で埋め尽くされていた。


「あっ……死ん――」


遥はそう、短く呟いた。

読んでいただきありがとうございました。

また来てもらえると嬉しいです。

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