第三章
名所東京駅の上空に突如として大きな宇宙船が出現したのは、三月一日の午前八時十分だった。
ムーナ星人達はいくつかのレーザー砲を順次用意し、見せしめとして、東京スカイツリーを狙っていた。
無論、同時に日本各地の自衛隊基地にも、攻撃を行おうとしていた。
日本へ派遣された戦艦の総数は二十機。
そのうち、首都東京には六機が派遣されていた。
「思っていたよりも広い都市だな」
日本方面担当の総艦長が、壮観な電子の海を映す画面を見ながら言う。
「ええ、ですが恐るに足りませんよ。この星の事前調査では、私たち以上の科学技術力の計測は確認できませんでした。計画通りに進めればいいだけです」
総参謀が、データを解析しながら答え、各方面に的確な指示を飛ばしていく。
レーザー砲が着実に破壊エネルギーを溜め、標準を定め始める。
日本全国に散らばった艦隊が、着実に準備を整え、地球との圧倒的な力の差を見せつけようとしていた。
だが、総艦長には一つ、違和感があった。
「なぁ、我が総参謀よ」
「ん? どうしましたか」
「気のせいかもしれんが……当初の想定よりも、何だか人類の反応が薄くはないか?」
「……たしかに逃げ出している人類は本当にごくわずかですね。よく見ると、普通に通り過ぎていく者たちもおります」
「ふん。こちらとの戦力差を知らないとは、哀れだな。無知は罪なものよ」
そうこう言っているうちにエネルギーは満タンとなった。
攻撃箇所も定まり、今か今かと隊員たちは耳を澄ませていた。
「……総艦長。すべて完了しました。いつでもいけます」
「よし」
総艦長が全隊員に指示を伝える。
「今より、日本においての人類殲滅作戦を命じる! 総員、撃て!」
威力を装填された砲台から、精密な計測に基づいた、寸分の狂いもないレーザー砲が、一直線に凄まじい速さで放たれた。
無慈悲な破壊光線が、日本中に降り注がれた。
……しかし、破壊は起きなかった。それどころか、爆発すら起きなかった。
「神盾魔法!」
全国に放たれたレーザーは、突然現れた巨大な盾により、空の上へと跳ね返っていった。
「は?」
総艦長と総参謀の声が重なる。
何だ。今、何が起こった?
レーザーが防がれた?
そのあってはならない光景に、全艦隊の思考が驚愕と混乱で埋め尽くされる。
だが、それが致命的な隙になった。
「大火炎魔法!」
「魔弾滅魔法!」
「森怒魔法!」
混沌の直後、地上からいくつもの凶悪な攻撃が展開された。
町一つ破壊できるほど大きい火の玉が艦隊に向けて放出され、紫色の球体が目にも止まらぬ速さで突き抜け、道路から飛び出た大樹の根が昇り、それぞれが戦艦に勢いよく命中した。
(こんなものは知らない―――)
総艦長はそれら攻撃を目にしたまま、最後に残ったありったけの思考力で、自らの無知を呪った。
総艦長と総参謀を含めた全隊員は、何が原因かも分からぬまま、意識を失った。
そして、再び浮上することはなかった。
この日、地球に派遣された全ての先行隊は、人類の持つ「魔法」という未知の能力によって全滅した。




