第二章
ほんの少し前のことである。
ヤーのいる星間国家ムーナ星では、他の銀河への侵攻が進もうとしていた。
富、栄誉、覇権、技術…どれをとっても宇宙一だと自負できたムーナ星は、新しい土地となる星を求めていた。
そんなムーナ星が目を付けたのが、天の川銀河だった。
太陽をはじめとする膨大な星々は、彼らにとっては、これから始まる全銀河への征服、その第一歩として、ちょうど良い踏み台となる銀河だった。
ムーナ星は早速、特殊な部隊を編成した。
星間艦隊二百機を配備し、人数にして、四百万を超える大軍を動かし、天の川銀河征服の特殊部隊を作り上げた。
征服の目標の一つとして掲げたのが、「太陽系の支配」である。
どうにも、太陽系には一定の知能を持った文明が存在していることが、事前の探査機調査で明らかとなっていたからだ。
ただし、その文明は、遠目ではあるが確認してみたところ、お世辞にも生活の水準が高いとは言えなかった。
その文明は、地球人という民だった。
核エネルギーの一部を利用したり、様々な学問を発展させたり、宇宙船の打ち上げにも成功している。
だが、それがどうしたというのか。
ムーナ星では、核融合による無限の再利用によって、限りなくゼロに近いエネルギーを使えるし、宇宙船なんて毎日のように数千台は飛ばせている。
学問の歴史は万年に渡り、星と星をつなぐことのできる、次元転送を用いた移動技術にも長けている。
彼らの持つ爆弾は、通常サイズでも、星を一個は破壊することができる。
今回の作戦では侵略が目的のため、使う機会はないだろうが、それでも、過剰なほど武器は揃っていた。
つまり、文明のレベルの差は明確。
地球の文明レベルを1とするならば、ムーナ星の文明レベルは99に匹敵する。
「負けなどあり得ない」「勝って当然」そんな意見が、ムーナ星宇宙軍上層部の総意だった。
地球人くらいの敵ならば、秘密兵器を使うことも絶対にないだろう。
「諸君! 我々はこれより偉大なる一歩をこの宇宙に刻む!」
「太陽系を! 天の川銀河を! すべてを我らの王へ捧げるのだ!」
出発前、本作戦の大隊長が、兵士を鼓舞する演説を披露した。
「我々はこの宇宙一の星間文明国家である! 敗北など到底あり得ないことだ!」
「その始まりとして、まずは、地球人を蹂躙する!! 我々の圧倒的な文明的優位性を、かの星に見せつけてやろうではないか!」
割れんばかりの雄叫びが、その一声に答えた。
数十万もの艦隊と、数百億を超える兵力。
数えきれないほどの年月を経た、偉大なる歴史。
そのほんの一部を、地球人を良い実験台として使用する。
それが、ムーナ星の策謀であった。
ただ一つ、その策謀に誤りがあったとするならば、彼らは、驕るべきではなかったということだろう。
かくして、彼らは、祖星の誇りを胸に、出発した。




