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第十章


ムーナ星人たちの暮らす銀河系に地球人が侵入を果たしたのは、2020年3月1日の午前五時ちょうどのことだった。


突如として、星々の煌めく銀河には、全長3500キロ以上に渡る楕円形の黒穴が開かれ、そこから数百万の地球人を乗せた大艦隊が現れた。


まるで、地獄の門が闇より顕現したようだった。


艦は古の昭和メカアニメのような典型的な形をとっており、全表装を厚い金属で囲い、核融合によって蠢いていた。


どこか現実離れした雰囲気を醸し出す、まさに戦艦そのものと言える機体だった。


艦全体には、転用可能となった魔法によるコーティングが施されており、それを艦一隻に必ず一人は乗っている魔法係が維持していた。


ムーナ星人たちは予想外の侵入に最初こそひどく狼狽えたが、なんとか部隊を派遣し、地球人を倒さんと動き出した。討伐に向かった艦隊の数だけでは、ムーナ星人の方が優勢であることは、疑いようのないことだった。


しかし地球人の戦い方は、その状況を覆すのに十分な力を発揮した。


ムーナ星人たちの艦隊が、地球艦隊に一斉にレーザー砲を発射する。それは数万の流れ星が、宇宙の彼方から奇跡的に集合したかのようだった。


それでも、地球艦隊に届くことはない。


地球艦隊が展開したのは、対宇宙戦艦用の特殊な防御壁(バリア)だったからだ。


魔法による全方位対応のこの防御壁は、大きな揺れと引き換えに、全艦隊の安全を保障する、絶対防衛の技術であり、宇宙の科学と地球の魔法による、大発明であった。


すべてのレーザー砲は防御壁により阻まれ、やがて一発も放たれなくなると、今度は地球艦隊による一方的な反撃が始まった。


「……攻撃開始ぃ!」


地球艦隊は魔方陣とレーザー砲を組み合わせた「魔導光砲(まどうこうほう)」を搭載していた。


地球艦隊は、それらをさっきのお返しばかりにいっぺんに放った。


溢れんばかりの光が、宇宙を一面の紫色に照らし、無情な流れ星が、ムーナ星人の艦隊に次々と襲い掛かった。


目を疑うような、輝く紫線の群れだった。


数えきれないほどの爆発音が響き渡り、艦隊はあっという間に宇宙の屑に生まれ変わった。


攻撃した地球人側が困惑を覚えるほどの、歴史的な大勝だった。


地球艦隊はその後も侵攻の手を緩めず、有史以来最大の版図を更新していった。


地球艦隊による侵略は、わずか2年足らずで、ムーナ星人たちの生活圏を、七割以上支配するに至った。


ムーナ星人と地球人の立場は完全に逆転した。


ムーナ星人の軍勢は悉く壊滅し、ついに計画は破談となった。


地球人の魔法による、想定以上の被害と戦力差。


それは、ムーナ星人たちにとって、まさに最悪の結末となってしまったのである。


これは、ムーナ星人たちの宇宙船から調べ上げた科学力と、地球人の叡智、捕虜からの尋問による情報を基にして作り上げた、人類初の宇宙船による、大規模な侵攻だった。


ムーナ星人という新たなる脅威により、地球人は共通敵を持つ仲間として、かつてない協力と発展を遂げ、圧倒的な多国籍軍と大艦隊を形成した。


その刃は、ついに敵の懐にまで及ぼうとしていた。


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