厄災級――
厄災級――昔の魔法少女の先輩が討伐した存在。
巨大な姿の“それ”が、軋むような音を震わせ、魔法の術式の中から現れた。
あれは、封印の魔法だったのだろうか。
高濃度の魔力の影響か、空気が粘つくように重い。
『白金――着まで、――10分!』
オペレーターからの報告が途切れ途切れに聞こえる。
10分、被害を逸らし続ける。
私たちが……?
出来るのだろうか。
いや――やらないといけない。
砂地に降り立ち、攻撃術式を展開する。
――展開完了と同時に即座に放つ。
無駄でもいい、効果がなくてもいい。
少しでも注意を引ければ、それでいい。
なぜ、魔法使いがここを崩壊させたのかは分からない。
でも、それのおかげで周りを気にしなくても大丈夫になっていた。
民間人は――もう“居ない”から。
――術式を展開して、放つ。
それを永遠と繰り返す。
澄玲先輩が言っていた、
被害を出さないように、建物とか人に当たらないように魔法を使う。
そんなことを考えることもなくただ、動かさないように注意を引き続ける。
私はまだ、運よく生きていた。
集まった魔法少女が今どれくらい残っているのか。
あと、どれくらい耐えればいいのか。
それすらも分からない。
足は震えている。すぐ近くに居た名前も知らない魔法少女は、
だいぶ前から倒れて動かない。
景色の色は消え、音は消えていた。
ただ、魔法を放つ。
守るために。
ふと、頭上を二つの影が、淡い魔力を残して通り過ぎる。
その残滓が、焦げた空気の中で月光のように揺らめく。
「あいつら、封印が解けるなら、解けるって言えばいいものを……」
「封理派のことです。この程度問題ではないのでしょう。」
還暦を迎えたばかりの様な女性と青年。
青年の方は知っている――強魔級の時、助けてくれた魔法使い、時雨だ。
「時雨さん……」
思わず声を掛けようとする。
「ん?なんだい小娘。」
低く、乾いた声が爆ぜる魔力の中でかき消えた。
「うちの時雨に何か用かい?」
女性が鋭い眼光をこちらに向ける。
「いつから貴女の物になったんですか……」
時雨さんが苦笑を浮かべ、軽く言葉を紡ぐ。
「そんなことは、どうでもいいんだよ。
厄災級ねぇ……、試させて貰おうか。」
女性の周りに魔法術式が幾重にも展開される。
それは、円ではなく歪な多角形を重ね合わせていた。
「幻理さん、あなたは研究が本分でしょうに……実戦は苦手だったのでは?
まぁ、サポートは、お願いします。」
「君にもサポートを頼むよ、周りの子達と一緒にね。」
時雨さんが、そうつぶやくと、綺麗な円形の小さな魔法術式が幾重にも展開されていく。
どちらも、淡い光を放つ魔法術式なのに。
私には、”朝日のように輝いて”見えた。




