日常の終わり
その日はやけに穏やかな朝を迎えた。
朝のニュースに魔物の被害が放映されることも。
知り合いの魔法少女が殉職した話なども――一つもなかった。
いつもの日常
平和な日常
いつまでも続けばいいと、そう思っていた。
夜になり、闇の帳が降りる頃
魔災庁から緊急のアナウンスが響く。
『高濃度魔力反応を確認!
市民の皆様は直ちに避難を!』
ベッドから飛び起き、身支度を手早く済ませる。
インカムを耳にかけ、電源を入れる。
すでに情報は流されていた。
――いや、混線しすぎて必要な情報すら聞き取れない。
すでに状況は、動いている。
『場所は埼玉!首都圏外郭放水路!等級――厄災!』
複数のオペレーターがそう叫んでいる情報が、耳へと流れ込む。
近い、すぐに向かわなければ。
助けを求めている人たちがいる。
守らないと。
玄関を飛び出し、不完全な飛行術式を展開
屋根から屋根へ、跳ねるように移動する。
風が耳を打ち、耳鳴りのように響く。
少しでも早く、助けを求める人たちの元へ。
暗がりの中、周囲の魔法少女たちも同じように、
屋根を――空を――飛ぶ。
『首都圏外郭放水路、崩落!
被害拡大!至急応援――――』
魔力濃度が上がり、通信が途絶えがちになる。
初動で出ている私たちがすべき行動は、ただ一つ。
――被害の軽減
その命を賭けてでも。
今向かう魔法少女たちは、何割生き残るだろうか――
自分が含まれていることも、含めて、
”他人事のように感じていた”。
首都圏外郭――思考すら煩わしい。
地下神殿の付近で一気に跳躍し――絶句する。
崩落の中心。
そこから外に向け、砂城のように町が崩れていく。
すり鉢状になる最奥に、不定形の粘液。
それを囲むように、異形の人型が空へと上がる。
『場所は整えた――あとは彼女らの出番だ――』
魔力が震え、音を発する。
集団が流れるように、恐ろしく静かに飛翔する。
――見たことがある。
魔法使いの――飛行術式。
魔法使いが、関係している。
それを認識するよりも先にすり鉢の底を――見た。
――見てしまった。
解読不明の術式が折り畳まれ、幾重にも重なる。
ゆっくりと逆再生のように、解かれていく。
――あれは、止めなければならない
他の魔法少女も同じようなことを思ったのであろう。
距離を詰める者。
汎用攻撃術式を撃ち込む者。
恐怖に耐えきれず、背を向ける者。
さまざまな反応が飛び交う中、崩壊は止まらず――加速する――
辺りが静かになり――
魔力の圧が一気に強くなる。
刹那――”厄災”が現れる。




