戦う意思
魔法の呪文とは、同じ詠唱であろうとも、似て非なる物である。
敵の攻撃に対して、迎え撃つのは五つの花。
全てを叩く必要はない。
「へぇ……積層型、師匠と同じ構築。
――いや、攻撃転用ですか。実に面白い。」
花火のように、魔法がぶつかり合う。
いくつかは相殺され、残りは”花”に防がれる。
「なるほど、なるほど。確かに無駄のある構造。
常時展開しているのなら、確かにこちらの方が早い。いい発想ですね。」
凝子さんの分析は続く。出てくる結果は断片的で、支離滅裂的。
「でも、術式構成の詰めが甘いですねぇ。数発の被弾でもう崩れている。
いや、それすらも想定済み?……あぁ、周辺の花弁はそういうことですか。」
崩れた花弁は、切り離し、次の花弁と入れ替わる。
別の”攻撃術式”として生まれ変わる。
「面白いでしょう?私が崩れない限り、次を創る。
……まだ改良点が、多すぎますが。」
断続的に花から魔法が放たれる。
――性質を変え着弾と同時に爆ぜるように。
凝子さんの障壁との衝突、地面が少し抉れる程度の爆破。
「良いですね!これはこれは、実に鬱陶しい!
分析がほとんど意味をなさない!理解したところで次が来る。実に良い!」
地面は抉れ、障壁を揺らすが、本人は小雨の中にいるかのように平然としている。
「ですが……ただ耐えるのはつまらない。魔法の撃ち合いだけが、
魔法使いの戦いではないことも知っているでしょう。」
≪加圧 成形 追従≫
凝子さんの後方、地面に鈍い音と共に六か所の陥没が現れる。
――浮遊し現れるは、3対の剣。
「これ、結構制御が難しいんですよ?
何せ、6本全部を個別に制御しなきゃいけないんですから。」
重力に引かれるように加速しながら詰め寄られる。
片手を振るう度に、3本の剣がなぞるように追従している。
「六刀流とか……漫画ですか!?」
障壁が火花を散らしながら剣を逸らすが、耐えきれずに切り裂かれていく。
「漫画は良いですよ。新しい発想が次々と出てきますからね。」
剣と杖、交差し鈍い音を立てる。
攻撃術式を至近距離で展開、”暴発”させる。
魔力の奔流と煙が広がる。
「おっと。今のは危ないですね。自滅も気にしないとは……」
煙が晴れ、片腕を無くした凝子さんと対峙する。
分かっていた事ではあるけど、胃酸が喉元まで上がる。
「こうでもしないと、私は、勝つことすらできない。」
痺れ、力が上手く入らない腕で、杖を振るう。
「うぅむ。もう少し自信持ってもいいと思いますよ?
特に今の判断は、良いセンスですよ。魔法が使えるのならば
多少自傷しても、治せばいいだけですからね。」
あぁ、やっぱり、殺意を持って戦うのは
――苦手だ。




