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原石の軌跡――新しき力と古の知恵  作者: 永火
第3章 魔法大戦
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交渉

『その前に少し、質問をよろしいですか。』


式神の先から、震えるような声が聞こえる。


『……争いを望まないのならば、なぜ町を、ともに居た民をなぜ殺したんです。

春日部の、あの辺りには学校もあったんですよ!なぜ!そこまで大規模な破壊を

決行したんですか!』


悲痛な声が響き渡る。魔法使いでも、魔法少女でもない。

ただ、魔力を少し持っていて、術師補佐をしているだけの一般人の声が。


「……あぁ、そうだね。確かに人が居ただろうさ。」


幻理さんが、穏やかな声で返答する。

弁明ですらなく、事実だけを述べるために言葉を紡ぐ。


「家庭があっただろう。未来もあっただろう。――ただそれだけだろう?」


『それだけって……!魔法使いも”守る側”の存在じゃないんですか!」


式神が、憤るように文様を脈打たせる。

向こう側の感情がにじみ出るように明滅する。

怒りではなく、理解できないものに対する拒絶と、僅かな恐怖。


「守るって便利な言葉ですよねぇ。」


沈黙していた凝子さんが、言葉を動かす。


「守ることは正義。えぇ、実に素晴らしい。

守るのには、犠牲が出ても仕方がない。――ただし、その“犠牲”が自分じゃない限りね。」


三善さんの呼吸が止まった。

返す言葉が無く、迷子になった思考の沈黙。


幻理さんが式神を指先で弾く。


「あんたの言いたいことは分かるさ。」


淡々と、言葉が続く。


「町をわざわざ壊す必要は無かった。

民間人を巻き込まないように、倒せたはず。

”その努力すら放棄したのは、悪意だ”――とね。」


『……違うのか!』


「違うさ。」


否定は短く、余計に残酷だった。


「”出来たはず”ってのは、そこに居なかった奴が言うのさ。」


『……ッ』


向こうの誰かが、机を叩いた音が遠くで鈍く響く。


時雨さんが、言葉を繋げる。


「厄災級……あれがまともに起きたら春日部程度で収まると思っていたのか。

魔法少女が人を、町の崩壊を気にする必要が無くなった。

それが無ければもっと――被害はデカかった。」


「お前たちは、”町一つ壊した”それしか見ていない。

こっちからしたら、”たった一つの町で収めた”そう考えている。」


理解できる。――理解できてしまった。

でも私の中の”なにか”が抜け落ちていったような、そんな気がした。


『たった一つ?されど一つの町です。それすらも守れないというのですか。』


怒りがある。それでも、それすらも超えて冷静な言葉が返ってくる。


「守ったさ。ただし、あの時ではなく、今の人間を。

厄災があのまま活動を始めていたらどうなる?春日部一つでは足りないだろうよ。

埼玉……いや、地図の書き換えが必要になっていただろうねぇ。」


少しのため息を吐き、幻理さんが続ける。


「町一つで今という未来を守ったのさ。魔法使い……封理派が町を崩壊させたことに

違いはないが、結果として守っただろう?魔災庁もよくやっているじゃないか。」


「まぁ、こんな問答はどうでもいいんだよ。意見が平行線なら意味がない。

で?どこで戦うんだい?」


争いを望んでない。――その言葉が急に、軽くなった。


『……は?争いは望んでいないと、先ほど……』


「話し合いでは結果が出ないだろう?なら戦うしかないだろうよ。

どうせやるなら、人怪我無い方が良い。

あぁ、ちょうど開けた場所があるじゃないか――春日部跡地とかね。」


春日部跡地

厄災級との戦場跡、魔力濃度が通常より高く魔物の出現頻度が高い。

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