式神
日が長くなり、外へ出るのも一苦労な暑さとなっている頃。
時雨さんと幻理さんに呼ばれ、古びた図書館の最奥へと向かう。
見慣れた魔力が流れている。そこに見慣れない魔力を視た気がした。
薄く弱い魔力。魔法少女でも魔法使いの魔力でもない不思議な光景。
「幻理さん、時雨さんお久しぶりです。」
「あぁ、久しぶり。ふむ、成長したな。」
時雨さんが見通すようにこちらを覗く。
身長はもう伸びていない。たぶん、魔法使いとしての成長を見られている。
「だいぶ魔力が馴染んでいるみたいだね。もう魔法少女とは別物だねぇ。」
茶化すように幻理さんもこちらを覗く。二人の目の前には前衛的なオブジェがそびえ立っている。
「あの……その、盆……栽?みたいな塊って何ですか?」
「ん?あぁ、何ってただのジェンガだよ。」
ジェンガが途中で枝分かれしている。どう見ても安定構造じゃない。
「面白いだろう?バランスさえ取れれば、多少無理な形にも出来る。」
……物理法則無視してませんかね。
「よく見てみろ。魔力で多少補強しているだけだ。まぁ、小突けばすぐに崩れるだろうがな。」
時雨さんがジェンガを小突き、積み上げたものが軽い音を立てながら、崩れる。
「まぁ、ジェンガの事はどうでもいい。詩織、今日呼んだ理由はね、
これを見といてほしいからだよ。」
幻理さんが、薄く魔力を纏った和紙のような物を見せてくれる。
人型に形作られたそれは、何かから逃れようとするように、微かに震えている。
「これは、陰陽寮の連中が使っている式神。近くを飛んでいたから捕まえといたんだよ。」
「これ単体では脅威にすらならないし、精々位置が知られる程度しかできないんだよ。」
幻理さんが弄ぶように式神をくるくる回す。
もがく様に、掌から式神が飛び立とうとするたびに引き戻されている。
「位置が知られるって……ここの存在が知られて大丈夫なんですか?」
「幻影を見ているから、今頃術師は船酔いでもしているんじゃないかねぇ。」
濃い魔力が、廊下の空気を押し曲げてくる。凝子さんの魔力だ。
扉の蝶番が悲鳴を立てながら開け放たれる。
「ここは図書館だよ。……一応、静かにしようか。出来ないなら帰りな、バカ弟子。」
「いやいや、師匠が呼んだんじゃないですか。……帰りませんよ?
ん?それって式神ですか?また珍しい物を作りましたね。」
「まぁ、現状と一緒に説明してあげるから、急かすんじゃないよ。」
幻理さんが、皆に見えるように式神を宙に固定する。
震えが止まり、文様が怪しく光る。




