強さ
「それは……出来ません。魔災庁は、あれでも市民を魔物から守るために存在しています。
私怨で壊すわけには、これだけは譲れません。」
『そうかい。まぁ、向こうはこちらを滅ぼそうと動くだろうよ。
魔災庁の上層部からしたら、魔法使いは目の上のたん瘤だからねぇ。』
『近いうちに、大規模な掃討作戦が行われるそうだ。銀等級から上の魔法少女は、
ほとんど出てくるはずだ。白金まで出てくるってんだから笑えるな。』
幻理さんと時雨さんが、楽しそうに話す。まるで次の日の天気でも話すように。
「白金……そんなに人数は居ないはず……確か……」
『5人。白金等級の現存数だよ。魔法少女の中じゃ今はこれが最高戦力だろう?
まぁ、さすがに全員を当てることは出来ないみたいだけどねぇ。』
「なんでそんなに落ち着いているんですか……白金等級なんて、災害級の魔物を、
しかも複数。それを単独で討伐するような――アニメの魔法少女みたいな存在なんですよ!」
通話越しに向こうが静かになる。
『詩織、その程度なら俺も凝子も、幻理も出来るし、お前も出来る。』
『面白いねぇ。あぁ――面白い。詩織はまだ、自分を無力だと思っているのかい?
詩織、お前はすでに魔法少女の等級なら、神銀等級を持っていても許される強さだよ。』
神銀……私が?まだ、防御も攻撃もどれをとっても中途半端なのに?
『訳が分からないって顔、しているだろうねぇ。この答えは単純だよ。
今の魔法少女は、どこまで行っても”魔法”へは至れないのさ。未だ模倣品を弄るだけの未熟者さね。』
『詩織は、俺の固有魔法を模倣したんだろう?それが読み通りの効果が出せたかは知らんが。
固有魔法を正しく運用した。これは魔法使いだ。』
まだ一度も模倣したことも、使ったことも言っていないのに何で知っているんだろうか。
「なんで、固有魔法を模倣したって……言い切れるんですか?」
『なんでって――”それ”は”俺”だ。なら、俺以外が”俺”を使ったのも分かるだろうよ』
小さくため息が聞こえる。
『そこまで理解できる奴は、時雨、あんた位だよ。ふつうは気にも留めないさ。
――いや、うちのバカ弟子も気が付きそうだね。』
『どちらにせよ、魔災庁はこちらと事を構える気があるってことだ。
そのうち宣戦布告でもされるだろうさ――いや討伐宣言かな?』
『あとは……陰陽寮の連中がどう出るか……』
陰陽寮?昔の陰陽師が所属していた組織だったかな?
「陰陽寮って今もあるんですか?」
『ある……というより名を変え、姿を変えて続いているんだけどね。
ほとんどはただの占い師だけど、魔法使いじゃない魔力持ちが所属しているんだよ。』
少し考えるような沈黙が流れる。
『強くはない。ただ、あそこは式神をうまく使う。索敵に陣地構成、人払いに結界など
多種多様に使っている。』
幻理さんの少し、面倒くさそうな声が通話越しに聞こえた。
陰陽寮
古来より固有魔法を持たない魔力持ちが、所属している機関。
名を、姿を変え現代まで脈々と受け継いできた技術が、今もそこに在る。




