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原石の軌跡――新しき力と古の知恵  作者: 永火
第3章 魔法大戦
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先に生きていた人 その3

雷が民家を崩し、魔法弾がアスファルトを削る。

見える。けれども当たらない。

市街地への流れ弾には、気を付けないといけない。

すでに魔物のとの戦闘で傷ついているこの街を、さらに傷つけないように。


「なんで、平和の守護者様が――町を平気で壊しているんですか!」


「そんなの、魔法使い(テロリスト)を倒すためっていう大義名分があるからね!」

斬撃と槍の砲撃が隙間なく繰り出される。拾遺の被害も気にしないで、

ただ勝つためだけに力が振るわれる。


民家の上を跳ぶように後退し、攻撃術式の展開を急ぐ。

先輩は、民家の気にも留めずに直進し、攻撃を放つ。


戦場は市街地から、オフィスビルの集まるオフィス街へと移り始めている。

すでに、魔物との戦闘で瓦礫が散乱し人影もない。


自分の周囲へ、花弁を追従させる。防げなくとも反応は出来る。

剣が花弁を破り、首筋ぎりぎりを掠め、槍を射線ごと捻じ曲げる。


淡々と、攻撃を展開しつつ後退。


ふと、瓦礫に足がとられる。


一瞬の隙、魔法の加速とは違う思考の加速。

紫電を纏い距離を詰めてくる先輩が、視界の端へと流れる。

身体を捻るように横へと転がる。


ほんの瞬きにすら至らない時間、その場所へ先輩の踵落としが、アスファルトへ罅を作る。

立ち上がる間もなく、先輩が容赦なくストンピングを繰り出す。


口の中に鉄の味がし始める。


身体への負荷がそろそろ限界に近いかもしれない。

でも――まだ、勝てていない。

まだ耐えられる。ここで、逃げてはいけない。

そんな気がする。


体制を立て直し、先輩の方を見る。

肩で息をし、体に纏う紫電も途切れがちだ。


「そろそろ、限界が近そうですね。」


「詩織も、限界に見えるけど?」


一瞬の沈黙。


決めるならここしかない。

瞬きの瞬間、魔力を噴出させ一気に距離を詰める。


此処で前進を選ぶ。避けない、ただ攻撃を当てるために。


爆発的な加速。撫でるように攻撃術式を当てようと展開させる。


鋭い眼光。紫電を纏いし剣が、斬撃を飛ばす。


すり抜けるように、前へ、前へ飛ぶ。


後ろを振り返ると、魔力が切れ生身となった先輩がこちらを見ている。


斬撃は、雑居ビルへと当たり、抉り、倒壊を誘発させる。


「詩織。壊すことを選ばなかったんでしょ。

なら、生きて、守り続けなさい。」


止めて。止めてください。

そんな声が喉の奥で、潰れる。


「それを、正義と思うのならば。」


そんな声で――。


「生きて、証明しなさい。」


生きるのを、諦めないで。


祈りも、虚しく。

雑居ビルは、全てを包み込む。



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