幕間 魔法 その2
「魔法少女の言う”固有魔法”。
これは、混ざった魔力由来の能力みたいなものだよ。」
混ざった魔力。
「魔物の魔力と少女が混ざったのが魔法少女……」
「そう。だから魔法少女が“魔法使い”になれるのかどうか。
そこが、まだ分かっていない」
妙に重い内容を、何時ものように幻理さんは言う。
「混ざりあった魔力。これが”自分の魔力”となるのか。
借り物は借り物のままなのか。」
「それって……」
喉が少し、乾いていく。
「私は、どっちかわからないってことですか。」
「そうだね。」
即答された。
「魔法使いとしての固有魔法
これを詩織が、魔法少女が持っているのか。
これから”生える”のか。」
可能性を述べる口調は、淡々としている。
「魔法少女はまだ“新参”だ。活動としてはおよそ50年、
個々人は概ね二十代で”あがり”を迎える。サンプルが足りないんだよ。」
若い個体?
「50年って」
思わず口を挟む。
「そんなに短いんですか?」
幻理さんは一瞬だけ、きょとんとした顔をして――
すぐに、しまった、という表情になる。
「あぁ、確かに只人の感覚からすれば長いか……」
誤魔化すように、はぐらかす様に頭を軽く掻いた。
「魔法少女の歴史は、人間から見たら長いだろう。
個人の活動が短くとも、”魔法少女”は50年活動している。」
「でも、魔法使いからしたら一瞬の出来事に近い。」
「それは古参の魔法使いの考え方だろう。」
時雨さんが茶化す様に口を挟む。
「古参って、幻理さんって何歳なんですか……?」
幻理さんは一瞬言葉を止めた。考えるというより、答えを選んでいるようだった。
「……覚えていない。
いや、正確には、覚える意味がなくなった、かな。」
少しだけ首を傾げる。
「年を数えるのは、失うものが見えている間だけだ。
どう思う、時雨。」
「こっちに振るなよ。」
時雨さんは肩をすくめる。
「俺はまだ二百年も生きちゃいない。
古参ぶるには、早すぎるだろ。」
「二百歳……」
目の前にいる、青年の様な師匠が、急に遠くに感じた。
声も、仕草も、いつも通りなのに。
同じ時間を生きてきた存在ではない、と今さら理解した。
「そんな顔するな。」
時雨さんは、どこか居心地が悪そうに視線を逸らす。
「別に、長生きしたくてしてるわけじゃない。
気が付いたら、ここに居ただけだ。」
幻理さんが、手をぱんと叩く。
「話がそれたね。年齢の話は、どうでもいい。」
一拍置いてから、淡々と続ける。
「固有魔法を習得するのか、しないのか。
それすら叶わずに、死に果てるのか。
未来のことは、誰にもわからない。」
「だから俺たちは魔法少女、詩織に魔法を教える。
この先に、未来へつながるかもしれないからだ。」




