幕間 魔法 その1
「じゃぁ、詩織。魔法について教えようか。」
唐突に始まった講義、教えてくれるのは幻理さん。
なぜこうなったのか、少し経緯を思い出そう。
*************************************
「魔法の原理?
いや、すまんな、俺よりも幻理の方が詳しいだろう。」
時雨さんは肩をすくめ、あっさりと責任を投げた。
その様子を見た幻理さんは、小さくため息をつく。
「詳しいというより、説明役を良く押し付けられているだけさ。
あんたら師弟にね。」
「そりゃぁ、すまんな、どうも俺らは壊す方が向いているらしい。」
さっきより深いため息をつき、幻理さんの視線がこちらへと向く。
雑談は、そこで終わりだった。
「さて、詩織。」
名前を呼ばれた、それだけで背筋が伸びる。
学校の授業とは違う。戦い生き残るための説明。
そう、私の直感が告げていた。
「まず、さっき詩織は、”魔法”を使っていない。
いや、正確には”魔法と定義”していない。」
「定義していない……って、誰が決めてるんですか?」
魔法を決めている存在が、いるのだろうか。
それとも組織的な何かが。
「決めるってのは少し、語弊があるね。
いまの日本で使われている魔法術式。
あれの原型をつくったのは、私だよ。」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
原型。
つくった。
私だ。
「……え?」
間抜けな声が漏れた。
時雨さんは特に驚いた様子もなく、壁にもたれて腕を組んだ。
「何をいまさら驚いている。
今の大体の魔法使いの魔法術式も、魔法少女の魔法術式も
大本をたどれば、幻理にたどり着くぞ。」
「まぁ、もうほとんど原型なんて、残っていないだろうけどね。
特に、魔法少女の方は模倣して改良しようとしているみたいだし。」
幻理さんは一度、言葉を選ぶように視線を泳がせてから、静かに続けた。
「だからね、詩織。
さっき君がやったのは、私が作った”魔法術式”じゃない。
魔法術式よりもっと古い、”呪い”に近いもの。」
「まじない……?」
聞き返した声は、自分でも驚くほど小さかった。
「”魔法”を再現しようとした、最初の流れ。
それが呪いだよ。」
魔法を再現……?
「魔法術式と魔法って同じじゃ、ないんですね」
幻理さんが、少し驚いたように口を開く
「あぁ、そうか。
そうか……魔法少女にはこれが無かったか。」
独り言のように呟き、こちらを見る。
「本来、”魔法”とは、魔法使いの固有魔法の事を指すんだよ。
魔法少女は持っていない、本当の魔法。」
本当の魔法……
「でも、魔法少女も特別な魔法を使う……」
「それじゃないんだ、魔法少女の”それ”は別物なんだよ。
私の幻影の様に、時雨の時間操作の様に。
他人が使えない”魔法”、これが固有魔法なんだよ。」
「魔法術式は、魔力を使って世界を騙し、現象を呼び起こしている。
魔力のある者が教われば、誰でも再現できる。
それこそが、私の作った”魔法術式”だよ。」




