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模擬死闘 その2

躱す。

躱す。

躱しきれなくて殺される。


正面から。

横から。

上から。

そして、死角から。


あらゆる方向から、攻撃が来る。


魔法だけじゃない。

家屋が、詠唱が、視線すら罠だった。

回避した先に、次の死因がある。


一つ避けても、次が来る。

二つ避けても、次がすでに”そこに在る”。


窓の反射が、魔法のように見えた。


見てからでは遅い。

理解した時には、もう詰んでる。


防御を張れば、回り込まれて殺される。

回避をすれば、その先にすでに魔法が“居る”。

反撃しようとするたびに、魔法が上書きされる。


――選択肢が、潰されていく。


息を整える間もなく、動き続ける。

肺が焼けるように痛い。

それでも、体は止まらない。


幻が、恐怖が、優しさを見せずに襲ってくる。


視界が、暗転する。


「ただただ、躱すんじゃない。

魔法を、理を感じ取れ。」


時雨さんは、一度だけ攻撃の手を止めた。


「”理”はすでに、見ているんだ。

あとはそれを、戦いの最中に“視る”だけだ。」


それだけ言い放ち、再び攻撃が迫る。


今までと違い、時雨さんの魔法が、

やけにゆっくりと組まれていく。


空間が、揺らぐ。

世界が、その魔法を”認めた”。


――そこへ、考えるより先に魔力を流し込む。


収まり始めていた揺らぎが、再び揺れる。


世界が、躊躇した。


時雨さんの魔法が、”拒絶”される。


「そうだ、それで良い。」


その言葉を認識した瞬間、

横からの衝撃と共に、視界が暗転した。


「――だが、甘いな」


視界が晴れる。


それと同時に、自分の周りへ魔力を”漏らす”。

体が、勝手に動く。止める気はない。


たぶん、これが正解だ。


迫る魔法が、希釈された。

”殺す”魔法が、”痛い”魔法へと、変わった。


何度も見たあの光景が、目の前で起こった。


「それも、正解だ。」

時雨さんがそうつぶやきながら、術式を多数展開させる。


「だが、何処まで持つかな?

魔力をばら撒くのは、魔物でもできたぞ?」


体が重い。魔力が想像以上に減っていってる。

此処で止めたら、また死ぬ。


やっとつかめたのに。

ようやく、世界が”視えた”のに。


呼吸が、浅くなる。足の力が入らなくなっていく。

視界が、また暗転する。


「次か、その次で”こちら”に来れるな。」


何処か遠くで、聞こえた。

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