プロローグ
思い付きで書き始めた小説です。
つたないところがありますが、どうぞごゆるりと
夢を見た。
小さな頃の夢――
町に現れた魔物を、華麗に倒す魔法少女の夢を。
それは、魔法少女になりたいという私の夢でもあった。
【魔法少女】
およそ50年前、思春期の少女たちに魔力が発現するようになってから、夢は現実のものとなった。
だが、それと同時に魔物もまた、この世界に姿を現すようになった。
魔法少女は、なりたくてなれるものではない。
それでも、私は魔法少女になれた――成れてしまった。
私の夢が叶った瞬間であると同時に、悪夢の始まりの予兆でもあった。
今の日本には、魔法少女がおよそ2,000人ほどいるらしい。
そのうちの一人が、私だった。
配属された支部では、新人の仕事として町のパトロールがある。
同じ時期に入った子と二人体制で、日々パトロールにあたっていた。
いつもの町、いつもの人々。特に異変もなく、いつものように歩いていた。
――支給された計測器が、アラートを鳴らす。
魔物の出現予兆だ。
一瞬、緊張が走る。
こんな田舎に現れる魔物は等級が低く、私たちだけでも対処できる――
先輩たちは、そう教えてくれていた。
目の前に、魔力の渦が見える。
――おかしい。
視覚的に魔力の渦が見えるなんて――
隣にいた子が、吹き飛ばされた。
嫌な汗が頬を伝う――
この反応は、B級……いや、強魔級だ。
新人の私たちでは、太刀打ちできない。
それどころか、生きて帰ることさえ、叶わない。
所詮、銅級の見習い魔法少女だ。
救難を出したところで、生き残れるとは限らない。
同期の子も、まだ無事かどうかさえ分からない。
まだ出現してすらいない魔物から放たれた攻撃――
ただ、偶然にも外れたに過ぎない。
足が竦む。
規定では、救難が来るまで遅延戦闘を行わなければならない。
でも……どうやって?
すでに同期は、見えない場所に飛ばされている。
単独で耐えろというのか?
無理だ。
使える魔法は、汎用術式だけ……。
効果があるかどうかすら分からない。
町の住民は、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
辺りに残っているのは、私たち二人だけ――
いや、実質、一人だ。
なら……同期と一緒に逃げた方が、いいのだろうか。
決意して、同期が飛ばされた方へと走る。
まだ魔物が完全に出現する前に――
同期は、近くの民家の瓦礫に埋もれていた。
片足は、あらぬ方向に曲がったままだ。
後ろから、圧迫するようなプレッシャーが強くなる――
出現した。
強魔級……それも、人型だ。
知性を持ち、魔力の扱いに長けていると教わった。
見つけ次第、周囲の安全を確保しろ――と、教官は言っていた。
緊張で、聞こえていなかったインカムの音声が、少しずつ入ってくる。
『周……安全……優先! 遅……闘を開始……い!』
「汎用……術式……」
震える声で、術式を展開させる。
「穿て!」
狙いは十分。
それでも、魔物の周囲に漂う魔力で、私の魔法は霧散する。
魔物がこちらに手を向ける。
避けないと……
とっさに躱した瞬間、赤い熱線が目の前を通り過ぎた。
そこで気が付く――同期の子が後ろにいたことを。
振り返ったときには、同期の子はいなかった。
魔法少女が遺した青い魔力と共に、虹色の魔力が空に漂っている――
インカムから、何かが聞こえる。意味は分からない。
口から、言葉がこぼれる。
「誰か……助けてよ……」
強魔級――脅威度でいえば下から四番目、B級。
一定の知性を持ち、下位の魔物を束ねることもある。
「そこまで強くない」と言われるけれど、新人の魔法少女にとっては、十分すぎるほど死が隣にある存在だ。




