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天災魔法使い

いつもの訓練場所で、防御魔法を弄っていた。

すると、時雨さんが身支度をしながら近づいてきた。


「そろそろ、基礎の基礎は出来てきたな。

ちょっと幻理の所に行こうか。」

そう告げられ、私たちは小一時間ほど空を飛んだ。

雲の隙間から射す光が揺れ、風の匂いが頬を撫でる。


たどり着いたのは、都内にひっそりと佇む古びた図書館だった。

館内に人の気配はなく、古い紙と埃の匂いが静かに立ち込めている。


「こっちだ。」

時雨さんは図書館の奥へと私を導き、最奥の扉へと向かう。


扉の前で時雨さんがぴたりと立ち止まる。

今まで見たとこもないような苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。


扉の先が少し騒がしい。


「あいつ、帰っていたのか……」

時雨さんがつぶやくのと同時に扉が激しい音を立てて開け放たれる。

――内開きのはずの扉が、こちら側に勢いよく開いた。


「やぁやぁ、我が親友、時雨ではないか!」

古い映画の探偵みたいな黒いコートを着た女子高生ぐらいの子が、上機嫌に声を上げる。


「扉くらいまともに開けんか、馬鹿弟子。」

幻理さんがその子の頭を叩く。


「ほんとは、合わせたく無かったんだが……

詩織、この悶えてるやつは久遠くおん 凝子こりこ

幻理の元弟子で今は一人で研究をしている。」


「ご紹介にあずかりましたは、この天才魔法使い!

凝子と申します。以後お見知りおきを。」

凝子さんは、恭しく大げさにお辞儀をする。


「お前は、天才ではなく天災だろうよ、馬鹿弟子。」

幻理さんがさらりと言い放つ。


凝子は身をかがめたままにこりとお辞儀し、くるりと体を起こす。

頬に笑みを浮かべ、目はいたずらっ子のように輝いていた。


「んん?おやおや?詩織ちゃん?君、混ざり者かな?」


「混ざり物?」思わず声に出してしまう。何のことだろう、私にはよくわからなかった。


「凝子、それを本人の前で言ってはいけないと何度言ったら」

時雨が咎めるように口を挟む。

「だって事実だろ? なぜ隠さなきゃならないんだい?」


「あの、混ざり者って何ですか?」

口喧嘩になりかけている二人に質問を投げかける。


「ん?聞いてないのかい?

じゃぁ、私が教えて差し上げよう!」

やけにハイテンションな凝子さんが説明を始める。


「魔法使いと魔法少女の違いは知っているかな?

ん?知らない? じゃあそこからいこうか。


魔法使いは、生まれた時から魔力を感知できるし、魔力を扱える。

まぁ、魔法が自在に使えるかは別問題だけどね。


魔法少女は10代から20歳前後の少女が魔法を発現させる。

なぜかって? 知らなくて当然だよ。

魔法使いだけが考察し、研究している分野だからね。


魔災庁の子狸どもは研究すらしないし、する気もなさそうだ。

だから君たち魔法少女が知るはずもない。


おっと、話が少し逸れたね。

魔法少女が魔法を発現する条件はこうだ――思春期の少女の近くで“魔物”が発生し、魔物の魔力が少女と混ざる。


これを発見してから、魔法使いは魔法少女のことを“混ざり者”と呼ぶようになったんだ!」


凝子は早口でまくし立てるように喋り、両手を大きく振る。

その後ろで、幻理さんは片手で顔を覆い、時雨さんはため息をついている。


「まぁね、最近では“魔法少女から魔法使いに至る”って事例がいくつか確認されていてさ。

だから“混ざり者”より“原石”って呼び方の方が主流になってきてる。」


凝子はこちらを指差して満面の笑みを浮かべた。


「そう! 君みたいに!」


心臓が跳ねる。

魔法少女から魔法使い……? なんだかよくわからないけど、私に何か期待されているの?


「ん? 自分では気づいてなかったかい?

すでに君は魔法使いになりつつある。

適性があったのか、はたまた『魔法少女を魔法使いが指導すると魔法使いへ至れる』という新仮説か……」


凝子の瞳が、好奇心でぎゅっと細くなる。


「実に、実に興味深い!」


そして満面の笑み。

後ろの時雨さんへと振り返る。


「てことで、我が友よ――この子、ちょうだい?」


私が反応するよりも早く、二人の全力投球した本が凝子さんの顔面へと直撃する。

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