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新たなる日常

あの狂人たちの饗宴から、はや一か月。

私は、時雨さんの指導を受けていた。


いま行っているのは、魔法使いたちの間で“基礎”と呼ばれる訓練らしい。

だがそれは、魔災庁で教わった魔法理論とは、まるで別のものだった。


曰く、術式に力任せに魔力を注いではならない。

曰く、“理”を理解すれば、詠唱など不要。

曰く、魔法は奇跡ではない――技術だと。


私はこれまで、魔法は奇跡だと信じてきた。

魔力が多い者ほど強くなると思っていた。


魔法少女の魔法は、魔法使いの汎用術式を劣化コピーしたもの――

それが、私たちの使ってきた魔法だった。


その事実を知った瞬間、胸の奥がざらりと削れた。

あの饗宴の夜を境に、世界の輪郭が変わってしまった。


それでも私は、時雨さんの言葉を信じるしかなかった。

時雨さんは言う。魔法少女の魔法にも、長所はあると。


術式の構築が速いこと――それは戦いにおいて大きな利点になる。

魔法使いの真似をして、戦うためだけに最適化された途中段階の術式。

それが、魔法少女の使う魔法だ。


それは原始的で、力強く、神秘的。

同時に、無駄が多く、制御が難しく、使い手次第で性能が変わる。


今までの常識が変わっていく。


魔法使いたちを甘く見ていたつもりはない。

自分たちが優れていると思っていたわけでもない。

ただ――優劣の問題ではなく、そもそも次元が違った。


魔法使いの見習いでさえ知っている知識が、

魔法少女にとっては未だ知らぬ真実だった。


そしてそれらは、まるで何でもないことのように、

日常の会話の中でさらりと明かされていく。


基礎的な事を教わると、次に魔法の術式を組まされる。

今まで使っていた魔法を理解し、使いやすくする。


今まで魔法式の形なんて気にしたこともなかった。


時雨さんの使う術式を真似し、自分の魔法を改良する。

その間、時雨さんは何も言わずにただ、見守っている。


改良し、流れを確認する。

流れが滞ればそこを直す。


力で通すのではなく、流れるように変えていく。

それを繰り返せば無駄が無くなっていく……らしい。


確かに、繰り返して来たらだんだん、魔力の通りも展開も早くなってきているけど。

あの時見た魔法、それとは比べるまでもなく、覚束ない。


空の上で優雅に詠っていた、あの魔法とは。


ふと、術式の動きが軽くなる。


形は歪で円形じゃない。

それでも、それは確かに滑らかに流れている。


「それでいい。君はようやく、自分の手で理に触れたんだ。」


その言葉を聞いた途端、胸の奥に小さな灯りがともった。

よくわからないまま使っていた“魔法”が、ようやく指先に触れた気がした。

粗く、歪で、未完成。


それでも、これは紛れもなく私の魔法だ。

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