混乱
長い夜明けが始まる
厄災との戦い……最後はあまり覚えてはいない。
今わかることは、目の前の混沌。
見たことのない数の魔法を使う集団。
酒を飲み、歌い、時折中央へ魔法術式を撃ちこむ。
中央に燃え盛る、業火。
そしてその中に括られる
スライム。
意味が分からず、ただ呆然としている。
たぶん中央にいるスライムのような物体は、
厄災との戦いの前で空へ消えた集団の中にいたスライムだろう。
なぜかそれが、集団リンチに合っている。
そしてそれを特等席で見せられている私。
子供が酒を飲み、古い魔災庁の制服を着た男性がご機嫌に踊る。
何をしているのか、なぜ私は此処に居るのか。
混乱の中、近くに幻理と呼ばれていた女性が歩いてくる。
「楽しんでいるかい?」
何処に楽しむ要素があるのだろうか。
「あの、此処はどこというか……あれは何をしているのですか?」
中央を指さし、疑問が口から出る。
「あぁ、あれはだね。」
「封印を解いた挙句、自分たちはさっさと逃げ出した狂人をしばいているだけさ。」
「やっと捕まったんだから、皆興奮しているんだろうさ。」
――でも、私にはただ恐怖しか見えない。
「あと、どれくらい時間が経ちましたか……?」
混乱のあまり、次々と疑問が口をつく。
「ふむ……大体1週間ぐらいしか経ってないよ。
随分と寝坊じゃないかい?」
幻理さんは事もなげに答える
「1週間!?他の子達は?」
飛び上がるように質問が出る。
「そう慌てなさんな、他の子達はさっさと帰ったよ。
まぁ、一部は帰ることも出来なかったようだがねぇ。」
特に表情が変わるでもなく、言い放つ。
「まぁ、小娘、あんたは私が攫ってきたようなものだ。安心しなさい。」
余計に混乱してきた。攫った?なぜ?
そもそも私はそんなに、強いわけでも重要な役職でもないのに?
「おや、混乱してるようだね。理由は単純だよ。」
「小娘、お前に興味を持ったから、攫った。」
幻理さんは、にやりと笑みを浮かべる。
「まぁ、剣を持った小娘に頼まれたのも、理由のひとつだがね。」
剣を持った魔法少女。
私が知っているのは、澄玲先輩だけだ。
「強くしてあげてほしい、って言われたんだがねぇ。
私はそんなこと、どうでもいいんだ。
貴重な魔法少女から、魔法使いになれるかもしれない試料なんだから。」
絶句する。優しそうな声色で平然と放たれるその言葉に、背筋が凍る。
「まぁ、強くするのは時雨の役割だろうしね。
私は研究が本分だ。柄じゃないことはやるもんじゃない。」
「小娘の教育は、時雨がやるから。
しっかりと強くなるんだよ。」
そう言い残し、喧騒の中へと混じっていく。




