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高1 ぐちゃぐちゃだ




気がつけば、声変わりも終わって声も安定して、やわらかなバリトン。


身長も愛と同じくらいだったのに、とっくに抜かされて、見上げるくらいになった。

元々人気者だった伊吹は、弓道部が大躍進して話題になり、袴の似合う容姿も相まって、周りの女の子たちはますます放っておかないわけで。


そして聞くともなしに聞こえてくる。


誰が伊吹に告白したとか、好きな人がいるらしいとか、彼女がいるらしいとか。


好きな人がいる…ようなことは愛も以前聞いたが、いつの間に付き合ったのだろう。


「伊吹くん彼女いるんだって。愛ちゃん誰か知ってる?」


と、知らない女の子に聞かれた。


愛は無言で首を振るしかない。


毎日のように言葉を交わして、何でも知っていると思ったのに。

昨日だって今朝だって、たくさん話したのに。


言いようのない切なさと、悔しさ。

詰りたい気持ちになった。


「愛ちゃん、今日は部活?」


愛だけ再提出になったプリントを先生に出して教室に戻ると、伊吹が1人教室にいた。


席に戻って荷物をまとめるけれど、前の席に来て座る伊吹に、妙に苛立った。


「…彼女を待ってなくていいの?」

「え?」


他の女の子と必要以上に仲良くしてはいけないのだろう。


愛だったら嫌だ。…愛だったら?


もうわけがわからない、ぐちゃぐちゃだ。


「愛ちゃん、あのさ、何か誤解してそうだけど」


珍しく焦りを感じる声。


「僕が好きなのは愛ちゃんだよ」


頭の中が真っ白になった。


「僕は、愛ちゃんが好き。」


ヒュッと背筋が凍る。


ーーー私はーーくんが好きなの。


ーーーだからベタベタされるとウザいのよね。あんたホント邪魔。


息苦しい。


ボロボロと涙が出てきた。怖い。


立ち上がろうとして、後ろの席にぶつかって椅子が引けずに足がもつれてぺたんと床に倒れる。


「ちょ、愛ちゃん…?」


伸ばされた腕に、ビクリと肩が震え、逃げるように立ち上がる。

怖い。ダメ。近付いたら。傍にいたら。そしたら、また。


「や、だ…」


カバンを引っ掴んで、愛はその場を駆け出した。





◇◆◇





「愛ちゃん?おかえりー。あら、泣いてるの?転んだー?」


涙が止まらないまま家に帰ると、荷造りをしているママが手を止めて、膝枕をして頭を撫でてくれた。


「ママ、でかけるの?」

「そうよ。パパのところに行くの。あら、言ってなかったかしら?」

「…わたしも行っていい?」

「一緒に行ってくれるのー?飛行機取るわね。今から隣の席取れるかしら。明日8時には出るわよ。準備してね!愛ちゃんも来るならパパ喜ぶわ!連絡しなくっちゃ!」

「うん」

「もう夏休み?」

「ううん、まだ。」

「あら!じゃあ学校にも連絡しなきゃね」


ママは麗ちゃんと優ちゃんも行くかしらとるんるんで荷物まとめを再開した。


「優ちゃんおかえりなさーい!優ちゃんも明日からパパのところ行く!?」

「ママ、まだ夏休みじゃないんだからね…」


ええーいいじゃないのーとごねるママを優が嗜めていた。

麗には急に言わないでと怒られていた。


愛は荷造りを始めた。


学校に行ったら顔を合わせてしまう。


会いたくなかった。


クラスにも、居たくなかった。





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