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高3 いつになく、饒舌




促されてソファに座ってから、ハッとした。

手を引かれるまま、ついてきてしまった。


綺麗に掃除された、シンプルで統一感のあるリビング。


シンと静かな空間に、カシャカシャと柵の方からモコが動く音がする。

愛は、伊吹の家のリビングのソファで、縮こまった。


何を話すことがあるのだろうか。


あれ、何で逃げていたんだっけ。


「愛ちゃん」


ビクリと震えて、思わずソファの端っこまで逃げて、肘掛けにぶつかった。


困ったら顔をしたのが、息づかいでわかった。


「ごめんね、この前。…友達と話してたの聞いてたんでしょ」

「…な、んの…こと…?」

「柴田が廊下で愛ちゃんとぶつかったって言ってた。泣いてたって」


ぎゅうと握り込んだ愛の手は、膝の上。


「あの人たち、あの手の話題になるとめんどくさいから流してた」


伊吹は愛の隣に、少し遠慮がちに腰かけた。

ソファが少し沈み込む。


「か…顔だけって…」

「思ってるわけないでしょう。何してても何話しても可愛くてたまらないのに」

「かっ、かわ…!?」

「傷付けて、ごめんね」


握りしめた手に、伊吹のあたたかい手が乗る。


「いい?僕はね、愛ちゃんが僕に楽しそうに話してくれて、僕に会いにきてくれて、愛ちゃんが大好きな世界を一緒に旅するのを許してくれてるのがとても嬉しい」


いつになく、饒舌な伊吹。


一言ひとこと、諭すようなバリトンが心地よい。


「それを、言ったら茶化す奴らには言わなくていいと思ったんだよ。独り占めしたいから。」

「え」


少しゆるんだ愛の手を、そっと、両手で包んだ。


「怒った?」

「う、ううん…」

「悲しかった?」

「…うん…」

「ごめんね」

「うん」

「もしまた聞かれたら、ちゃんと愛ちゃんが好きだって答えるよ」

「え、でも…」


困らせたいわけじゃない。無理に話させたいわけじゃない。

ショックだったけど、顔を合わせられなかったのは気まずかっただけ。


「好きだよ、愛ちゃん」


穏やかに告げられて、愛は首を振った。


「う、うそ…」

「数日逃げられただけで、滅入っちゃうくらい」


チラリと伊吹の顔を伺い見ると、微笑んでくれた。

少し、目の下が黒くなっている気がする。


「大好き」


慈しむその視線に、頬が熱くなって見つめ返せなくて、愛はまた俯いた。


「あれ、そんなカオしてくれるようになったんだ?」

「ど、どんなカオ…」


伊吹の手から、自分の手を抜き取って、愛は熱い頬を両手で押さえた。


「僕が話したかったのはそれだけど、愛ちゃんは言いたいことある?」


悲しかった気持ちはどこへやら。

愉しそうな声色に、余裕がないのは愛だけだと悔しくなる。


そして、不安になった。


「わたしは」

「うん」

「顔だけって言われても、仕方なくって」


きっと伊吹は、こんなドロドロ胸の奥が重たくなるような“すき”を持っていないだろうから。


「好きになってもらえる資格もないと思ってるのに、伊吹くんは好きって言ってくれて」

「うん?」


じゃなかったら、あんな穏やかな声で表情で、大好きなんて、言えないでしょう?


「わたしばっかり、すきみたい」


大好きと伝えたいのに、同じだけの好きを、返して欲しいなんてワガママだ。










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