高3 声が聞こえて
クラスが違うと、接点もあまりない。
なんとなく気まずくて、伊吹のクラスに会いに行けないでいる。
伊吹も、わざわざ愛のところへは来ない。部活の合間に、たまに声をかけてくれていたくらいで。
登下校中に伊吹を見つけても、声をかけらなれなかった。
友達と談笑している伊吹もきっと愛に気付いているだろうに、声をかけて来ない。
伊吹の声が聞こえて、女の子と話している姿を見て、胸のあたりが痛む。
洗ってカバンに入れているのに、タオルを伊吹に返せないでいる。
いや、返しに行けば、伊吹は受け取ってくれるだろう。
でも怖かった。
また、あんな、拒絶をされるのが。
◇◆◇
「何、坂本と喧嘩したの」
「う、ううん…」
隣を歩く清嗣に言われて、愛は首を振った。
喧嘩、ではないと思う。
「んー、別におれはそのままでいいんだけどさ。そんな顔してるなら、さっさと仲直りしなよ」
「…なかなおり…」
優は話を聞いてくれるので喧嘩になったことはないし、麗と喧嘩したら優が間に入って上手く仲裁してくれる。
清嗣と喧嘩したらハナが、ハナと喧嘩したら清嗣が、ちゃんと悪い方を謝らせて仲直りさせてくれる。
だから知らない。
それ以外の人との仲直りの仕方なんて。
麗くらい経験値があれば、こういうときでもいつのまにか仲直りできるのだろうか。
優のように察しがよければ、伊吹を怒らせることも悲しませることも、なかったのだろうか。
「なんで、怒ったのか、わからない」
アイツのことばっかりだね。そう言った冷たい声が胸の辺りに突き刺さっている。
指先に刺さったトゲみたいに。
きっと、愛が傷付けることを言ってしまったはずなのに、肝心のそれが何なのかが見当もつかない。
今までだって、愛が勝手にそばにいただけで、傷ついた理由も、悲しいことも、つらいことも、話してはくれない。
だから、伊吹が何に悲しんで、何に傷ついて、何に怒ったのか。
知りたいのに。
伊吹が何を思って何を大切にしているのか。
そしたら一緒に悲しんで傷ついて怒って、抱きしめてあげられるのに。
だから教えてほしい。
聞いたら教えてくれる?
聞いても、呆れて話してくれないかな。
もっと怒るのかな。
それとも、ーーーー
堂々巡り。
どうしたらいい?




