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夏休み、ユウタ、カズキ、リナ、ミホの四人は地元の公園に集まっていた。
花火を終えたあと、話題は自然と「怖い話」に。
スマホで何か怖い話はないかと探していると、真っ黒なサムネと「絶対に開かないで」と書かれたサイトがヒットした。
「なんだこれ?」
FUMIKO.MOV、と黒文字で書かれているだけである。
サムネ以外何もない。
彼らは動画共有サイトの“裏リンク”を漁った。
そして、深夜2時すぎ、匿名掲示板に貼られていた短縮URLを踏んだユウタのスマホが、沈黙を破った。
《FUMIKO.MOV を再生しますか?》
「何かヤバそうな気ぃしない?……」
リナが怖そうに言うが、ユウタは笑って再生ボタンを押した。
最初の30秒、画面は真っ暗。風の音だけが鳴る。
ミホがスマホの画面を覗き込んでいたとき、囁き声が聞こえた。
「……かえして……わたしの……ほね……」
そしてラスト5秒、墓地の映像。
墓石に映った名前を見て、リナが息をのんだ。
「……ちょっと待って……今の、見た……?」
画面を巻き戻すと、そこにはこう彫られていた。
「山田優太之墓」
──ユウタのフルネームだった。
「お前の名前じゃん……なにこれ、やらせ?」
「マジでやばくない?」
冗談交じりだった空気が、急に凍りついた。
◇◇◇◇
次の日、ユウタが学校を欠席した。
LINEも既読がつかない。
家に様子を見に行ったカズキは、ユウタの母親から信じられない話を聞く。
「朝起きたら、いなくて……スマホだけベッドに置いてあったの」
カズキが部屋に入ると、ベッドの上に置かれたスマホのロック画面には、
《FUMIKO.MOV》のサムネイルが固定表示されていた。消そうとしても消えなかった。
その日の夜、ミホのスマホにも通知が届いた。
《あなたの名前を登録しました》
怖くなって再起動したが、消えない。
リナも同じ通知を受け取り、怯えながら泣きだした。
彼女たちは急いでスマホを初期化し、アカウントも変えた。
それでも、その動画のサムネイルだけは、ふとした瞬間にLINEや写真フォルダに紛れ込んでくる。
◇◇◇◇
ユウタは今も行方不明。
地元の裏山に、不自然に新しい墓石がひとつだけあるらしい。
地元の噂では、夜になるとその墓の前で、スマホをかざして立っている“誰か”が目撃されているという。
そして——
この話を信じるかどうかは、あなた次第だけど。
今、この記事を読んでるあなたのスマホにも、もし「FUMIKO.MOV」が表示されたら……
ぜったいに、開いちゃダメだよ。