最終章
そこから数日が経ったある日…
「新、入るわね。」
「あの、えっと…お母さんでしたっけ?」
「そうよ。
ねぇ、新。美咲ちゃんって知ってる?」
「はい、いつもお見舞いに来てくれる人ですよね?」
「そう。あの子ね、ラジオ番組のパーソナリティ?をしているんだって。ほら…」
「さぁ、本日も始まりました『美咲のMake You Smiles』。パーソナリティを務めさせて頂きます、塩部美咲です。」
「この声… でも、どうして僕に黙っていたのですか?」
「それはね。あの子がこの仕事を始めたのは、あなたを探すためだったのよ。」
「僕を…ですか?」
「覚えて無いかもしれないけど、あの子はあなたと幼馴染なの。でも、仕事の都合で私たちは引越してしまって、あの子と離れ離れになったの。だからあの子は、離れてしまったあなたともう一度会いたくて、ラジオの仕事をしながらあなたを探していたそうなの。
多分、あの子は今のあなたにそれを説明したら迷惑だと思ったから、この事を話さなかったのだと思うわよ。」
そうして2人は、ラジオに耳を傾ける。
「続きましてフリートークのコーナーです。まず初めに、早いもので放送開始から1ヶ月が経ちました。これまでこの番組を聴いてくださった皆様、ありがとうございます。皆様のおかげで、この番組を続けることができました。
そして、私が誰よりもお礼を言いたい人がいます。それは、私の幼馴染です。離れ離れになっても、私のことをずっと信じてくれていました。実は、その幼馴染は今、記憶喪失になってしまっているのです。だから、私との思い出も覚えていないみたいで…でも、そんな彼に一言だけ言わせてください。『私はあなたに出会えて良かった。そして、どんなあなたも私は大好き。』」
「ハッ! 美咲!!」
「どうしたの、新? まさか…」
「母さん、俺思い出した。美咲や母さんを、過去の記憶を!!」
「本当?すぐ美咲ちゃんにも伝えなきゃ!!」
「美咲さん!!」
「ディレクターさん、どうしたのですか?」
「彼のお母さんから電話があって、彼の記憶が戻ったそうです。」
「本当ですか?! 良かった…」
そうして私は、収録が終わると病院へと急いで向かった。
「新!!」
「美咲、心配かけてごめん。」
「ううん。
ありがとう、私のこと思い出してくれて。」
「恐らく新は、美咲ちゃんの想いで記憶が蘇ったのだと思うの。」
「お母さま…」
「ありがとう。新の記憶を思い出させてくれて。」
「私こそ、お母さまがラジオを続けてほしいと言ってくださったらこそ、今まで頑張れました。
礼を言うのはこちらの方です!!」
「美咲ちゃん…」
「美咲…」
「新…私はどんな新も、大好きだよ!!」
「俺も、どんな美咲も大好きだ!!」
「新とのこれまでは、正直色々なことがありすぎました。ですが、それでも私たちはお互いを愛し、どんなに辛いことも2人で乗り越えて来ました。
そんな彼を一生涯愛し、2人で支え合って生きていくことを誓います。」
盛大な拍手が巻き起こる。
「ねぇ…新。
私、新と出会えて本当に良かった!!」
「俺も、美咲と出会えて本当に良かった!!」
「同じだね。」
「ああ。同じだな。」
-私たちの日々は、これからも続いていく-