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第3章

「新、ねぇ新!! お願い返事してよ!!」



「おい、人が倒れてるぞ!」


「誰か、救急車!」


事故を見た人が続々と駆け寄る。


「美咲…」

絞り出すような声で、新が呟いた。


「新…」


「良かった…美咲と、また…会えて」

そう言うと、握った手が力無くうなだれる。


「新!! 新ッ!! いやーーー!!」


その後、新は病院へと運ばれた。


「それで、新さんは車に撥ねられたのですね」


「はい…」

警察官からの事情聴取に、私は腑抜けた声で答える。


「あの…それで、新は?」


「いま、手術を受けているそうです。」


「そう…ですか…」


「すみません、彼のことが心配ですよね?

詳しくは後日、また伺いますので美咲さんは病院へ行ってあげてください。」


「分かりました…」


そうして私は、新が運ばれた病院へと向かう。


「新は無事なんですか?」


「はい。手術により、新さんは一命を取り留めました。」


「良かった」


「ただ…」


「あ、新!!」

そう言って私は、ベッドで横たわる新に駆け寄る。


「良かった、無事で」


「あの…どちら様ですか?」


「え?」


「実は新さんは、事故の影響で記憶を失ってしまいまして…」


「そんな、嘘だよね?

ねぇ新、私だよ。美咲だよ!!」


「美咲さん…すみません、本当に覚えていなくて…」


「新…」


「あの、新が事故に遭ったって!!」


「はい、新さんはこちらです。ご家族の方ですか?」


「そうです!! 新の母です。

ところで、こちらの方は?」


「えっと、私は…」




「ビックリしたわ。まさか新が言っていた相手が、あの美咲ちゃんだったなんて」


私たちは病院のベンチで話をした。


「新ね、珍しく昨日、私にメールを送ってきたのよ。『明日、ずっと会いたかった人に会える』って。私には誰だか、さっぱり分からなかったけど笑」


「あの、新の事なのですが…」


「さっき聞いたわ。あれだけ美咲ちゃんに会うのを楽しみにしていたのに、記憶喪失になるなんてねぇ。 そういえば、美咲ちゃんは今、何をしているの?」


「私は今、ラジオ番組のパーソナリティをしています。」


「あら、そうなの?」


「はい。パーソナリティをしていれば、また新に会えるかもと思って…

でも、新がこうなった今、もう番組を続ける意味なんて…」


「その番組、なんていう番組?」


「『美咲のMake You Smiles』です。」


「あぁ、あの番組…」


「ご存知なのですか?」


「ええ。私は知らなかったんだけど、友達がいつも聴いてるみたいなのよ。『すごく面白いラジオがある』って。」


「え?」


「だからね。私から一つお願いがあるの。

確かに、新がこんな事になって私も正直辛い。私もね。今は堪えてるけど、最初に聞いた時は泣き崩れたわ。

でも、あなたのラジオを楽しみにしている人もいる。だから、その人たちのためにもラジオを続けてほしい。きっと、新もそう思っているわよ。」


「そう…ですかね?」


「きっとそうよ。

あなたのラジオで、これからもみんなに『Smiles』を届けてちょうだい。それが、私の願い。」


「お母さま…やっぱり私、番組を続けようと思います!

新の事はとても悲しいんですけど、それでも私のラジオを待っている人がいるんですよね。

私はそんな人たちに、そして新に『Smiles』を届けたいです!!」


「美咲ちゃん、頑張ってね!!

私も新と一緒に聴くからね。」


「ありがとうございます、お母さま!!」

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