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迷宮調査

いよいよ、迷宮の内部調査が始まる。

 マスターはこの日のために何日もかけて準備をしていた。


 迷宮から200mほど離れた場所に設営された前線拠点は大規模なものとなり、指揮から作戦決行まで全てを行えるようになっている。そこにはもちろんマスターも詰めていて、逐一状況判断ができるようになっていた。


 調査潜行には斥候班が先に入ることになり、本調査に先駆けて脅威判定や魔物の有無だとか地形確認をする。その後斥候班が持ち帰った情報をもとに脅威判定を決めてそれに見合ったランクのパーティを割り振るのが通常の判断だという。


 今回は僕が攻略したという前情報があるので脅威判定は低くなっているが、潜行するパーティにしか共有されない情報なので前線拠点で待機するハンターのほうが緊張感があるように見えた。

 

 この迷宮調査は潜行班全ての人員に緘口令が言い渡されていた。〈8つの迷宮〉の内部情報及び攻略手段などは秘匿すべきだとのマスターの判断からだった。その情報の中には僕の存在も入っているので僕としてはありがたい。


 調査潜行開始の前日、メアリィが会いたい人がいるというので二人で指揮所テントの前で待っていた。


 「どんな人なの?」


 メアリィが会いたい人なんて誰であれ気になる。


 「私のハンターの先生よ。斥候班のメンバーなの。」


 明日迷宮に入る人なのか。



 テントから男性が三人と最後に女性が出てきた。見たところ二十代後半から三十代前半くらいだろう。


 「マチルダさん。」


 メアリィが女性を呼び止めた。


 「あらメアリィちゃん。と、その子は・・・例の新人くんかな?」


 「あっ、はいアーサーです。初めまして。」


 「みんな先に行っててくれる?」


 マチルダさんは仲間にそう言って周囲を見回してからテントの裏側へと僕らを促した。

 「ここで立ち話もなんだから場所を変えましょうか。」


 テントの裏側、拠点の周囲には柵があってそこまで歩いた。


 「どうしたの?噂の彼を見せにきたのかな?」


 マチルダさんは、からかい半分でメアリィを見る。


 「そういうんじゃなくて、明日潜るって聞いたから心配になってきたの。」


 メアリィってばすぐに赤くなる。


 「メアリィちゃんはほんと可愛いわね。」


 マチルダさんは目を細めながらメアリィの頭を撫でてる。


 「アーサーに聞いたわ。ずっと深く潜るって。魔物は出なくても危険なんでしょ?」


 「そうね。どんな迷宮でも危険なものだけど、宝玉が残っている限り無視できないものだし。その彼が攻略したなんてすぐには信じられないことでもあるし、誰かが行かなきゃならないのよ。」


 マチルダさんは子供に言い聞かせるように言う。 


 僕は迷宮がこの世界にどんな影響を与えているのかを、実際のところ何も知らない。メアリィから聞いた病気の話しか知らないんだ。攻略したのも僕の力じゃないし。


 「うん。私も試験の時すごく怖かったから少しはわかるわ。」


 「私たち斥候の仕事は最下層までのルートと安全の確認だからすぐに戻るわよ。じゃそろそろ行くわね。」


 二人でマチルダさんを見送ってからメアリィは食事当番なので調理テントへ向かった。


 僕は柵の向こうに見える広陵な大地を眺めてた。

 アースラから聞いた昔の話では、見える範囲に街や村がいくつかあったっていう。それが魔力暴走の大爆発で全て無くなった。それから150年。

 僕が攻略したこの迷宮の情報は他の七つにも通じるらしい。全く同じということはないだろうけど。


 マスターは今回のような大規模の作戦は初めてだって言ってた。今まで攻略されなかった迷宮が攻略されたことの意味を僕はよくわかってなかった。

 それでも僕は何かしなくちゃいけないって思い始めていた。迷宮に関わるハンターの人たちは誰もが真剣だった。僕が攻略出来たのはアースラがいたおかげで、僕自身がやったなんて胸を張れるものじゃない。

 僕はまだ弱いままだしメアリィを護っていけるかも自信がない。強くなるためにも決断しなくちゃ。


 指揮所テントを覗くとマスターはひとりで机の上の書類を見ていた。


 「あの。少しいいでしょうか?」


 「ん?アーサーかどうした。」


 「ハンターって僕でもやれますか?」


 「急だな。何かあったか?」


 「そういうわけじゃないんですが、僕も何かしなくちゃいけないって思うんです。迷宮を出て街に来てから目まぐるしく状況が変わって沢山のことがあったけど、僕自身は何も出来ていないのでモヤモヤしてるんです。」


 「功を焦っているのかな?」


 「いえ、そういうんじゃないと思います。僕が何者になるかを決めなくちゃいけないって、そう思ったんです。」


 「君にはメアリィの護衛を頼んでるはずだが?」


 「はい。それはとても光栄です。」


 「ハンターをやるとしても我々ハンターが何を持ってハンターなのかを教えてやらなきゃならん。アーサー、ハンターとはなんだと思う?」


 「えっと。迷宮から発生する魔物や、うろつく獣などから街を守ることですよね?」


 「ま。何も知らんアーサーにはそう見えるかもしれんが、我々ハンターとは迷宮を攻略しその核を取り除き、鎮めるまでが仕事だ。言わば『迷宮ハンター』ってわけだな。ハンターっていうのは略称だ。」


 僕がやったのは攻略だけだ。核である宝玉を見ただけで取り込まれそうになった。

 今回の作戦だって中に入るのは少数でも大勢が待機している。ハンターは組織で動いてる。僕はハンターのことを知らなくちゃいけないんだ。


 「覚悟があるっていうのはいいことだが、君はあくまでもメアリィの護衛だ。護衛としてメアリィと共に任務を受けるぐらいなら許そう。」


 「ありがとうございます。」


 「ただし、訓練は厳しめになるぞ。明日からでもステファンに鍛えてもらえ。俺からも言っておく。」



 調査潜行初日。

 斥候班の出発を見送ってきたメアリィがテント前まで戻ってきた。

 僕を見つけるとすぐに険しい顔つきになる。初めて逢った時、マスターに詰め寄った時と同じ顔だ。

 これはやばいやつ。


 「何もアーサーまでハンターにならなくてもいいのに!」


 メアリィが膨れっ面で僕に詰め寄る。


 「でも、弱いままじゃメアリィを護れないし、僕だけ蚊帳の外っていうのも気が引けるっていうか、このままじゃいけないって思ったんだ。」


 「勝手にお父さまにハンターになるなんていうんだもん。私に相談してほしかったわ!」


 「ごめん。ごめんて。」


 「護衛のことだって私は納得してないのよ。街で襲われることなんてないのに!」


 「それはマスターに何か考えがあるはずで・・・」


 「もう。知らない!アーサーのバカ!」


 「メアリィ・・・」


 メアリィは調理テントのほうへと行ってしまった。


 メアリィとケンカしてしまった。

 良かれと思ってハンターに志願したのに。

 マチルダさんをあれだけ心配してた姿を見たら、僕までハンターになったら心配の種を増やすだけか。

 わかっちゃいるけど男としてはタダ飯食いでいてたまるか。


 「ん?ひとりか?メアリィはどうした?」


 ステファンさんが木剣を二つ持ってやってきた。

 

 「はい。あの、ケンカしました・・・」


 「ぷ。すまない。何があった?」


 「僕がハンターに志願したのが気に入らないって。」


 「そうか。心配するのは当然だろう。だが私たちもメアリィがハンターをやるのを納得しているわけではない。」


 「そうなんですね。」


 「ああ。それにしても君が来てからべったりだったメアリィとケンカするとはね。」


 「笑い事じゃないですよ。どうやったら許してくれますかね?」

 

 「それは後で考えろ。それより気分転換にどうだ?」


 ステファンさんが木剣を差し出す。

 今日から僕の教育係としてステファンさんが剣を教えてくれることになっていた。

 

 「そうですね。迷宮以来剣を振ってないので体が鈍ってまして、お願いします。」


 「よし。君の剣を見せてもらおう。」


 僕がアースラに教わった剣術がどれだけ通じるか試すいい機会だ。

 思い出せ。アースラに何度も指導された剣だ。割と自信がある。


 「うん。いい型だ。打ち込んで来なさい。」


 僕にとって初めての対人戦だ。

 しかし、剣を持って向き合った時から違和感を感じた。

 魔物の時と違ってこちらから動かなければならない。僕の剣が当たらなければ僕が斬られる。木剣だろうと先に当てなければならないのに、当てる手段が見つからない。

 

 ならば素早く動いて・・・


 「ぐはっ!」


 何をされたかわからないまま、地面に倒れた。


 「型は悪くないが、分かり易すぎる。」


 「えっと。本気ですか?」


 「ほんの挨拶代わりだな。ほら立て。今日の私はそれほど時間がない。君が受けられるようになるまで何度も空を見ることになるぞ?」


 ステファンさんの剣術は僕が思っていたよりも速く、正確だった。

 様々な角度から打ち込まれる剣捌きに何も出来ず、滅多打ちにされるがまま何度も大地に倒れ、空を見た。


 ああ、ちくしょう!本当に弱いな、僕は。


 「今日はこの辺にしよう。やり過ぎたら私がメアリィに怒られる。」


 充分やりすぎだと思いますが?


 「ありがとうございました。」


 立ち上がって一礼する。


 「それはなんだ?」


 「僕の国での礼儀作法ですよ。目上の人に指導してもらった時にやるやつです。」


 「そうか。明日はなるべく手を抜いてやるが、君は体を鍛えたほうがいいな。」


 「はい。」


 これは洗礼ってやつだな。僕が音を上げるかどうか。

 マスターもステファンさんも厳しいなぁ。まったく。

 

 

 この日はケンカしたままメアリィと会えず夜を迎えた。

 体中が痛くて寝付けず、ひとりで夜空を見上げていた。

 いつも見ていた夜空と違って星の配置なんかもさっぱりわからない。それでも街の明かりが無いからとても綺麗な星空だと思った。僕がいるのが地球ではないってことがこの夜空だけでもわかる。


 この夜空をメアリィと見上げたいと思った。僕の住む場所とまったく違うって言ったらどんな反応するだろう。この世界にも星座はあるのだろうか。

 明日にはちゃんと謝って僕の考えをきちんと伝えないと。

 

 

 翌日の早朝もメアリィは斥候班の出発を見送っていた。テントから少し離れた場所から今も手を振っている後ろ姿を見てると、こういうのに慣れていない僕にはとても眩しい情景だなって思う。

 優しい時間が確かにそこにあった。


 こちらを向いて歩き出したメアリィに手を振ってみる。僕に気づいたメアリィは俯いたままゆっくり歩いてくる。

 まだ怒ってるかな?許してくれるかな?


 「メアリィ・・・」


 僕の前まで歩いてきたメアリィは俯いたまま僕に頭をぶつけてくる。ちょうど顎に当たった。

 

 「昨日はごめんなさい。」


 俯いたままのメアリィに謝られて、少し動揺した。


 「僕のほうこそ、先にメアリィに話せば良かったのに勇み足だったよ。僕はちょっと焦ってるんだ。」


 「どうして?」


 「マスターも他の人たちも迷宮のことになると真剣そのものでしょ。僕は部外者だったから迷宮が生活にどのように関わっているかまったく知らなくてさ、ひとりだけおいてけぼりな気がしてるんだ。ここにいても僕だけただの子供のような気分なんだよ。」


 メアリィがやっと顔を上げてくれた。

 怒ってるかと思ったらそうでもなく心配そうな顔だった。


 「そんなことないよ。アーサーはアーサーにしか出来ないことをやってるでしょ?」


 「うん。今まではそれでよかったかもしれない。僕も役立ってるって思ってた。それでもね、先へ進むためには、痛いこともキツいこともやっていかなくちゃって思うんだよ。それにね、メアリィがハンターをやるなら僕だけ待ってるだけなんて絶対嫌だ。隣で護れるくらいじゃないと僕が納得できない。」

 

 自分で言っといて、最後はクサイこと言ったなって思う。

 勢いってこわい。


 メアリィは照れて横を向いてしまった。


 「だから、僕がハンターとしてメアリィの横に立つことを許してほしい。」


 「・・・うん。でも、ちゃんとそばにいてね。」


 「もちろん。」



 メアリィと無事に仲直り出来てホッとした後は、ステファンさんとの剣の稽古の時間。今日は基本の型をいくつか教わってステファンさんの打ち込みをひたすら受けた。これはもう、しごきと言ってもいいくらいキツい。昨日は何度も転がされたが今日のほうがキツい。

 メアリィが見学したいと言っていたが見せなくてよかった。


 「今日はこれくらいにしよう。明日からは迷宮に潜ることになるから、稽古の続きは街に戻ってからになるだろう。ちゃんと鍛えておけよ。」


 「はい。ありがとうございました。」


 アースラは、僕は弱いままでいいと言った。弱いまま、死なないための剣を覚えろと。僕ひとりであればそれでもいいのだろう。でも今は護りたい人がいる。

 メアリィのため、メアリィを助けられる剣術は必須なはずだ。そのためには体力をつける。

 とにかく食べて走って筋トレもする。打ち負けない体が必要だ。

 ひとつ目標ができると今までの焦りが消えてスッと胸が楽になった。


 次の日の早朝から僕はランニングを開始した。前線拠点の柵の内側を走る。これなら他のハンターたちの邪魔にはならないと思ったからだ。

 メアリィはステファンさんたちの見送りから戻った後、柵のそばで僕が走るのを眺めている。

 今朝の朝食の調理当番ではないらしい。暇を持て余した彼女は柵の向こうを眺めたり足元の石を蹴飛ばしたりしている。テントに戻って休めばいいのに、僕が走っているうちは見ていたいのだという。

 しかしながら普段運動をしていなかったから、いざ走ってみると結構キツい。軽めのジョギングのつもりでもすぐに脚に疲労感が出てくる。

 メアリィが見てる手前、「もうムリ」なんてカッコ悪いこと言えないし10周はなんとしてもやろう。


 なんとか10周を走り終わってメアリィの前で倒れ込む。


 「お疲れさま。はい、お水。」


 「ありがとう、メアリィ。」


 メアリィの持ってきてくれた水筒を受け取り喉を潤す。


 「アーサーは頑張り屋さんだね。」

 

 メアリィの微笑みが今日も眩しい。


 「そうでもないよ。頑張ろうと思ったのはこの世界に来てからだし。昔の僕ならこんなこと自分からやろうとしなかったから。」

 

 息切れしながらなんとか答える。


 「そうなの?私は今のアーサーしか知らないから。ねぇ。向こうにいた時のアーサーってどんなだったの?」


 「いつも退屈しててさ、つまらないヤツだったよ。」


 「じゃあ。ここに残って正解だった?」


 メアリィは僕がまだ帰りたい気持ちが残っていると思ってるのだろうか?

 僕はメアリィのとなりで生きていくって決めたんだ。


 「うん。もう心残りなんてないよ。ここで生きていく意味を見つけたから。」


 アースラの言っていた『悪いようにはならない』ってことがようやく実感が湧いてきた。あの時は悪態をついてしまったけど、アースラと出会ったことが僕の人生を変えるきっかけになったのは確かだ。

 そして、何も言ってくれない女神様にも今は感謝してる。僕が前向きに頑張れるのもこの世界に連れてきてくれたおかげだから。


 夕食の後、僕はメアリィを誘って柵の近くまで来た。二人で夜空を眺めたかったから。


 「街にいる時は星を見ることなんてなかったからさ、メアリィと星を見たかったんだ。」


 「うん。夜になると外に出るなってお父さまに言われてるの。星なんて見る機会はなかったわ。でもちょっと寒いね。」


 「街より冷えるね。大丈夫?」


 「平気よ。」


 「ならよかった。」

 

 二人で見上げた夜空にはたくさんの星と、地球から見えるのと同じように月があった。その月には大きな傷痕のような模様があり、その周囲には大きな粒が衛星のように浮かんでいるようだった。


 「大昔の伝説にね、たくさんの星たちが大地に降り注いだっていうお話があるのよ。何度もお母さまにねだって聞かせてもらったの。」


 メアリィが教えてくれたのは5000年ほど昔の「星降り」だった。それほど昔のことが今に伝わっているのは不思議に思うが、神殿の書物に記された話がいくつかあるらしい。

 あの月に小惑星が衝突して、その破片がこの星に無数の光の雨を降らせた。大半は大気圏の摩擦熱で燃え尽きたのだろうが、夜空を埋め尽くすほどの流星群なら見て見たい気もする。しかしながら大地に降り注いだというのが比喩では無かった場合は住民にとって厄介この上ない出来事だっただろう。


 「僕の住む星にも流星群って言ってたくさんの流れ星が見える時期があってね、とても綺麗なんだ。流れ星には願い事を3回唱えると叶うっていうおまじないもあるんだよ。」


 「素敵なお話ね。」


 「まぁ子供騙しだけどね。小さな子供は夢中になって流れ星を探すんだ。」


 そんな他愛ない話をして肩を寄せあって星を見ていた。

 その時、薄い月光に照らされた薄暗い荒野で何かが動いた、気がした。黒い影のような何かが動いているような・・・

 何かがいるような気がして周囲を探る。


 「どうしたの?」


 メアリィが僕の動きに気づいて顔を覗き込む。


 「メアリィは何か見えない?あの旗の向こう。」


 拠点の柵から200〜300mほど離れた場所に境界を示すように旗が等間隔で立てられているが、その先に何かが動いて見える。


 「何かって?もしかして、魔物?」


 「うん。何かいるような気がするんだけど。」


 「あ、うん。いるわ。少し遠いけど、動いてる。」


 「僕はここで見張ってるからテントに戻ってマスターに知らせて。」


 「わかったわ。気をつけてね。」


 メアリィがテントの方へと走って行った。

 僕は目を凝らして隅々まで探る。

 今までこの前線拠点が安全だと思ってたけど、この先は人の住めない領域なんだと思ったら一気に緊張してきた。

 魔物だとしてどれくらいいるのだろう。

 

 それから数分してマスターとハンター数人がやってきた。


 「アーサー、魔物か?」


 マスターが僕の横まで来た。


 「メアリィも見ているのでそうだと思うんですが、離れた場所なので。」


 そう言って大体の場所を指差す。


 「良く見えんな。この近くには迷宮は無かったと聞いているが、もう少し警戒範囲を広げておくか。」


 「今から動くんですか?」


 「いや。この荒野で夜間の行動は危険すぎる。明日から範囲を広げて捜索してもらうことになるだろうな。」


 魔物は迷宮から一定の範囲しか行動出来ない。核の魔力が届かない場所まではやってこないのが定説で、今まで外れたことはないという。


 「夜間の見回りは強化してもらうことになるがな。」


 ジロリとマスターは僕の顔を覗き込む。


 「ここに居るのはハンターだけだから大目に見るが夜の散歩は程々にしとけよ。」


 やっぱり怒られた。この人、過保護だよな。夜に抜け出すのがダメって、小さな子供じゃあるまいし。何をそんなに気にしているのだろう。


 その後、マスターは連れて来たハンターたちに見回りの強化と人員補充を告げてテントへ戻って行った。

 僕も戻ってメアリィに「おやすみ」を言ってテントに入ろう。



 朝になると多くのハンターが拠点内をせわしなく動きまわっていた。昨夜に見た魔物らしき影の捜索のため慌ただしく準備しているのだろう。

 僕は邪魔にならないようランニングをしていた。

 ハンターたちは行動が早いなと思った。

 ギルドで依頼を受け取って個別に活動するっていうよりも、レスキューのような組織っていう印象を受ける。

 調査潜行で迷宮に入る人数は少ないのに、前線拠点に大勢のハンターが帯同しているのはこういう時のためだった。荒野に拠点を構える以上、危険は常にある。

 僕はまだ見習いですら登録されていないので大人しくしているしかない。



 この日の捜索で新たな迷宮が見つかった。

 周囲の魔物を退治した後、規制線となる柵を周囲に張り巡らせ監視して魔物の出入りを観測するという。その間に潜行するパーティやバックアップ体制を整えるらしい。前線拠点が一気に騒がしくなっていった。


 

 数日が経ち、本命の迷宮から無事に宝玉を回収することができて街へ帰ることになった。前線拠点はどうなるのかと思ったら、不毛の大地の監視拠点として活用していくとマスターが言っていた。

 


迷宮の内部調査は主人公に直接関わりがないのでここでは省きます。一章が一括り終わったら書くかもしれません。

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