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マスターの家で思わぬ再会


 それから二日後、王宮から監査がやってきた。

 マスターは自宅の貴賓室で対応することにした。王宮からの使者を招くのにギルドでは目立ちすぎる。

 僕の存在は特殊なようで、マスターはギルド内でも隠そうとしているフシがある。

 ひとりで迷宮を攻略したこととアースラとの関わりが秘匿性を増している。

 何より異世界から来たという眉唾な事実が誰にも受け入れられるものでないからだった。

 王宮からの使者ははあくまでもマスターとの面会ということにしたいらしい。

 僕にとってはどうでもいいことだ。真新しい生活がバタバタしている中で、誰かの思惑なんていちいち気になんてできない。

 それよりも、そう。メアリィとの関係を築いていくほうに夢中になっていた。



 王宮の使者との面会にはマスターが同席してくれた。マスターから見た客観的事実を述べて僕を援護してくれたおかげで大きくこじれることはなく、最後にはマスターの監視があるならいいだろうという結論に行き着いた。


 使者が帰る直前に何か立ち話をして手紙を渡していたのが少し気になった。マスターは僕に別件だから気にするなと言っていたが、あれは何だったのだろう。


 これからの僕のことは、親を無くした孤児ということにして使用人見習いという扱いでいくらしい。使用人と言ってもマスターの家で働くわけでなく、メアリィの身辺警護が主な仕事だという。僕としてはメアリィと一緒にいられる口実になるので喜んで引き受けるがマスターはそれでいいのだろうか?

 これもまた僕を試す試練なのだろう。



 この日の夜はマスターの家に泊まることになった。

 ギルドマスターという肩書きとロベルト家の縁戚という立場もあって、マスターの家は豪華な邸宅だった。

 マスターひとりに対して使用人は20人居る。

 なかなか大きな邸宅なのだが、それでもこの街の中で10番目くらいだという。

 

 オルタの街の序列で言ってもギルドマスターのダニエルという男は10本の指に入るか入らないかの実力者だということを、僕は思い知らされた。


 「は〜。すごい家だな〜。やんなっちゃうよ。これだけでかい家に住んでて偉ぶりもしない。」


 ため息が漏れる。


 僕は巨大な権力を相手にしているのか。

 「メアリィをください。」なんて17歳のコモノが本来言える相手ではなかった。

 それでも門前払いだけは免れたのは救いだった。

 

 メアリィが僕を好きでいてくれることと、なぜかリプリィさんが味方してくれることが大きいのか。


 街を動かせる権力者相手に、納得させる実績を積まななければならない。

 昔の僕だったら戦う前に逃げてた。ゾンビ相手に腰がひけてた頃が懐かしいよ。


 アースラの言ったことは正しかった。

 迷宮攻略は僕のためだった。



 『なかなか面白い状況になっているようだな』


 どこからともなく声が聞こえた。


 「アースラ!」


 『やはりお前は他の者とは違っていたな。うまくやっているではないか。』


 「見てたのかよ。趣味が悪いよ、もういなくなったと思ったのに。でも、また話せて嬉しい。」


 『やはり面白い。今までの誰もがわれを利用することばかり考えていたが、お前だけは違っていたな。今でもそうだろう?』


 「最初は利用してやろうと思ってたよ。だけど迷宮を攻略していくうちにさ、戦友みたいに感じていたんだ。だから僕は、ちゃんとお別れするって決めてた。今でも助けて欲しいなんて思うけど、後悔はしてない。」


 『それができたのはお前が別の世界から来たからか?』


 「どうだろう?価値観が違うって意味ならそうなのかな。僕らの世界では一つのことに執着すると足元を掬われるのは一瞬だから。」


 『お前の世界を観ておきたくてな。少し話をしに来たんだがやはり面白そうだ。』


 「どんな世界を創りたいの?」


 『人間たちが己をかけてぶつかり合う世界だ。いくつもの加護を与えてどれが一番強いものかを図るなど面白いと思っていてな。まぁそれが連れ合いに却下されてな、石に封じられたわけだが。あれもすぐに出てくると思っていたらしいが、人間の欲を読み違えたということだ。』


 「ぶつかり合う世界なんて戦争になっちゃうよ。」


 『そうか?』


 「平和的に競い合うって考えはなかったの?」


 『お前の世界にはどんなものがある?』


 「競うと言ったらスポーツだったり、ボクシングやプロレスならアースラも観て楽しいかも。あとは平和的なものだとカードゲームとかかな?」


 『それらはなんだ?』


 「僕の世界の娯楽だね。ボクシングやプロレスはぶつかり合う痛い競技だけど、カードゲームはカードの能力で戦うんだ。だから人は死なない。」


 『カードとやらに加護を付与して、それそのものをぶつけ合う。人間は死なない。面白そうだな。観てみよう。われの知らぬ知識を持っていたとは、やはりお前は面白い。』


 「人間に興味は無いって言ってたのに?」


 『われを戦友だと言ってくれたからな。戦いの神としては嬉しく思うぞ。』


 「神様なのに人間っぽいこと言うんだね。」


 『お前はこの世界の者ではないからな。この地に産まれた者とは同列にはせんよ。』


 「そういうものなの?」


 『さぁな。では、われはそろそろいくが最後にお前に加護を与えよう。頑固なあやつはお前に褒美ひとつも与えてないだろう?』


 「もらったよ。特大の試練付きだけどね。」


 『あれを褒美とは言わんだろう。火種を増やしただけだ。』


 「何か起こるの?」


 『世界が動くとだけ言っておこう。』


 「前はなんでも教えてくれたのに、意地悪になったね。」


 『確定していないものを言っても面白くなかろう。われは預言者ではないからな。それより加護だ。お前自身に与えるのはあやつの意に反するからな。袋の中に腕輪があっただろう?あれに付与してやる。』


 僕は腕輪を取り出した。

 迷宮で生み出された、なんの特徴もない幅広い腕輪だ。銀製のような輝きはあるが、銀のように腐食や変色をしない。


 腕輪の内側に、文字が刻まれていく。

 見えないレーザーが文字を彫っていくみたいだ。


 『これでよい。いつでも身につけておけ。われが直接助けるわけではないが、お前が死なない程度には役立つだろう。』


 「なんて彫ってあるの?」


 『名も無き戦神の加護、だ。』


 「そのまんまだね。」


 『ああ。だが腕輪だけでは効果がない。困った時はわれの名を呼べ。アースラという名がその腕輪の加護を呼び起こす鍵となる。これがお前だけの加護だ』


 「うん。ありがとう。」


 『お前は素直に礼が言えるのだな。われのほうこそ感謝するぞ。では、さらばだ。』


 思いがけないアースラとの再会は、あっという間に過ぎ去った。

 なんだか物騒なことを言われた気がするがなんだったんだろう。


 僕とメアリィの出逢いが火種だって?

 子種すら危ういのに。


 それはそれとしてアースラから加護を貰っちゃったけど大丈夫なのかな。女神様に怒られないだろうか?

 僕だけ外されることはないよね。ちゃんと聞いておけばよかった。

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