街の成り立ちと家のしきたり
「お父さまったら、連れてきちゃったの?」
リプリィさんは呆れた顔つきでいる。
話があるからと連れて来られただけの僕と違い、話の内容がわかっているのだろう。
「ああ。こういう話は早いほうがいい。特にウチの場合はな。お前も知ってるだろ。」
「そうだけど。う〜ん。ちょっと酷よね。」
「仕方ないさ。後で知るほうがキツいもんだぞ。それに、こうなるよう仕向けたのはお前だろ。」
二人はいったいなんの話をしているのだろう。僕をどうする気ですか?
三人でテーブルを囲む。重要な話があるらしい。僕だけが呼ばれた理由は全くわからない。
「昨日のことも今朝のこともリプリィに聞いたよ。」
マスターはめんどくさそうに頭をかいた。
「お父さま。これは厄介ゴトじゃないわよ。」
リプリィさんが真面目な顔つきでいう。
「わかっているよ。別に反対ってことじゃない。ただこの先どうなるとしても、
ウチの面倒な関わりを知ってもらわなきゃならねぇって話だ。」
なんだか難しい事情がおありのようで。
「何よりメアリィはまだ子供だ。歳は15だが中身は幼いところがある。それはアーサーにも薄々わかるだろ?」
「はい。子供っぽさは感じてます。」
子供っぽさ特有の危うさがメアリィにはある。だが、それもかわいい。
「君は大人の話しが少しはわかると思ってな、酷ではあるがメアリィと付き合う前に覚悟を持ってもらわなきゃならない。」
高校生ともなれば大人の事情も薄々わかってくる。この世界よりも複雑な事情の中で生活してきた僕は、メアリィよりかは理解が持てる。
マスターの話は家系の関わりについてだった。
この街はオルタの街といって街の成り立ちに深く関わった3つの家系が存在している。まずはオルタ家、次にイグニス家、3番目のロベルト家がマスターと関わりをもった家だという。つまり、メアリィの母親の実家だ。街のあれこれを決める有力者だという。
縁戚となっているから当然、結婚相手にも口出ししてくるという。付き合うだけなら問題ないが、その先を考えた時に最大の障壁になる。
家柄、人柄、実績などで厳しい目を向けられるというから先が怖い。
マスターの時は、若くしてギルドマスターを継いだことで結婚を認められたという。
「もしもこの先、メアリィとそうなりたいなら壁は多いぞ。あの家だけじゃない。私やステファンだっている。その全てを認めさせなきゃならない。その覚悟が出来るかどうかだ。」
やべぇ。目眩がしてくる。
逃げ出したいが、メアリィは僕のことを「運命の人」と言ってくれた。ここで退いたらそんな彼女を泣かせてしまう。そしたらステファンさんに半殺しにされるだろう。
すでに退路は断たれた。
「メアリィと出逢ったことが、この世界に残る理由です。それ以外はありません。」
「迷いはないな?」
「はい。」
「は〜。いつに間にかいい面構えになっちまって、最初のオドオドしてた時と見違えたよ。」
「恋は偉大ね。」
いつのまにかリプリィさんは優しい表情に戻っていた。
「しかし、リプリィ。お前が焚きつけるからこんなこと言うハメになったんだぞ?」
「あら。いいじゃない。お父さまにだってお似合いの二人だってわかるでしょ。」
「それとこれとは別だ。」
マスターも僕らのことを悪く思ってないって?
「それからな大事なことをもう一つ言っておくぞ。」
大事なこととはアレだ。XXXだ。これはノイズにしておかなければいけないものだが、お父さまを認めさせなければアレをしてはいけない。
黙っていればバレないかといえば、メアリィはリプリィさんになんでも話してしまう。
そうなったらこの話は全て終わり。なかったことにすると脅しをかけられた。
それが一番ツライ。
僕は健全な17歳の男子ですよ。
今すぐメアリィをどうこうしたいわけじゃないよ。だけど成り行きでそうなっちゃうことも考えられるでしょ。
メアリィの柔らかいぬくもりをもう一度って思うでしょ。
メアリィの体は服で隠れていても結構いい感触があった。普段はボディラインのわかりづらい服装だったのだ!
僕は何年耐えればいいのだろう。
下心を封じられるのが一番ツライ。
話がとんとん進んでいくが、全くすんなりいかない。
3つの試練を攻略しなきゃならなくなった。
これは、エクストラハードモードだな。
オルタの街の力関係。このへんがこれから先重要になってくる。




