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ギルドマスターの執務室〜数分前〜

 私はひとり執務室に籠り日常の些細な業務をこなしている。依頼達成の報告書や入ったばかりの依頼書に目を通して担当部下ごとに書類をまとめておく。何事もなければ私の業務は部下たちが仕事をしやすいように気を気張る程度の雑用をしている。私が表に出るような仕事は厄介ごとくらいなものだ。私が雑用業務しかしていないのは変なのかもしれないが部下が優秀なので彼らに任せることにしている。


 今朝は陽気な4人のパーティが「腕試しに行くから」と、わざわざこの部屋まで顔を出したのを「頑張りすぎるなよ」と送り出し、それからは静かに書類に目を通していた。


 昼を過ぎて日も傾きかけた頃、陽気な4人が帰ってきた。


 「ずいぶん早かったんじゃないか?」


 「それがよぉ〜、迷宮に行ったはいいが入り口が潰れてんだよ。ありゃねーぜ。」


 「あぁ。俺たちゃせっかく酒のネタ作りにいったってぇのにな」


 「マスターにも見せてやりてぇからよ、急いで帰ってきたんだ。」


「これから一緒に行くかい?」


 「ん?話が見えないな。何がどうなったと?」


 「だからさぁ、潰れちまってんの。」


 「マスターが見たら目が飛び出るぜ。」


 「本当なのか?それは」

 

 まさかな。しかし厄介ごとの予感しかしない。


 「報告してくれたことに感謝する。今すぐ調査隊を組まねばなるまい。君たちも加わってくれ。」


 「おうよ。我らがマスターの頼みだ。断るこたぁねえな。」


 「それならさっき拾った奴にも声をかけるといい。まだギルドにいるだろ。」


 「そうだな。それがいい。」


 ん?待て待て。さっき拾った奴ってなんだ。誰を拾ったと?


 「そういや、あいつ、なんで一人で歩いてたんだ?訊きそびれたな。」


 ワッハッハ


 どんな時でも陽気でいられる彼らが羨ましかった。


 これは厄介ごとだ。


 何が起こっているか確かめなければ何も始まらないが、あれらの迷宮が生まれてから150年。未だかつてなかったことが起きている。入り口とはいえあれも迷宮の一部なのだ。ただ潰れただけとは考えられん。人員を集めなくては。


 「私は、これより緊急招集をかける。君たちもー」

 と言いかけた時、


 「マスター!ギルドマスタ〜」


 勢いよくドアが開かれて受け付けのミランダが血相変えて飛び込んでくる。いつも上品で落ち着き払っている彼女にしてはあり得ないほどの取り乱しかた。


 「マスター!大変です。私には手が負えません!」


 膝をついて両手で頭を抱え込んでしまった。


 何が起きている?厄介ごとがまたひとつ。今日はなんて日だ!


 ミランダを落ち着かせ話を聞く限り、迷宮産の上級品が複数持ち込まれたという。  

 

 それもひとりの新顔だと?


 ありえないことが二つ起こっている。いや、4人の拾ったという者がその新顔ならば二つはつながる。

 私がその者に会って確認しなければならない。


 「私がミランダの代わりにその者の対応をしよう。その代わり4人は緊急招集の手配をしてくれ。迷宮の現状調査ならびに周囲封鎖だ。鐘を鳴らしていい。人員を集めて調査隊の編成を頼む。脅威判定はB、緊急度はSだ。」


 4人が部屋から出て行き、残ったミランダに声をかける。


 「君はこのまま下がって休んでいなさい。あとは私に任せて。」


 受け付けのお姉さんには名前があった。

 よかった。

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