ハンターギルド
受け付けらしき女性のいるカウンターへ向かう。
「どうされました?失礼ですが、初めてのかた、でいいんですよね?」
「はい。あの・・・換金をしたくて」
「ギルド証はお持ちでないですよね?それでしたらこちらに記入してしてください。」
紙と黒い棒が出てくる。
棒は炭みたいだがチョークのようでもある。それを持とうとしたけど紙を見て躊躇する。
「あ、あの・・・」
僕にはこの世界の文字が読めなかった。
会話が成立することに安心して文字の読み書きには気がまわらなかった。
僕の顔と紙を交互に見て、すぐさま察したらしく、
「では先に鑑定からしましょう。鑑定してから換金までは時間がかかりますので、そちらはその間に処理しましょう。」
なんとも手際が良い。
現代日本と違って読み書きができないことはここでは珍しくないのだろう。
紙の横に受け皿が差し出された。紙と同じくらいの大きさだ。
「あの、たくさんあるのでこれではちょっと」
言い淀むと彼女は顔に手を当ててしばし考える。
「でしたらここでは目立ってしまいますね。別室を用意します。」
カウンターの裏側へ促され彼女についていく。
狭い廊下の先から話し声が聴こえる。
何を話しているかまではわからないが、4人がギルドマスターと話しているのだろう。
少し歩いて
「こちらへどうぞ」
と小部屋へ通される。
テーブルと両側に椅子があり、僕らは向かい合って座る。
彼女は終始笑みを崩さずテキパキと対応してくれる。
僕は彼女の仕事ぶりに安心しきっていてホッとしていた。
テーブルの上に不思議袋を置く。
迷宮で入手した品物を取り出していくのだが、全ては出しきれないのでテーブルにのるだけ。
彼女はポケットから小さな小物入れを出し、そこから柄のついていないルーペを取り出すと、そのルーペ越しに品定めを始めた。
「これらはあまり見ない品質ですね〜。」
「そうですか。」
いいのか悪いのかわからない。
「この品々はどちらで入手されましたか?」
「迷宮です」
「どちらの迷宮でしょう?それとも、今まで発見されていない迷宮なのでしょうか〜。」
真剣な顔でひとつひとつ見ながら訊いてくる。
う〜ん。どう言えばいいだろう。
あ、さっきの。
「先程、ギルドマスターと会いに行った4人と、同じ場所といえばわかりますか?」
「先程の4人ですか〜?いつも陽気で賑やかな方達ですね〜。その方達と同じとなると〜、今日行かれたのは〜」
真剣に品定めを続けながら話すので口調はゆっくりであった。
それも、ここまでは。
手が止まり、ガバッとこちらを向く。
「彼らが向かったのは〈腕試しの迷宮〉ですよ?〈8つの迷宮〉のひとつ、それらは全て未達の迷宮です。これほどの品々を持ち帰った方は今までにいません。いったいどれほど潜ればこれほどの、コレホドノ・・・」
信じられないといった顔で興奮している。
「本来、これほどの品は迷宮最奥からひとつあるかないかのものです。それをひとつの迷宮から出るなんてありえないんですよ〜」
彼女は頭を抱えて天を仰ぐ。
「マスター。そうだぁ、マスターにぃ。これは、マスター案件です!」
と言って部屋を飛び出してどこかへ行ってしまった。
それほど慌てることなのか。
僕が無知なせいで、ことの重大さに気づけるはずもなく。




