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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

動機はきみに似合いのドレスを贈りたいから

作者: 鈴川桜雪


 誰が白薔薇、散らせたの?

 ――それはわたしと黒百合、話した。



「冤罪だわ!」

 自室に閉じこめられた、レティシアはひとり虚しく、部屋の中で()えた。

 ことの起こりは珍しく、婚約者から『舞踏会に出ろ』と城から命令じみた招待状が届いたことから始まる。

「お嬢さま。殿下からお手紙が届いたのですが」

「捨てておいて」

 レティシアの言葉にメイドは倒れるように、床によろけると、自身の顔を両手で覆った。

「も、もしも、私が殿下からの手紙を破棄したなんて知られたら、お給与の高い仕事を失うだけではなく、処刑台に(のぼ)るかもしれません。それでも、お嬢さまの為というのでしたら、わ、私なんかのちっぽけな命なんて」

 メイドが今にも処刑台で首を()ねられそうなオーラを漂わせていることに、レティシアは軽く、咳払いをする。

「もぉ! 受け取ればいいんでしょう!」

「はい、ありがとうございます! お嬢さま」

 メイドはレティシアの言葉に、両手を顔から離す。涙声だったのにも関わらず、泣いた痕跡すら見当たらない。家で雇われているメイドたちが演技派だったことを見抜けなかったレティシアの負けだ。

 だからこそ、レティシアはメイドたちから、『お嬢さまのお顔は怖いのにお優しい』なんて評価を受けているのだろう。

 今までの悲壮な雰囲気をあっさりと変え、立ち上がったメイドはレティシアに一礼すると、元の仕事へと戻っていく。

 レティシアは手紙の端を摘みながらも、重たいため息を吐いた。

 舞踏会に参加したとしても壁の花よろしく、レティシアは婚約者である第二王子ステファンがほかのご令嬢たちと仲が良い姿を見せつけられるだけだろう。

 レティシアの不機嫌さを勘違いしたステファンの口元が緩むたびに、持っていた扇でその横顔を叩きたくなったことは一度や二度のことではない。

 何故か、婚約者は自分が彼のことを好きだと思っているようだが、どうにかして、この婚約が流れないだろうかとレティシアは常々、思っていた。

 奴の好きなところをあげろ、と言われたら、考えに考えぬいて口にできるのは、懐かしさを覚える瞳の色だけだ。

 夜、流れる星にまでぶつくさと願いを呟いていたところ、その姿をメイドに見られた為か、お嬢さまがおかしくなってしまったと、翌日、医師を呼ばれた為、星には願わなくなってしまったけれど。

 そもそも、この婚約は王家から侯爵家に打診があった話であり、父にしても浮かない話ではあったが、断れなかったようだ。

 招待状を見なかったことにしようと、レティシアは洋燈(らんぷ)に手紙を焚べようとしたが、いつから自分の背後にいたのだろう。

 一連の行動を、レティシアは執事に見られていた。

 幼い頃から父の代わりにレティシアの面倒をみていた執事は握っていた封筒を手にする。封蝋(ふうろう)を見るなり、目を細めた。

「お嬢さま、なにをしていらっしゃるんですか? おやぁ、最近、目が見えにくくなった爺の見間違えかもしれませんが、これは殿下の紋章ですよね?」

「あ、あらぁ。そうだったかしら」

 執事の言葉にレティシアは目を泳がせる。

 執事は口元の皺を深くしながらも、レティシアの嘘を見抜いてしまうと、メイドたちを急かして舞踏会の準備をさせ、馬車の中へと押しこんだ。

「「いってらっしゃいませ」」

 執事とメイドたちに見送られ、嫌々ながらも、参加したくもなかった舞踏会に、レティシアは参加することになった。

「オルガド家。レティシアさまのご入場です」

「遅かったな! レティシア・オルガド‼︎」

 入場するやいなや、ステファンは彼の後ろで子うさぎのようにか細く震えてみえる令嬢に対し、レティシアが行ったとされる罪状を読み上げていく。

 しかし、レティシアには全く、身に覚えがない。

 そもそも、彼の服裾を握っている、可愛らしい令嬢の階級も名前すら知らなかった。

「よって、本日を以て、レティシア• オルガドとの婚約を破棄する!」

 長々とレティシアの手により令嬢が傷つけられた行為を読み終えたあと、ステファンはレティシアに婚約破棄を言い渡した。

 会場にはステファンと彼の親しい貴族子息や令嬢たちしか呼ばれていなかったことを見れば、レティシアは彼のわがままに付きあわされたようだ。

 婚約破棄をするなら、互いの両親を呼び出せばよかったのにと思うものの、この婚約破棄は王の承諾を得ていない一方的なものなのだろう。

 婚約破棄についてはレティシアも大歓迎であった為、内心の喜びを表情を隠すため、顔を引き締めたが、ステファンたちの顔色は揃って蒼白になった。

 レティシアは一般的に美人の部類に入るが、父譲りの厳格な顔は凄味があるらしい。

 不機嫌になったり、怒っているわけではないのに、よく令嬢たちからも『怒っていらっしゃいますの?』と声をかけられたり、視線があっただけで逃げられてしまうことが度々、ある。

 レティシアの顔を見て、うっとりする変わり者以外は大体、皆、同じ反応だ。

「つ、連れていけ‼︎」

「レティシアさま、すいません。城の外に馬車を呼んででいますので」

 ステファン付きの騎士が小さな声で、レティシアに耳打ちをする。

「……あなたも大変ね」

 城から追い出されたレティシアは、次の日、自分に降りかかる災厄も知らず、穏やかな眠りに就いた。

「騒がしいわね」

 レティシアが目を覚ますと、慌てたメイドが入ってくる。

「お、お嬢さま! 大変です‼︎ 殿下が毒でお倒れに」

「殿下って、どの……」

「お嬢さまの婚約者のステファンさまです!」

「元ね。それで、どうして、こんなに騒がしいの?」

「そ、それが、婚約破棄の腹いせにお嬢さまが殿下に毒を盛ったと噂になっているようで」

「は、はぁ⁉︎」

 婚約破棄をされただけの会場でいつ、元婚約者に毒を盛ることが出来たのかと、噂を流した元凶を問い詰めたくなる。

「旦那さまから状況が分かるまで、お部屋にいてくださいとの言伝を預かっています」

 婚約破棄をされ晒し者になった翌日。レティシアは婚約者だった第二王子の殺害未遂容疑で、こうして、自室へ軟禁されてしまった。

 レティシアの父が侯爵であり、王家に多大な恩を売っていなければ今頃、城の牢屋に問答無用で連れて行かれていただろう。

『父さまに似たから、こんな悪人顔になったのよ!』

 日頃からそんなふうに父に対して、悪態をついていたレティシアは初めて、彼の娘であることに感謝した。

「お嬢さま。高貴なご令嬢らしくありませんわ」

 そういえば、こいつもいたんだったとレティシアは紅茶を淹れるメイドを見据えた。

 城からレティシアの見張りとして派遣された、皇太子付きの伯爵家の令息だ。

 毒味の代わりか、紅茶を一口含むと、レティシアにカップを差し出してくる。珍しく、大声を出したことで、喉が渇いたレティシアはカップを手にとった。

「前から不思議に思っていたのだけど。リュシアン、あなたの〈それ〉は趣味なのかしら?」

 今は自家のメイド服を見にまとっている令息は、少女にしかみえない可憐な微笑みをレティシアに見せると、スカートを(ひるがえ)した。

「だって、僕って可愛いし」

「まぁ、そうね」

 リュシアンの発言に、レティシアは素直に頷く。

 今はメイド服に合わせる為か、背中まである髪を纏めているが、彼は白銀のストレートの髪にサファイアを思わせる瞳を持っている。

 幼いころ、父に城に連れて行かれたときには、皇太子のクロードと彼にレティシアはよく遊んでもらっていたが、初めて、リュシアンに出会ったときは、彼のことを等身大の人形だと思いこんでいた。

 クロードもそんなレティシアをからかおうと思ったのだろう。

『シア。ふたりだけの秘密だよ。この子は喋ることができるお人形さんなんだ』

『お人形さん、シアとお話ができるの?』

 人形はクロードに目配せをすると、レティシアに頷く。

『こんにちは。可愛いお嬢さん』

 目を輝かせたレティシアにクロードは微笑むと、自分が真実に気づくまで、彼が人間だと教えてはくれなかった。リュシアンもそんなクロードにあわせてか、自分の趣味か、レティシアのお人形さんごっこに、つきあってくれたという黒歴史がある。

「僕には誰より可愛い服が似合うんだから、着ないと損じゃない? 並のご令嬢たちより、可愛いだなんて罪だよね」

 彼は通っていた学園でも女子の制服を着て、皇太子の婚約者を狙う肉食系の子女たちの戦意をことごとく、奪っていったらしい。

『この中に僕よりも綺麗な子や可愛い子っている?』

 そう言って、自尊心が高い子女たちの矜持(きょうじ)すら壊したのだから怖いとレティシアは思う。

「お兄さまはなにも言わないの?」

 リュシアンと話していたことで、つい懐かしい呼び方をしてしまったレティシアは口に手を当てる。彼もふたりきりだったからか、とくに注意はしなかった。

「殿下も僕の可愛さを認めてるからね。婚約者候補の隣国のご令嬢が、僕より可愛かったらいいんだけど。それより、シアは本当にステファンさまに毒を盛ったの?」

 リュシアンは小机に頬杖をついて、ニコニコとレティシアを上目遣いでみつめてくる。

「どうして、たかだか婚約破棄をされたことで、私があのバカを葬らなくてはいけないの! 私が手を出すとしたら証拠なんて残さないわ!」

「まぁ。シアはそういう子だよね」

 リュシアンに顔を見つめられたままでいることに、レティシアは呆れて、ため息を吐いた。

「……あなた、本当に私の顔が好きね」

「うん。僕は可愛いものや綺麗なものだけじゃなく、人も大好きだからね。それより、シア。この服に着替えてくれない?」

 リュシアンが渡してきたのは、普段、着ている豪華なドレスよりも品質が多少、劣るものだ。

「メイドを呼んでちょうだい」

「メイドなら、此処にいるじゃない」

 自身を指差したリュシアンに、レティシアは傍にあったくまのぬいぐるみを投げつける。リュシアンはあっさりぬいぐるみを受けとると、よしよしと撫でた。

「冗談だよ。着替えたら、ベルで教えてね」

 ヒラヒラと手を振って去るリュシアンの代わりに、メイドが入ってくると、彼女はその背を追いかけつつ、悩ましいため息をついた。

「お嬢さま。お城仕えの方って、美少女ばっかりなんですね」

「……そうね」

 知らない方が幸せだろう。

 メイドの言葉を聞いて、レティシアは頭を抱えたくなった。



 黒髪をおさげにして、分厚い眼鏡をかけたレティシアは、今度は自分のお古のドレスを着ているリュシアンに顔を曇らせた。

「リュシア……」

 リュシアンは黙るように、レティシアの唇に人差し指を当てると首を振る。

「ここでの僕はルーシーね」

 レティシアはリュシアンの意外に無骨な指を握った。

「どうして、あなたが私のお古のドレスを着てるのよ!」

「これってきみのドレスだったんだね。もっと派手な色の方が、レティシアには似合うのに」

 自分には似合わなかった無彩色も、彼が着れば可憐さを引き立たる。

 レティシアには派手な色の方が似合うと、専属の仕立て屋からも言われていたが、ステファンから名目上、贈られてきたドレスは自分には似合わない色ばかりであった。

「私が赤や紫色のような派手な色を着ると、隣にいる自分が目立たなくなるんですって。だから、その色は着ないようにって言われていたの」

 普段から自分の着るものに興味がないレティシアは、とくに不満もなく、地味な色でドレスを作って貰っていた。ドレスの色で揉めるより、自分が妥協(だきょう)した方が楽だと思ったからだ。

「ふぅん」

「ルーシー?」

 どこか、リュシアンは不満気だ。先にレティシアを馬車に乗せると、彼は自分の隣に腰掛ける。

「私、部屋から出たらいけないんじゃ……」

「僕と一緒なら大丈夫だよ。シアには、会って貰いたい子がいるんだ」

 馬車から降りた小さな屋敷は、子爵家のものだ。

 リュシアンがノッカーを鳴らすと、やつれた姿の男性が頭を下げた。

「殿下の代理人だ。令嬢に会いにきた」

 リュシアンが手紙についている紋章をみせると、男性は縋るように床にひれ伏す。

「こ、このたび、娘のしでかしたことは私たちが責任をとります! だから、どうかどうか……娘を助けては頂けないでしょうか?」

 どういうこと、とレティシアがリュシアンに視線を向けると、彼は首を振る。

「子爵。僕はあなたを裁くために来たわけではなく、彼女の状態を確認しにきただけです。そして、あなたのお嬢さんが助かったとしても、結果は同じことでしょう」

 結果が早いか、遅いかの違いだと、リュシアンが告げると子爵はそのまま、動かなくなってしまった。慌てた家令に連れられて、子爵家はそのまま、連れられていく。

「ご案内いたします」

「きゃあ!」

 気配を感じなかったメイドに声をかけられ、レティシアはつい、リュシアンの腕を掴んでしまう。

 柔らかさのない腕に真顔になったレティシアは思わず、さすってしまった。

「急にどうしたの?」

 不愉快さもなく、リュシアンはレティシアの行為に笑う。

「あなたの柔らかな顔とは違った腕の硬さに驚いたの」

「まぁ、鍛えてるからね。ほら、行くよ」

 メイドの背中を追いかけながらも、レティシアたちは令嬢の部屋へと向かう。扉を開いたベッドには令嬢が辛そうに横たわっていた。

 舞踏会では可憐な少女であったのに、今は皮膚が赤黒くなっており、ナイトドレスから隠れていない腕には、水膨れが見られる。

「彼女、どうしたの?」

 近づこうとしたレティシアの手首を掴んで、リュシアンがとめる。

 彼女の姿を遠目からみて、リュシアンは首を頷いた。

 念の為、口周りを覆うようにと、レティシアはリュシアンからシルクのハンカチを渡された。

「やっぱり、ステファンさまと同じ症状だね。同じ毒が使われてる」

「彼女がステファンに毒を盛ったってこと?」

 婚約破棄の場に連れてきた令嬢だ。自分の後には彼女を婚約者として据えることを、ステファンは考えていただろう。

 子爵はこの状態の娘を助けてくれと願ったが、あんなのでも王子の暗殺未遂だ。彼が言った通り、結果は同じになっただろう。

「どうやって、ステファンに毒を飲ませたのかしら」

 毒味役もいるし、彼自身も王族として、日頃から気をつけていたはずだ。

「考えられるのは、彼女が纏っていたドレスに毒を忍ばせていたってことだね。肝心のご令嬢がこうじゃ、真相は分からない。でも、シアの容疑は晴れそうなんだから、良かったんじゃない?」

「……そうね」

 どこか腑に落ちないものを感じつつ、レティシアは頷いた。どうして、リュシアンが自分に令嬢を会わせたのかが分からなかったからだ。

「嬉しくないの?」

「嬉しいというより、複雑なの」

「シアは優しいね」

 いいこ、いいことぬいぐるみにするように、リュシアンに頭を撫でられて、レティシアは膨れ面になる。

 彼と話している内に、胸に抱いた違和感を忘れてしまっていた。



「誰が白薔薇、散らせたの?」

 庭に出ていた皇太子は棘がついたままの白薔薇を摘むと、リュシアンに手渡す。

「それはわたし、と黒百合、話した」

 リュシアンは渡された白薔薇を握り潰すと、地面へと落とした。リュシアンの手のひらは棘で血まみれになっていたが、彼はそれを気にした様子もない。

「殿下、このたびは僕のわがままを聞いてくださって、ありがとうございました」

 リュシアンに頭を下げられ、クロードは軽く、首を振る。

「シアは私にとっても可愛い妹みたいなものだしね。今回の計画を早めた理由も、シアが関わっているんだろう?」

 クロードの言葉にリュシアンは苦笑を浮かべる。

「だって、シアにはあの子に似合うドレスを着て欲しかったんです。あんなドレス、僕なら贈りません」

「実の兄に毒を盛ってもか」

「ええ。まぁ、まだ命があるだけ、僕って優しいでしょう? シアはなにも悪くないんだよって、令嬢とも会わせましたし」

 それは自分に疑いの目をかけられないためだろうという言葉をクロードは飲みこむ。

「あんな廃人になるくらいなら、亡くなった方がマシだと思うが」

「そうですか?」

 不思議そうなリュシアンに、クロードはため息をつく。 

 彼とって、大切なのはリュシアンを育ててくれた伯爵家の人々とレティシアだけで、かろうじて、自分が入るかどうか、クロードには分からない。

 ステファンには知らされていなかったが、リュシアンは彼の双子の弟だ。

 この国では双子の存在は不幸を呼ぶとされ、占術者によって選ばれれば、ひとりは赤子の内にいない存在(もの)となった。

 ステファンとリュシアンは幸いにも、瞳の色以外は似てはいない双子であったため、自分の妃に甘かった王がふたりとも生かす選択をする。

 その結果、王には似ていない、リュシアンが伯爵家の養子として出された。

 皇太子はもうひとりの自分の弟に気遣い、こっそり城へ呼び出していたが、リュシアンがそこでレティシアを見初(みそ)めるとは思ってもいなかった。

 レティシアがステファンの婚約者に決まったとき、リュシアンは彼女が幸せになるならと自分の想いを隠し、彼女を見守ってきたのだ。

 しかし、ステファンがレティシアを軽んじていると知ったリュシアンは、クロードに自分が第二王子である方が国にとっても有益になることを説いた。

 実際、王族という名を掲げて、やりたい放題するステファンに与えられたチャンスがレティシアとの婚約だったのだ。ステファンが改心すれば良し、しなければ彼に待っているのは廃嫡しかなかった。

 こうして、ステファンを廃嫡させ、リュシアンが王族に返り咲く計画が始まった。

 ステファンを排除するため、彼が好きになった子女たちにリュシアンは彼名義で毒の原料で作られたドレスを贈り、誰にも気づかれないよう、双子の兄に少しずつ、毒を纏わせた。

 きっと、クロードが知らないところでも、裏から手を回しているだろう。

「これから、お前はどうする?」

「もちろん。僕の瞳のドレスを持って、求婚しにいきます」

 クロードはリュシアンの気持ちを知って、わざとらしい微笑みを浮かべる。

「シアに断られたら? あの子の初恋は私だぞ」

「断られるなんて、そんなことはありませんよ」

「どうして、分かる?」

「こんな可愛い僕を振る子なんていないでしょう?」

 お手上げだとばかり、クロードは手を上げた。

「でも、念のため、お兄さまは早く、結婚してくださいね?」

 リュシアンに上目遣いで懐かしい呼び方をされた、クロードは困ったように笑った。

「もちろん。私は黒百合には、散らされたくはないからね」

 本年、初めての短編作品です。今年もよろしくお願いします。そして数多くある作品の中からお読み頂き、有難うございました!少しでも楽しんで頂ければと思います。

 よろしければ、ブクマや評価を頂ければ、嬉しいです。

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