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混沌都市のデカイ姫騎士と”推し活”異世界人達  作者: ライラック豪砲
第一章 混沌都市のデカイ姫騎士

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第五話 姫騎士とダンジョンの真相

用語


・総統歴

 エルフ帝国で用いられる紀年法。国家指導者”総統”の誕生年を元年としている。

 

・王国歴

 竜王国建国を元年とした暦。一年を黄竜、赤竜、白竜、青竜の四つに分割し、それぞれに一の月から三の月を割り振っている。「黄竜一の月、第一日」の様に記す。


・翻訳魔法

 元々異世界人が多かった竜王国で用いられていた魔法。任意の範囲にかける事で、範囲内において意思の疎通や文字の読解に補助が入る。

 混沌都市にかかっている翻訳魔法はかなり強力なもので、どんな異世界人でも意思の疎通に困る事はない。


・強襲揚陸艦

 銀河連邦が保有する、衛星軌道から地上に降下して地上戦力を展開する航宙艦。


・海兵隊

 銀河連邦軍内で主に衛星軌道からの地上降下作戦に従事する部隊で、襲撃戦闘のエキスパート。

  

・憲兵隊

 銀河連邦軍内で治安維持や犯罪捜査に従事する部隊。

「そんなに睨むなよ魔王様」


 大佐はそんなエリゴスの眼光に臆することなく、逆に煽るように言った。

 姫騎士と会話する時とは打って変わり、圧のこもった低い声だ。

 それに対して、エリゴスはわざとらしい大佐の呼び間違いを無視できずに、明確な怒気を言葉に込めた。


「私は公爵……父とは違う……愛好家気取りのババアがコロンポンに馴れ馴れしくっ!」

「貴様……掻っ捌いてコロちゃんの手袋にしてやる!」


「はいはいはいはい!」


 いきなり姫騎士を間に挟むようにして始まった魔公爵とエルフの衝突に対し、ジャングが空っぽになった鍋をオタマで叩きながら割って入った。

 工場内の視線が肥満体のアウトローに集中する。

 そうしてジャングは大佐の近くで狼狽える姫騎士の隣にやってくると、足元に鍋を勢いよく叩きつけた。


「この忙しい時にアホな事で喧嘩してんじゃあねーよ。とっとと本題に入れ!」


 ジャングが唾を飛ばしながら叫ぶと、大佐とエリゴスはしばし沈黙した。


「「だってこいつが……」」

「じゃかしい!」


 ジャングの一括によって、ようやく二人は争いを一時中断した。


「それで大佐、何が分かったの?」


 本題に戻り姫騎士が尋ねると、大佐は笑みを浮かべ甲高い声で応じた。


「実は昨日カル妻人(さいじん)を助けてもらった後にね、調べたんだ。あんな強いアウトローが街で私たち(エルフ軍)に喧嘩を売るなんておかしいと思ってね。そうしたら……」


 大佐はポケットから一枚の書類を取り出した。

 姫騎士がそれを受け取って見てみると、そこにはタイプライターで打たれたエルフ文字がびっしりと並んでいた。

 詳細に読み込むためには辞書を片手に読み解く必要があるが、大まかな概要ならば混沌都市にかけられた翻訳魔法ですぐに理解できた。

 そこに書かれていたのは、ダンジョン封鎖問題に対するエルフ軍内の対策会議の議事録だった。


「これ……」

「日付は総統歴180年10月、コロちゃん的に言えば王国歴999年青竜一の月。つまり十日くらい前ね」


 街中でのトラブルが増え始める数日前だ。タイミングとしてはあっている。

 姫騎士は文章を続けて読んでいく。


 曰く……。


 十日前。

 エルフ兵二人とアウトロー一人、魔王軍の骸骨騎士の四名がダンジョン地下七階を探索している最中。

 正体不明の四人組に襲撃を受けた。


 相手の武器は剣や弓矢。

 それに見た事もない魔法で攻撃を加えてきて、かなりの練度を誇ったという。

 それに対してエルフ兵たちのパーティーは固定されたメンバーではなく、冒険者ギルドで当日依頼を受けて組まれた急造パーティーだった。

 そのため連携に欠け、奇襲も相まってかなりの苦戦を強いられた。


 その後骸骨騎士の撃破によりパーティーが敗走。

 そしてそのパーティーがやられたのを機に、同様の襲撃を受けるパーティーが続出した。

 そうして追い出されるように冒険者たちがダンジョンから脱出を図ると、次いで起きたのがモンスターの暴走……そうとしか形容できない行動だった。


 通常ダンジョン内のモンスターはある程度固定された範囲や階層を徘徊するのを常とするが、この時モンスターたちはまるでダンジョン深部から地上を目指して一目散に疾走してきたという。


 こうして、モンスターの事実上の追撃を受けた冒険者たちは総崩れとなった。


 その後連絡を受けた冒険者ギルドによって、ダンジョン周辺の掃討依頼を受けたパーティーがやってきた頃には、生半可な戦力ではダンジョン内に入れない状況になっていた。

 無数のモンスターが入り口付近を徘徊していたからだ。

 

 こうなると、冒険者だけでは対処できない。

 騒ぎを大きくしないためにもエルフ軍の重火器は使えず、結局武帝が視察から帰ってくるまで事態を放置する事になり……今に至っている。


 これが今回の事件のあらましである。

 

(けれども、これだけじゃエリゴスの疑いが晴れたわけじゃ……)


 そこまで姫騎士が考えた所で、最後に書かれた補足説明が目に入り、思わず息を呑んだ。


『※尚、最初の襲撃者に関しては装備や魔法の特徴から竜王国人の疑いが濃厚である。』


「……なるほど。妙に情報が流れてこなかった原因はこれか……私たちは、疑われていたんだ」


 姫騎士は苦々しく呟いた。


 現在の混沌都市の状況は、列強と呼ばれる勢力の均衡により一応の安定を見ている。


 銀河連邦、エルフによる第三帝国、武帝軍とアウトローたち、そして勢力は小さいが正統性を持つ自治教会。


 この状況下で、唐突に表れた竜王国人による武装集団が騒動を起こした。

 この情報は自治教会の立場を危うくし、均衡を崩す劇薬になりかねないのだ。


「武帝さんを待って事を起こしたいっていうのもそう言う事か。あの人なら口は硬いし、火器を使わないから銀河連邦にもバレにくい。本当に竜王国人が犯人でも情報を隠蔽できる……か」

「……コロンポン。ちなみにだけど……自治教会やあんたは本当に関わってないのよね?」


 姫騎士が呟いていると、エリゴスが尋ねた。

 姫騎士は一瞬ムッとするが、状況から言えば当然の疑問に唇を噛んだ。


「……私は関わってない。自治教会の方は分からないけど、何にも利が無いから違うと思う。あの守銭奴の神官長が無意味な事はしない、と思う」


 結局のところ姫騎士にも情報が回ってこなかったのは、エルフ軍やアウトローたちから彼女も疑われていたのだ。

 

(竜王国人が事件に関係していて、自治教会に利が無いならそうなるか……けど、だとすると襲撃者は誰なの?)


「大丈夫コロちゃん、私は分かっているよ。君がこの街の治安を乱すような事をするはずがないことを……だからこそ、これを持ってきた」


 大佐はそう言うと、再びポケットから紙を取り出した。

 こちらはむき出しの先ほどのものとは違う、きちんと封筒に入り封がされていた。


「大佐……これは?」 

「依頼書さ。エルフによる第三帝国混沌都市駐留軍司令部からの正式な、ね。先の魔物暴走時、数人のエルフが行方不明になってる。彼女たちの捜索を治安騎士団に依頼する。場所はもちろん、ダンジョン内だ」


 姫騎士は驚きを露にした。

 ダンジョン内は銀河連邦以外の組織にとっては重大な稼ぎ場だ。

 銀河連邦や治安騎士団の手が入る事は以前から明確に嫌がっていた。

 それをこうもあっさりと方針転換するとは……。


 すると、驚く姫騎士の背後でエリゴスが呟いた。


「なるほどね。銀河連邦にバレたのか……」

「……ご名答」


 大佐は苦々しい口調でそれを肯定した。


「調査中に連絡が入った。混沌都市周辺での治安悪化及び騒乱に対し情報提供を求める、とね。こうなるとこの後は早い。すぐに強襲揚陸艦と海兵隊が出張ってくる。そうなればダンジョン利権は連中のものだ」


 銀河連邦は確かに動きが鈍いが、ひとたび動きだせばその速度と力は圧倒的だ。

 そして、ひとたびそうなれば混沌都市の均衡は崩れ、今の平穏もどうなるか分からない。


「大佐、行くよ。私、ダンジョンに行くよ!」


 封筒を握りしめて姫騎士は叫んだ。

 一つの勢力が混沌都市を支配する事態は、姫騎士も避けたい事態だからだ。


 しかし、ジャングはそれに対して異議を唱えた。


「だがよお姐さん。パーティーはどうするんだ? いくら姐さんが強くても、ダンジョン探索にはパーティーを組まねえと……。変なトラップに引っかかった時誰が助けるんだ?」


「それは……パトロール班から何人か……」

「あいつらじゃ無理だろ! せめて戦闘で支援に入る実力者がいねえと……だが、今の治安状況じゃ無理だぜ」


 ジャングの言う通り、治安騎士団から人員を抜き出してダンジョンに潜るのは無理だ。

 姫騎士、大尉、ジャング。

 ここに事務員や隣の孤児院の職員から応援を出せば、都市内にはパトロール班しか残らない事になる。

 そうなれば、連日の実力者による事件に対応できなくなり、瞬く間に都市の治安は終わる。


 その上、そうなれば銀河連邦は喜んで憲兵隊を送り込んできて、結局はダンジョンを放置するのと同じことだ。


「……コロンポン、わたし……」


 小さな声でエリゴスが何事か呟くが、その図体を見て誰もがスルーした。

 全長5mの魔人が入るには、ダンジョンは狭すぎる。

 ましてや、反社会的勢力が騎士団長と一緒に行動するのは無理だ。


「コロちゃん、私がいくよ」


 ぎゅっと。

 姫騎士の両手を握りながら大佐が言った。

 姫騎士の背後でそれを見るエゴリスの表情は凄まじいものだったが、誰もが見て見ぬふりをした。


「いいの? 大佐の立場が悪くならない?」

「これは軍からの制式な命令だから大丈夫だ。現地治安機関の監視を行い、不用意な事態に備えよ、ってね」


 そう言って、大佐は残った左目を閉じた。ウィンクのつもりらしかった。

 ウィンクは隻眼ゆえに瞬きにしか見えなかったが、姫騎士は歓喜のあまり大佐の手を強く握り返した。

登場人物


・骸骨騎士

 人間のガイコツが甲冑や刀剣で武装した魔物。人間の死体が魔力で自立稼働するいわゆるアンデットだが、現在混沌都市にいる者たちははっきりとした自我を持っており会話も出来る。



と、いう訳で次回よりダンジョンアタック開始です。

中々閲覧数が伸びませんが、まあ練習作ですのでのんびり行きます。

少ない読者のみなさん、どうか応援よろしくお願いします。


次回更新は4月19日の予定です。

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