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混沌都市のデカイ姫騎士と”推し活”異世界人達  作者: ライラック豪砲
第二章 混沌都市誕生の秘密

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第十六話 姫騎士とエルフとの出会い―5

「エルフの王……アナベルではないか」


 場違いな感情を抱く武王とアナベルに、唐突に声がかかった。

 尊大な口調だが、やや舌足らずな幼い少女の声。


 声のした方に全員が目をやると、その主は寝間着の少女だった。


「サクロ様!?」


 騎士の少女もアナベルたち同様、驚きつつ背後の少女に目をやった。

 武王と名乗る巨漢だけは首をかしげたが、名を呼ばれたアナベルはそれどころではなかった。

 寝間着の少女が何者か、必死に頭を巡らせつつ見つめた。

 だが、アナベルが答えに達するより早く、少女が答えを口にした。


「よい、アナベルよ。今は時間がない。簡潔に言う。今喋っているのはお前が知る皇帝ファーリュナス……その魔導プログラムだ。この寝間着の少女は、プログラムを運ぶ魔力の塊だ」

「なっ!? サクロ様が!!」

「陛下……まさか、そんな!?」

「むぅ……」


 騎士の少女、アナベル、武王が三者三様に反応する中、少女が言葉を続けた。


「このプログラムの目的は一つ。時空竜……あの巨大なトカゲが復活した際に倒す手段を現地人に与えることだ。あらかじめ、時空竜の封印が緩み時空が乱れた場合、この魔導プログラムが異世界人を偽装して顕現するよう仕込んでおいた。だから、姫騎士コロンポンよ、この少女が消えても悲しむ必要はない」

「サクロ様……」

「陛下……」

「コロンポン……可憐な名だ」


 場違いな武王の発言に、アナベルが眉をひそめたその時だった。

 背後……トカゲの方角から、また強力な魔力の高まりを感じたのだ。

 アナベルが振り返ると、トカゲが口に魔力を集め、練り上げていた。

 先ほどの熱線の数倍はあろうかという、圧倒的な魔力量だった。

 

 炎上する都市に、時空竜の咆哮が響いた。

 焼けた瓦礫と魔力の波動が、空気を震わせた。


「……猶予はない。今、このプログラムの魔力をコロンポン……この騎士の少女に譲渡する。アナベル、君はコロンポンを支え、時空竜の額に彼女を触れさせてプログラムを作動させるのだ」


 そう言った瞬間には、寝間着の少女の姿は掻き消えていた。

 全員が辺りを見回したが、どこにもその姿は無い。

 瞬きするほどの時間もなく、まさに一瞬で消えていた。

 代わりに、コロンポンと呼ばれた騎士の少女から、膨大な魔力が感じられた。


『……だが、コロンポンを含め、この世界の存在ではプログラムを完全には作動させられず、時空竜を封印するには力不足だ。封印は緩み、周辺の時空は歪み続ける……そのことは肝に銘じておけ』


 掠れるような少女の声がなおも聞こえてきた。

 それに対し、武王が「我では駄目なのか!?」と叫んだが、反応はなかった。


「……陛下……私は……」

 

 アナベルは顔を伏せ、コロンポンはうつむき、剣を握りしめた。


「サクロ様……私は、負けない」

 

 そんな二人の肩を、汗と血の匂いをまとった大きな手が優しく叩いた。


「よくわからんが、女と可憐な騎士よ。うつむいている暇はない。トカゲが熱線を撃つ前に、走らねばならぬ」


 武王と名乗る巨漢の言う通りだった。

 巨大なトカゲ……時空竜と呼ばれる存在は、再び熱線を放とうとしていた。

 アナベルの全力の防御すら防げなかった、先ほどの熱線以上のものをだ。

 悩んでいる猶予はなかった。


「武王といったな。私はアナベルだ。疑問だらけだが、今は置いておこう。まずはコロンポンをあいつのところまで連れて行くぞ」

「アナベル……うむ、迷いが減ったな。だが、どうする? 無策で走ってもたどり着けるとは思えんが?」


 武王の言う通りだった。

 迷う暇はないとはいえ、ただ走ればいいわけではない。

 あの強力な熱線の前では、多少の機動力はまるで役に立たない。

 先ほどのように武王が防げればどうにかなるのだが……。


「先ほどの何とか拳法の奥義で防げないのか?」


 アナベルの問いに、武王は不敵な笑みを浮かべて首を横に振った。

 武王にも出来ないことがあるらしい。


 となると、方法は一つしかない。


「団長!」

「大佐!」

「武王様!」


 そこに、ほぼ同時に駆けつけてきた三つの集団。

 先ほどの熱線により混乱していた重騎兵の集団。

 エルフ帝国親衛隊。

 武王配下のアウトローたちだった。


 三方から駆けつけてきた彼らは、彼ら自身の常識からすると異様な他の集団に面喰いつつ、自らのリーダーに駆け寄る。


 そして、三人のリーダーは三者三様の面持ちで、唯一の勝機を見つめた。


「アナベル。コロンポン。部下を死なせる覚悟はあるか?」


 武王の問いが、アナベルの臓腑をキリキリと締め上げた。

登場人物


・サクロ

 皇帝ファーリュナスが時空竜復活に備えて生前準備していた魔法プログラム。

 時空竜の活動が活発化するのを感知すると発動する。

 実在する異世界の、ランダムに選ばれた人間のコピー体に魔力を宿して活動を開始する。

 そのため、実のところコピー体とは言え少女が犠牲になることに変わりは無く、作中皇帝がコロンポンに語ったことは事実とは異なる。



 という訳で過去編も佳境です。

 次回更新は9月25日の予定です。

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