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混沌都市のデカイ姫騎士と”推し活”異世界人達  作者: ライラック豪砲
第二章 混沌都市誕生の秘密

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第十六話 姫騎士とエルフとの出会い―3

「なんだ!?  一体ここは……」

「状況報告!」

「こちら第三中隊。本部、指示を請う!」

「あのでかいトカゲはなんだ!? 砲兵か高射砲部隊に観測させろ!」


 周囲が一変したことで、精鋭のはずのエルフ軍は一瞬で混乱した。

 中隊・小隊単位で混乱した指揮官が、てんでバラバラの指示を出し始め、車両から部隊を降車させる隊や、逆に乗車させて発進準備をする隊が続出した。


 こまで彼女たちが混乱したのはこの異常事態に、強力な魔術の作用を感知したためだ。

 エルフの生来の優秀な魔術素養が、この異常現象が大規模かつ強力な魔術によるものだと察知させたのだ。


 そして、これだけ強力な魔術を使え、なおかつエルフに対して用いる存在はただ一人しかいない。


 血の帝国の女王エリザベス。

 バトル・オブ・ブラッドでエルフ空軍をほぼ単独で撃退したと言われ、アナベルに匹敵する強力な存在。


 ル連戦で損耗したエルフ帝国に対し、フリーダムスターと組んで自ら軍を率いて親征を企てているという噂は、一般兵にも広がるほどだ。

故に、この現象を血の女王によるものだと誤認したエルフたちは、強大な存在に怯えてしまう。


 遠方に見える巨大なトカゲのような影も、その恐怖に拍車をかけた。


『総員、落ち着け!』


 その混乱を、血の女王に匹敵する強者が一喝した。

 強力な魔力波による念話は、5000名のエルフ全員に即座に伝わった。

 喧騒が嘘のように静まり、怯えるお嬢さんたちは即座に精鋭のエルフ帝国親衛隊員へと戻った。


『まずは状況把握だ。各中隊は部隊を降車させ、急ぎ斥候を放て。砲兵、高射砲の各隊は急ぎ展開し、砲撃準備。目標はあの巨大なトカゲのような影。情報は即座に戦闘団本部に知らせろ、急げ!』


 アナベルが命じると、各隊は即座に動き出した。

 さらにアナベルが副官に細部を詰めるよう命じると、参謀たちが急ぎ計画を練り、各隊に命令を下した。


「お見事です、大佐」

「世事はいい。今は状況把握と部隊掌握に努めろ」


 やることができたためか、副官の表情は明るかったが、アナベルの心中は見た目に反して混乱に満ちていた。


(なぜ転移したのだ!? あの魔法陣は確実に死んでいたはずだ。いや、正確にはまだ有効だったが、異世界の竜と皇帝陛下が存在しない以上、作動するはずが……)


 だが、思考の中で気が付いた事実がアナベルの心中をかき乱した。

 魔法陣が作動し、異世界としか言いようのない、数十年、数百年古い街並みの都市に転移したのは事実だ。

 それはつまり、魔法陣が作動要件を満たしたことを示していた。


「……まさか、竜……はともかく、陛下が……」


 異世界の竜が復活し、魔法帝国皇帝も復活した。

 そうとしか考えられなかった。

 アナベルの心は、まるで光が差し込むような感覚に満ちた。

 現状の苦しみ全てを解決してくれる、強大な存在が再びこの地に降臨してくれる。


 それは、数万年感じたことのない、「誰かに頼りたい」という気持ちと、それが叶う希望だった。


「アナベル団長?」


 急に黙り込んだアナベルを、副官がすがるように呼んだ。

 しかし、光を見出したアナベルには、副官や周囲のエルフたちの縋り付くような思いが見えなかった。


「……私も偵察に向かう。あのトカゲのような化け物が何なのか、確認してくる」

「えっ、ですが」

「何かあったら信号弾を上げろ。魔力通信で連絡する。戦車部隊は分散配置し、いつでも動けるようにしておけ」


 副官の困惑した声を遮り、簡単な命令を伝えると、アナベルは両手を精霊に変換し、風の精霊を身にまとった。

 そして滑るように指揮車から飛び出し、驚く親衛隊員たちを縫うようにして、巨大なトカゲへ一目散に突き進んだ。


(……感じる。陛下の魔力だ。間違いない。陛下だ……陛下、陛下、陛下!!! よかった、生きておられたんだ)


 焼け落ちた街を進んでいく。

 人間と魔法帝国時代以来見ていない、魔族のような生き物の焼死体以外、何もない街を希望に胸躍らせて突き進む。


「陛下、助けてください。みんな、死んでしまった。もう、エリザベスとオウメしか仲間がいない……しかも、エリザベスとは戦争中で……陛下、陛下ーーー!」


 まるで子供が親に甘えるような言葉がとうとう口から漏れ出すのを、アナベルは止めることが出来なかった。

 数万年の孤独は、想像以上にアナベルの心を蝕んでいた。

 そうして衝動のままに突き進んだアナベルは、とうとう魔法帝国皇帝の魔力の源を視認した。


「……あれは、人間の騎兵隊?」


 そこにいたのは懐かしい魔法帝国皇帝の姿ではなかった。

 アナベルはの世界においては数万年前の魔法帝国時代末期。

 まだ人間と亜人種がギリギリ対等に暮らしていた時代にしか見られなかった、人間による重騎兵だった。

 アナベルと同様、あの巨大なトカゲへ一心不乱に突撃隊形をとり、突き進んでいる。


「やはり本当に異世界なのだな……陛下の気配は……あの隊を率いる騎士の後ろにしがみつく少女か? うん、騎士も少女なのか?」


 アナベルが馬上の少女二人に目を奪われていると、不意に強大な魔力の波動を感じた。

 そちらに目をやると、その源はあの巨大なトカゲの頭部だった。

 とっさに魔力式を読み取ろうとするが、その必要はなかった。

 単純に魔力を熱と光に変換し照射する、シンプルで最も殺意の高い術式だった。


 次の瞬間、アナベルは頭の中で生涯最高の防御魔法式を組み立て、風の精霊が焼き切れるほど魔力を両足に込め、跳躍した。


 一瞬で騎兵たちを追い越し、少女騎士と少女の乗った馬を追い越す。

 幼い顔立ちの少女と、悲壮な表情を浮かべる少女騎士の顔を横目に、アナベルはトカゲから放たれた光と少女騎士の間に割り込んだ。


「エアリアルシールド!」


 人生で最高強度の魔術防壁を、アナベルは張った。

 たとえ列車砲だろうと自分と少女たち、そして騎兵隊を守れる自信がアナベルにはあった。


 そんな数万年の人生に裏打ちされた自信は、風の防壁がガラス板に石がぶつかったように割れたことで、文字通り砕け散った。


 アナベルの身体を、光が焼き始めた。

ようやく、ようやく主人公とアナベルが合流。


次回更新は9月17日の予定です。

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