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混沌都市のデカイ姫騎士と”推し活”異世界人達  作者: ライラック豪砲
第二章 混沌都市誕生の秘密

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第十五話 姫騎士と長生きしすぎたエルフー3

 使者が自慢したがっていたエルフによる第三帝国首都”エルファリン”は、やはりというべきかアナベルが思い描いていた摩天楼には程遠かった。


 当初は自慢したがっていたであろう使者たちも、目にしたアナベルの反応を見ると気恥ずかしそうにしている。


「……その様子だと、本当に古代帝国というのはすごい国だったんですね」


 使者がポツリとこぼす。

 気落ちしたその様子に、アナベルは苦笑しつつ答えた。


「そう落ち込むことはない。そもそも、この自動車にしても大したものだ」


 アナベルは隠遁前のエルフ帝国の光景を思い出しつつ慰めた。


「私が世俗にいた頃はあの森からエルファリンまで馬車で三日はかかったが、今ではアスファルトで舗装された道路を自動車で数時間だ。内燃機関とコンクリートの街並みも大したものだし、摩天楼とは言えないが五階程度の高さのビルディングが広がる光景はなかなかだよ」


 アナベルはそう言ったが、それは却って逆の効果をもたらしたようだ。

 すっかり肩を落とした使者は、まるで降参するかのようにあきらめの表情を浮かべた後、ポツリポツリと真相を語り始めた。

 

「……実は、総統閣下からあなたを連れてくるよう命令を受けた後、とある方から別名を受けました」

「別名?」

「……私が言ったのではないですからね? その方のお名前は言えませんが……(いにしえ)の存在に対し、偉大なる第三帝国の威容と現代文明の威力を見せつけ、驚くさまを克明に記録せよ、と」

「なるほどねえ」


 あまりにもあからさまな態度の理由は、知ってしまえば単純なものだった。

 総統とやらのことは何もわからないが、要するに独裁的な権限を持つ指導者だ。

 そうなると、命じたものの意図も想像はつく。


(総統の威光を落とさないように、何百年も引きこもっている私が現代文明におののくさまを表に出して笑いものにしよう、ってことか。気持ちはわかるが、いざ自分がやられるといい気分ではないな)


 とはいえ感情を表に出して反発するほどアナベルも子供ではない。

 長く生きて入れば似たような感情を抱いたこともあるし、そもそも魔法帝国時代に皇帝の命令で辺境討伐に赴いた際に原住民に装備を見せつけた時の感情を思いおこせば怒る資格があるのかも怪しい。


 なのでアナベルは隣にいる哀れな使者も、まだ見ぬ無礼な幹部のこともあっさりと許してしまった。


「今更ハイエルフなんぞが偉そうにしたら大変だからな。まあ、気にすることはないよ」

「きょ、恐縮です……ですが、まだ我が国の」

「おお、街中に入ったか」


 使者が言いかけた辺りで、とうとう自動車はエルファリンの市街地へと至った。

 森や小さな村落が広がる光景が徐々に石とコンクリートによって占有されていき、近代的都市の様相を濃くしていく。


「アナベル様。もう地図上はエルファリンです。今更ではありますが、ようこそエルファリンへ……」


 後部座席の窓から、アナベルはエルファリンの街並みを眺めた。

 赤地にグリーンクロスのエンブレムが施された、巨大な旗が無数にひらめき、多くの自動車とエルフが行きかう巨大な街。


 だが、ここに来てアナベルは街の異質さに気が付いた。


「……人間が歩いていないな。それに異種族もだ。いるのはエルフばかり……」


 アナベルが驚きを含ませた口調で言うと、使者と前席の護衛達がはっきりと分かるほど喜んでいるのが感じられた。

 どうやら彼らと彼らの上司の思惑通りの反応をしてしまったことに気が付いたが、それよりも異質さへの違和感が勝る。


「どういうことだ? この規模の街に人間も他国人もいないなど、どう考えてもおかしいだろう。そもそも……」


 そう言って、アナベルは街を改めて見る。

 まだ市街地と言ってもエルフェリンの郊外もいい所だというのに、道行くエルフがあまりにも多すぎる。


「……この街だけでどんなに少なく見積もっても数十万人はいるぞ。まさか、帝国のエルフが全員この街に住んでいるわけでは無かろうに……」


 アナベルは困惑していた。

 それと言うのも、エルフを始めとする妖精種や亜人種、獣人と呼ばれる種族は通常種族全体の数が多くても数十万程度と少ないはずなのだ。


 そのため他種族国家であった古代帝国が崩壊して以降、各種族がそれぞれの国を建国しバラバラになってからも、国家やコミュニティを維持するために魔法が扱えないものの他人種と共存、交配可能な唯一の種族である人間を国の基盤とすることは全ての種族で共通していた。


 それは人間を食料としていたオークや吸血鬼ですら例外ではない。


 エルフは比較的出生率が高く人間への依存傾向は低い種族だったが、それでもエルフ帝国とダーストリア帝国を含めても総人口は50万に届くかどうか。

 出生率を考えれば今でも100万に至る事はないはずなのだ。


 そんな疑問に対する答えは、アナベルをさらに驚愕させた。


「昨年度の人口調査によると我がエルフ帝国の総人口は1000万を超えております。無論、エルフとダークエルフ、そしてハーフエルフだけの数字であり、人間や多種族は含まれません」


 もはや自慢を隠さない使者の表情には愉悦の色が強く浮かんでいた。

 アナベルは小さく「なぜ?」と呟くしかなかった。


 だが、使者は小さくかぶりを振った。


「あなたをこれ以上驚愕させる光栄はわたしには身に余ります。理由に関しては……」


 使者が視線で自動車の前方を示す。

 アナベルがそちらに目をやると、ひと際大きな近代的ビルディングが見えてきた。

 ビルディングの前には素晴らしい噴水を中心とした広場があり、使者と同じような軍服を着込んだエルフたちがせわしなく歩き回っている。

 どうやら、あの大きな建物の周囲にある建物に出入りしているようだ。

 そこに至りアナベルは気がついた。

 あの建物と噴水広場の周囲にある建物は、その全てが官庁のようだ。


「あちらの総統官邸にて、我らが総統がご自身で語られますので……」

「総統……ね」


 アナベルは総統官邸だと言われた建物を見つめた。

 じわじわと内臓の奥から湧き出すような、嫌な予感がアナベルを襲いつつあった。

次回更新は8月23日の予定です。

色々と余裕がありませんが、どうにか頑張ってまいります。

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