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008

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「……でも、クロード先輩。僕には一つ気になることがあるんですよ」

「言ってみろ、サクス」



 とある夜。



 クロードは久しぶりに見た友人をと、大衆酒場にて食事をしていた。既に酔っ払ってしまってウッキウキのサクスを見ると、何だか昔を思い出して懐かしくなる。



「なぜ、平民の恋人を作らないんですか? 別に恋人の有無は学問への背徳にならないでしょう」

「道半ばの私には不相応だから」

「ふふ。先輩がそんなこと言ったら、世の中のファミリーはほとんど不届き者です。それに、妻帯者になった方が平穏無事に過ごせると思いますけどね」



 言って、サクスは再びワインのボトルを追加した。これで既に六本目だ。



「まぁ、この際素直になるよ。私の母は、5歳の私と病気の父を捨てて家を出ていったんだ」

「トラウマですか?」

「早合点するな、私は別に母を恨んじゃいない。だが、問題は父の病気だ。当時のかかりつけだった医者の話によると、あれは本当になんの前触れもなく発症した奇病らしい。世界的にも、前例がほとんどないんだ」

「……つまり?」

「運命による死だ。例の病気が、いつ私にも発症するか分からない。代々、カミュの家系が短命な理由もきっとこの病が深く関わっているのだろう」



 サクスは、さも当然の事のように話すクロードから目が離せない。酔っ払った頭が急激に冷めていって、嫌でも彼の胸の内を考えてしまったからだ。



「女だって、急に死なれたら困るさ。だから、私は恋人も妻も持たないようにしてるんだ」

「……血統や境遇に左右されない考古学という学問を選んだ理由もそれですか?」

「どうだろうな。気づいた時には好きになっていたから、それは分からない。ほら、飲め」



 ワインを波々注がれると、サクスはそれを一気に飲み干してダンとグラスをテーブルの上に叩きつけた。

 顔は大変に真っ赤で、それが感情を堪え忍ぶせいか、飲み過ぎた酒のせいかを、クロードは考えなかった。



「先輩! 今日はいいところに行きましょう! 僕、ボインがいっぱい居る店を知ってるんですよ!」

「なに、本当か?」

「最近出来たらしいです! 本物の天国だって噂です! でもメチャクチャ高くて上級騎士程度の給金じゃ遊べないっす!」

「なら、店を教わる代わりに私が奢ろう。数年会わなかった分の埋め合わせだ」

「ありがとうございますっ! 僕、一生着いていきます!」



 そして、二人は夜の町へ繰り出していった。どんな風に楽しんだのかは、語るのも野暮であるだろう。

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