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結界破っていざ対面


 通行人の数人から聞き出してようやく目的のギルド【コマース】に辿り着いたムゲンとアルメダであるが目的の人物であるドール・ピリアナは入れ替わりでギルドを出たらしい。

 彼女の自宅について尋ねてみると意外にも簡単に場所は割れた。母の話では人間嫌いと言われていたので自宅の場所を掴むのは難儀するかと思い拍子抜けするムゲンであったがギルド職員の最後の言葉に耳を疑った。


 『ドールさんの自宅はこのトレドの一番端のエリアにあるのですが……彼女は大の人間嫌いで自宅周辺には結界を張っているんです。だからほとんどの人間はその結界に阻まれて面会は叶わないんです』


 人間嫌いの人物が自宅の場所を秘匿せずギルドの人間の口からでも知れるように堂々と公開している理由がよく分かった。つまりは家までたどり着こうが面会できぬように細工を施していると言う事なのだ。

 しかも厄介なのはその結界は彼女の魔道具で作り上げられたものらしく通常の結界よりもかなり強固らしい。


 「人間嫌いで魔道具の天才が作り出した結界か。やれやれ、予想以上に骨が折れそうだ」


 『下手をしたら話すら出来ないんじゃないの? 何だか不安になって来たわ』


 ギルドを出てから都市の最も端のエリアまで辿り着くムゲン達。

 職員からもらった地図の印が付いている場所に到着すると都市の城壁に寄り添うような形で普通の一軒家よりも数倍大きな屋敷がポツンとそこには立っていた。


 『随分と大きな所で暮らしているのね。人間嫌いなんて言われているから一人暮らしなんじゃないの? どう考えても部屋を持てあますと思うけど……』


 「いやどうだろうな。魔道具を作る為の大きな工房もあるだろうし保管場所とかにも部屋を使うんじゃないか? まあそれよりも今はどうやってあの屋敷の扉まで行くかが問題だがな」


 溜息と共にムゲンは屋敷を中心に半球状で結界に覆われているこの現状にため息を漏らす。

 握り拳を作って結界を叩いてみるとまるで鋼鉄でも叩いているかのようにガンガンと硬度の高そうな音が響く。

 先ほどかなり強めに殴ってみたが結界が破れる気配がないどころか逆に拳が痛んだほどだ。少なくとも一般人ではあの屋敷の主と面会する事すら叶わないだろう。


 『これ完全に誰も入れる気ないんじゃないの? 人間嫌いらしいけどここまでするとは……』


 「だがこのまま帰る訳にもいかないさ。ここで引き返せばアルメダも霊体のままなんだぞ。それに…俺の力を封印する為の魔道具だって作ってもらいたいしな」


 実は母のスーザンからドールと言う人物の魔道具を作り出す才能を聞いた時にムゲンはアルメダの依り代となる肉体だけでなく自分の竜の力を封印する為の魔道具の作成も頼もうかと考えていたのだ。

 母から自分の力の根源については知る事が出来たが根本的な解決策は見つからず焦っていた。詳しく訊けば母の封印術も少しずつ弱まりつつあるらしい。自分が真の全力を解放するたびに封印は弱まりあと3回でも竜の力を解放してしまえばもう封印も完全に解けてしまうそうだ。


 「(俺のもっとも大きな悩みである力の暴走を制御できる可能性をそのドールと言う冒険者は秘めているんだ。ここでおめおめと引き下がってたまるか!)」


 【コマース】の冒険者の数人からドールについて情報を集めたがあの進入禁止の結界を破れるのは彼女と同じSランク冒険者ぐらいらしい。だがあの結界を破れば褒美としてなのか来訪した相手の要望を大抵は叶えてくれるそうだ。

 つまりこの結界は訪れる者を試す関門とも言える。ムゲンには生半可な気持ちの者は拒んで通さないと挑戦をされている気分だった。


 「Sランク冒険者ほどの実力者にしか破れないね。なら…俺ならその気になればこの結界を抜けれると言う事になる」


 そう言うとムゲンはまたしても拳を強く握って固める。ただし先程とは近いその拳には膨大な量の魔力が集約される。彼が強く握りしめている拳からは煙が出て今にも爆発するのではないかと思えるほどの攻撃力を内包している。

 その爆弾の様な破壊力を秘めている拳をムゲンは全力で結界へと叩きつけてやった。


 拳と結界が衝突した瞬間――まるで爆破魔法でもつかったかのような大音量が周囲へと響き渡る。


 「くそ…硬い結界だな……」


 元よりムゲンの拳はその気になれば魔力の補強なしでもモンスターを撲殺できる威力を誇る。そこに魔力の強化がされれば並の結界など紙切れの様にぶち破れるはずだ。しかしこのドールの屋敷を囲っている結界は何も変わらず立ちはだかり続ける。


 『これやっぱり力づくで中に入るのは無理なんじゃ……。ねえムゲン、あの【コマース】のギルドにドールって人が顔を出すまで待っていたらどうかしら?』


 「いやそれは得策じゃないと思う。アルメダも俺の隣で聞いていただろ。彼女は冒険者活動をせずとも魔道具の売買だけで十分に生計を立てられているだろうって……」


 高性能な魔道具と言う事は値段もかなり張ると言う裏付けだ。そしてこの立派な屋敷を見ればその噂が真実だとも思える。だとするなら人間を嫌っているドールが他の冒険者ほど高頻度でギルドに顔を出すとは限らない。長い時には一ヶ月以上も顔を出さない事もあるそうだし……。


 「それに俺はまだ1発しか殴っていないんだぜ。数発で壊せないなら……数百発だ!!」


 そう言うと大きく息を吸い込み出すムゲン。

 そして可能な限りの息を吸い込むと目をクワッと見開き怒号と共に先ほど以上に強化された拳を結界に何度も叩きつけ続けた。


 「うららららららららら!!!」


 肉体に割り振る魔力数をいつもの4倍まで引き上げて放たれる彼の拳はアメルダの瞳にはまるで数十本の腕が伸びて拳を数十発同時に叩きつけているように映るほどの速度であった。すると次第にムゲンの拳が当たっている箇所の結界にひびが入る。その亀裂は次第に大きくなっていきついに――


 「おらああああああああ!!!」


 ひと際大声を出しながら繰り出した右ストレートは結界を完全に打ち抜いた。


 「たくっ……千発以上入れてやっとこさ突破できたよ」


 そう言いながらムゲンは自分の拳を見ると僅かだが血が滲んでいた。


 「(俺が殴って逆に拳が血濡れになるなんて初めてかもな。だが…これが魔道具による結界の力だと言うならこの屋敷に居るドールと言う《魔法使い》は信用できる腕前だ!)」


 そんな風により大きな期待に胸を膨らませていると屋敷の扉が開いた。そしてそこから1人の女性が姿を現す。


 「まったく……まさかここまで強引に結界を破るヤツが居たなんてね。脳筋男って嫌いなんだけど……」


 扉を開いて出てきた人物、それは【コマース】への道順を最初に尋ねたあの2色ヘアーの女性だった。



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